カヤックを降りて古城を巡る“スロバキア”と“オーストリア”国境越えの旅
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    2022.04.14

    カヤックを降りて古城を巡る“スロバキア”と“オーストリア”国境越えの旅

    オーストリアとスロバキアの国境付近の風景

    オーストリアとスロバキアの国境付近の風景。

    いざ西欧から東欧へ!

    こんにちは!ドナウ川の源流地域ドイツからエーゲ海沿いのトルコを目指して、カヤック旅をしているジョアナです。半年くらいの放浪を予定していて、通る国は9か国。ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー、セルビア、クロアチア、ルーマニア、ブルガリア、トルコ。

    今回の記事は、旅を始めて1か月半が経過したころの話。このカヤック旅で3か国目のスロバキアに入国しました。オーストリアとスロバキアは西欧と東欧の境目ともいわれているそう。さらば東欧!こんにちは西欧!

    ところで、よく友人に聞かれるのが、この質問。「カヤックでドナウ川の国境を越えるときって、入国審査どうするの?」

    実はこの旅の前半、ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリーまではシュンゲン協定内。協定内各国をひとつの国として出入国管理をしているので、今のところまだ、国境を超えても何も手続きがありません。だから、国境を超えたところで何も実感がないのです。だって、「ここが国境です」という目印がデカデカと川に浮かんでいるわけでもなく。それに川の両脇に広がる自然の景色が、国境のラインを境目に劇的に変化するわけでもありません。油断していると、いつの間にか隣の国に入国してしまっているわけです。

    そんなスロバキアとオーストリアのドナウ川による国境越え。国の境目の目印になるのが、ふたつの町とその丘にそびえる古城。カヤックを漕いで、城を登って、そこに待っていたのものは果たして…。

    「ハインブルク・アン・デア・ドナウ」がオーストリア側の国境の町、「デヴィーン城」のある「デヴィーン」がスロバキア側の国境の町です。

    オーストリア側の国境の町「ハインブルク・アン・デア・ドナウ」

    ハインブルグの町の船着場

    ハインブルク・アン・デア・ドナウの町の船着場。スロープが使えるのは便利だけど、散らばったガラス片を発見。

    ドナウ川を下って、オーストリア側の国境の最後に現われる町がハインブルグ・アン・デア・ドナウ。流れの穏やかな場所に、スロープがある船着場を発見。

    ただしこの場所は、「お酒を飲みたいけれど、家や店であおる気分ではない」。そんな人の足が向く船着場でもあるらしく、スロープのあちこちに、割れたガラスの細かな破片がありました。フォールディングカヤックやインフレータブルカヤックで上陸するときは要注意。これはカヤッカーの間では「シティ・プロブレム」と呼ばれている問題でもあり、町の公共の船着場のなかには、ガラス片が落ちているところが少なくないのです。

    カヤックは必ずカートで引いて移動します。絶対に底をスロープにすらないようにして。カヤックを置く場所も、ガラスが落ちていないかよく確認してから下ろします。

    古城に続く上り坂

    古城に続く上り坂。カヤックに座りっぱなしの毎日で足腰が弱っていると、これがこたえるのです。

    そんなハインブルグ・アン・デア・ドナウの町の丘のてっぺんにあるのが、古城の跡地。船着場からこの古城までは20分弱で行けるとグーグルマップが教えてくれましたが、それは古城へと続く短いトレッキングコースの入口までの時間。これは急な丘を数回折り返しながら登るちょっとした山道で、10分くらい登ると古城が見えてきます。毎日座ってカヤックを漕いでいるせいで、たった10分、されど10分。すっかり足腰が弱ってしまった私。つ、疲れる…。

    古城の入口にある大きなアーチが

    大きなアーチが正面入口。日本のお城と比べると、ヨーロッパのお城には曲線美が多いような。

    古城のアーチをくぐって、まず私が見つけたもの。それは、小学生の抜け殻。リュックや上着が散乱していたのです。なにやら近くの小学校のクラス遠足なのか、みんなで隠れんぼをしている様子。

    城で遊ぶ小学生

    こんなところで遊べる地元小学生、羨ましい!

