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凍った海を滑る!いつか体験してみたい、極寒の北欧ならではの海上スケート

2021.12.27

池や湖だけでなくなんと海まで凍りつく厳しい北欧の冬。毎年11月下旬頃からスウェーデンの南に位置するストックホルムでも氷点下10度Cを超える日が続くことがあります。寒さが厳しい1月から2月には海まで凍りつき、自動車が走れるほど厚い氷に覆われることさえあります。

氷点下10度C以下の極寒の世界。海に浮かぶ島々が陸続きに。

え?海水が凍るの?と驚かれる方もいると思いますが、ストックホルムが面するバルト海は海水の塩分が少ない汽水海(淡水と海水が混じり合った海)なのです。

なぜスウェーデンの海は凍るのか?

海水の塩分の違いを数字で表すと、日本などの海洋では35パーミル(permille)程度である塩分がバルト海の汽水では薄いところで2パーミル、最高でも10パーミル程度だそうです。 (https://www.wwf.se/hav-och-fiske/ostersjon/unikt-innanhav/

そしてこの少ない塩分が海水を凍りやすくするのです。どのくらい凍りつくかはその年によってかなり変わりますが、スウェーデン東海岸のアーキペラゴは凍りつくことが多く、島々を歩いて渡れるくらいになります。余談になりますが、島々に定住する鹿や狐などの動物たちはこの冬の期間に別の島へと餌を探して移動するのです。

動物たちの足跡が氷の上にも見える。

そしてこの凍りついた海はアイススケート愛好家にとって最高のプレイグランドになります。毎年シーズンになると、イースピークと呼ばれる先の尖ったスキーストックのようなものをもったスケーターが待ってましたとばかりに海上に現れます。

アウトドア派に人気の真冬のアクティビティ

スウェーデンでは「長距離スケート」と呼ばれるこのアクティビティ、数十キロに及ぶ距離を滑り、途中で休憩や昼食を取りながら何時間もかけて楽しむものなのです。北欧の冬のアウトドア活動の中でもスキーについで人気のスポーツです。

ただし、海の上を長距離に渡って移動するので安全装備は欠かせません。どのような装備が必要なのか見てみましょう。

まず、スケート靴ですが、フィギアスケートやホッケーのような刃がついた靴ではなく、普通の靴に刃を取り付ける形になります。これは湖や海から陸に上がり、歩いて次の湖や湾に行ってまたスケートをするようなことが多いからです。

普通の登山靴に取り付けられるスケートの刃。意外と安定している。

必要不可欠なスケートギアとは?

そして大切な道具は氷が厚く安全なことを調べるために氷に突き刺して硬さを調べることのできるストック、イースピークです。走行中はスキーのストックのようにバランスを支える役目もします。

ちなみに下の写真のものはかなり年季が入っている古いデザインですが、最近のものは細く、軽く、カラフルなスキーのストックの先が尖っている感じです。

細い方のストックが太い方に収納され、持ち運ぶときは一つになるデザイン。20年以上前にブームとなったモデル。

イースピークはこのように氷に突き刺して頑丈さ、厚さを調べる。

大自然の真ん中を長時間に渡って走行するわけですから、万が一に備え準備を万端に備える必要があります。最悪の事態と言えますが、もし走行中、氷が割れ、海に落ちた場合は即刻陸に上がることが何よりも大切です。当たり前のことですが、氷の下の水温は低く、生命に危険を及ぼすからです。

なので長距離スケートをする人は皆、首の周りにイーススタッブと呼ばれる小さなアイスピックが2つ繋がった器具をつけています。これは万が一水に落ちた場合、即座に水から這い上がるためのものです。使い方ですが、両手でそれぞれアイスピックを掴み、氷の上に突き刺して体を支え、それを軸にして這い上がります。このアイスピックがないと氷は滑って掴みどころがなく、なかなか水から上がれません。このイーススタッブは必要不可欠な救命道具なのです。またこのイーススタッブには小さなホイッスルがついていて、事故が起こったことを周囲の人に知らせることもできます。

イーススタッブ。氷に突き刺すものという意味。赤い部分が持ち手。引き出すと尖った釘のようのものが出る。これを氷に突き刺して体を固定する。

そしてもう一つがカストリーナという救命具です。 長いロープが袋に収容されたもので、救済する側が安全な場所から海に落ちた人へ投げ入れ、引っ張り上げる助けをするものです。ボートなどに据え付けられているものと同じですが、水に落ちた被災者を遠距離から引き上げられるのに役立つということで長距離スケート愛好家達も携帯しています。

カストリーナ。投げ縄という意味。赤い輪の部分を救済者が持ち、黄色い袋を投げる。袋の先には重りがついていて遠くまで届くようになっている。

安全装備。ヘルメット、カストリーナ、乾いた衣類の入ったリュックサック。

さらに、氷は硬いので転倒したときのためにヘルメットも欠かせません。

最後にこれがとても大切なことですが、リュックサックには乾いた衣料を防水袋にいれたものを必ず入れておくことです。水に落ちた場合、早急に濡れた衣料を脱ぎ、乾いたものに着替えることが体温の低下を防ぐのに有利でとても重要だからです。

リュックサックには暖かい飲み物、食べ物なども入れておきます。長距離を滑るので途中で休憩し、エネルギーの補給を忘れないようにします。もちろんそれがツアーの楽しみの一つにもなります。

休憩中のフィーカ(スウェーデンのコーヒータイム)。

準備万端、いざ凍った海へ

さてどこの湖や海が凍っていて安全に滑れるのでしょう?最近では長距離スケート愛好団体が共同で使っている専用のアプリもあります。また危険を伴うスポーツなので愛好家団体が独自のクラブを形成して週末などに集まれるツアーを企画しています。初心者から参加できるコースなどもたくさんあり、ひとりでは不安な人もグループでツアーを楽しめるようになっています。

グループのツアーは初心者でも安心。

スケートネットのページ。

その愛好家団体が集まって形成されているサイト、スケートネット。(www.skridsko.net)。 初心者の心得、装備の説明、人気のスケートコースなど、長距離スケートに関するありとあらゆる情報が載せられています。

また地図でどの辺りの氷が安全で滑りやすいかなどもライブでわかるようになっています。

地図では現在滑走可能な水域を色分けして表示している。

実際に深い海の上の氷の上を滑ってみるとわかるのですが、キュン、キュンという不思議な音がします。実はこの音は氷にひびが入っている音が氷を通して遠くまで伝わっているそうなのですが、低い音の場合は氷が厚い証拠で心配はないそうです。この音が甲高くなると氷が薄い証拠で気を付けたほうが良いとのことです。

氷の上に薄く水が張った場所を滑っているところ。

海の上をスケートするなんて恐ろしすぎると思われる方も多いと思いますが、実際には安全装備さえ整えていれば、誰にでも素晴らしい大自然を満喫できる冬のスポーツなのです。

海は広い。広大なスケートリンクと化した海。

凍った海は果てしなく広いスケート場。夏にはボートでエンジョイしていた海の、全く違う風景を楽しむスウェーデン人たちで賑わいます。真冬の北欧に行かれる事があれば是非チャレンジしてみてくだい。

お天気の良い日は気温が低くても寒さがきにならない。

 

私が書きました!
スウェーデン在住ライター (海外書き人クラブ)
中妻美奈子
2000年からスウェーデン・ストックホルム在住。現地企業の広報を担当する傍ら海外書き人クラブのライターとして日本のメディアにスウェーデンの情報を幅広く寄稿している。

 

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