ミニチュア写真家で見立て写真家の田中達也さんを知っているだろうか。日本に古くからある“見立ての文化”を現代の形に昇華した作品を日々作り続け、今やご本人のインスタグラムのフォロワーが2023年1月現在で300万人を超えるという、大人気アーティストである。
老若男女、国籍を問わず、誰もが知っている物をモチーフに制作
世界中にたくさんのファンを持つ田中氏が、このたびそんな見立ての世界を詰め込んだ写真集『MINIATURE TRIP』シリーズの第2弾を発売した。
題して『MINIATURE TRIP AROUND THE WORLD』。この写真集では、多くの人が知っている世界の名所を作品にしている。しかも非常に身近なアイテムが見立てに使われていることで、思わず「なるほど」とうなってしまうに違いない。BE-PAL読者の皆さんが気になりそうな世界の名所の作品を見てみよう。
「オーロラは『空のカーテン』などと称されるので、奇をてらわず、カーテンで見立てました。本物のオーロラと違って、昼夜問わず観測できますよ」(田中氏)
光の反射とカーテンの折り重なる感じが、まさにオーロラに見えてくる。
「青いカクテルで露天風呂を、グラスの縁にまぶした塩で湯船に付着する湯の花を見立てました。ちなみに、「ブルーラグーン」というウォッカベースのカクテルが、本当にあるそうです」(田中氏)
シリカを多く含む乳白色のお湯が、見事にカクテルの色で再現されている。
「渓谷の断崖をウエハースの特徴的な格子状の模様で、水平に伸びる地層チョコレートをサンドした側面で見立てました。僕の製作時間は、たったの40分。億単位の年数をかけてグランドキャニオンを作り出した地球に申し訳ないです」(田中氏)
思わずクスッと笑ってしまいそうな、おいしそうなグランドキャニオンとなっている。
「シンプルに見た目が似ているから、エリンギを見立てに選びました。バオバブも巨大感を出すため、下からあおって撮影。さらにキリンや人が夕日を浴びてシルエットになるように表現することで、印象的な作品に仕上げました」(田中氏)
エリンギとバオバブの木の雰囲気がこんなにも似ていたとは驚きだ。
僕の作った小さな世界をきっかけに、ぜひ海外に出かけて欲しい
今回の写真集は、アート活動を続けるうちに気づいたことがきっかけになっていると、田中さんは言う。
「国は違えど、同じような暮らしをしている人間なんだということです。見立てを通じて、それを感じてもらえれば、自然と人を思いやることができ、結果的に世界平和にもつながるのではないか、と考えています。僕の作った小さな世界をきっかけに、ぜひ海外に出かけてください。世界は小さいのですから」。
写真集を眺めていると、実際の目で本物の世界の名所を見たくなってくるから不思議だ。どこに行こうか…そんな楽しい思いを巡らせる際には、ぜひこの写真集を手にとってじっくり考えてみてはいかがだろうか。
文/編集部