    こんなところで隠れんぼできるなんて、ロマンがあるなあ。楽しいだろうなあ。羨ましいなあ。お城の保護のためもちろん登るのは禁止ですが、あんなところやこんなところに、隠れた小学生の姿が。

    窓くらいの小さなトンネルの向こうに隠れた小学生

    窓くらいの小さなトンネルの向こうに隠れた小学生。

    古城の正面入口のちょうど反対の奥には、もうひとつ、城と町を行き来できる出入口が。町の反対側からもアクセスしやすいように設けられたものだと思われますが、それにしても、天井が低い。遠足を楽しむ小学生たちのそばで、私もひとり、大人の遠足気分で古城を探索しました。

    正面入口とは反対の通用口の様子

    古城探索は、大人も子供の楽しい外遊びです。

    スロバキア側の国境の町「デヴィーン」

    ドナウ川から見るデヴィーンの町

    ドナウ川から見上げるデヴィーンの町。

    ハインブルグを出発してから5kmもしないうちに現われるのが、巨大な岩山と、その上にそびえる立派なお城。これがデヴィーンの町の目印です。ドナウ川とモラバ川が合流する角に建つお城であり、これ以降ドナウ川を下るときは左手がスロバキア、右手がオーストリアになります。

    岩がゴロゴロした岸に無理やり上陸させたカヤック

    残念ながらスロープは見つからず、岩の上に無理やり上陸。

    スロバキアを代表する遺跡のひとつであるデヴィーンの古城ですが、残念ながらカヤックが上陸できるような船着場はありません。2本の川に挟まれていることから、古くは物流でも栄えた町なので、これは少し意外。仕方ないので、登山用語でいう「ガレ場」のような、岩っぽいところに無理やり上陸。もし水位が少し上がっても流されない位置までカヤックをあげて、それから岩の間に砂が溜まって平たくなっている場所にテントをたてました。

    岩の間に平な場所を見つけてテントを設置

    岩の間に比較的、平たい場所を見つけて設置したテント。私、多少傾いていても寝れる体質です。

    スロバキアとオースリアのドナウ川沿いの国境には、国境警備の船もなく、ハインブルグの町を出発してのんびり漕いでも30分ほどで着いてしまうので、正直、国境を超えたという実感がありません。が、東欧と西欧の境目を越えたのは、たしかに事実で。まず、お城で入場チケットを買うときにびっくり。ドイツ、オーストリアで聴き慣れたドイツ語の定番フレーズ「〇〇ユーロです」が返ってきません。そうだ、ここはスロバキアなんだ。

    アインツ、ツヴァイ…、せっかく覚えたドイツ語の数字ではなく、まったく聞き覚えのない数字をいわれて、「あー国境を超えたんだ」と実感。

    このとき、デビンズの城の入場料は3ユーロ。ドイツ、オーストリアでは、入場料大人5ユーロ以下の施設には出会ったことがありませんでした。ちなみにスーパーでは一番安いパンが1個6セント、お得用ソーセージが4本60セント。ドイツ、オーストリアではほとんど見なかった1ユーロ以下の商品。同じユーロ通貨でありながら、こんなにも物価が変わるものなのかと、驚きです。

    広いお城を散策

    デヴィーンの城をいざ散策!

    デヴィーンの城をいざ散策!

    デヴィーンのお城の敷地内は、夏には一面の原っぱにさまざまな植物が咲くそう。今回訪れたのは残念ながら冬ですが、それでも坂道と階段が多い広大な敷地内を歩き回ると、ちょっとだけ運動した気持ちになるような。

    城の外壁に等間隔に四角い穴が空いている

    よく見ると、城の外壁には等間隔に四角い穴が空いている。

    お城の壁に空いた穴は、敵が来たときに弓矢などで迎え撃つための穴。要塞としての役目もあったそう。

    このお城が建てられたのはなんと1世紀の終わり。歴史のなかでさまざまな増改築を繰り返し、長い年月をかけてより大きく、強固に作られていった建物だそう。たびたび所有者が変わったりしながら、様々な戦をくぐり抜けてきたお城ですが、19世紀初めにフランスのナポレオン軍によって破壊。今の姿となったそう。

    「一度建てて終わり」という現代の建物と違って、お城は長い歴史のなかで増改築しながら成長した建物。そう考えるととてもロマンがあるかも。しかも、分厚い壁が欠けた跡を観察すると、中まで規則正しく岩が詰まっていることがわかります。これだけ大きな建物が、基本的に岩でできた構造体であったということ。し、信じられない…。

    デヴィーンの城のてっぺんからドナウ川を見下ろす

    デヴィーンの城から見下ろすドナウ川は、なんだか感慨深いです。

    それにしても、高い丘にたつ古城からドナウ川を見下ろすと、「こんな川をはるばる下ってきたのかあ」と、感慨深い気持ちです。川を下りながら、気になる建物を見つけて、自由に上陸して散策できるのも、カヤック旅の良さ。小学生の遠足と違って、大人のひとり遠足は、本当に自由にあちこち行けちゃうんです。古城を探検して童心にかえりながら、カヤック旅ならではの自由さをのびのび楽しんだ国境越えの1日でした。

    私が書きました!
    剥製師
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)。じつは山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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