【写真家・関健作さんに聞く:後編】ブータンの人たちは、自分にないものを持っていた | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル - Part 2
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  • 【写真家・関健作さんに聞く:後編】ブータンの人たちは、自分にないものを持っていた

    2016.08.24 ブータン山本高樹

    祭りで使う仮面をかぶって遊ぶ僧たち。

    祭りで使う仮面をかぶって遊ぶ僧たち。

    ——ブータンで暮らしてみて、関さん自身の中で何か変化はありましたか?

    関:ある意味、もっと自分勝手でもいいんだな、と割り切りましたね。日本では他人の目を気にしすぎて、自分というものがなかった。でも、ブータンの人たちは自分の感情に素直だし、人からどう思われようが関係ないでしょ、という人が多かった。自分の感情に対して純粋だから、みんな輝いているというか……他人ともぶつかってケンカもするけど、そういう生き方っていいなあ、だからこそあんないい笑顔ができるのかな、と。

    ——あと、けっして自分本位なだけじゃなくて、ほかの人に対する優しさも持っている。

    関:そう。たとえば、どこか知らない村に遊びに行っても、その村の子供たちが必ずやってきて、村を案内してくれるんです。木の実をくれたりもするし。村の人たちはお茶をごちそうしてくれますし。みんな何の見返りも求めず、無条件で。どうしてそんなに優しいのかなと思ったんですが、そもそもブータンの人たちは、人から何かをしてもらっても、あまり感謝とかしないんです。人に何かを与えることは当たり前。困っている人がいたら助けるのも当たり前。それに対して感謝したりされたりというのは割とどうでもいい。ゾンカ語では「カディンチェ」という言葉が「ありがとう」という意味なんですが、ブータン人が「カディンチェ」と言っている姿を、僕は見たことがないです。言わなくてもそれが当たり前なんです。

    ——なるほど……。

    関:だから、僕はブータンに行って、本当に楽になりましたね。すごく楽になったなあ……。

    祈りは大切な日課。ブータン人の家には仏間や仏壇が必ずある。

    祈りは大切な日課。ブータン人の家には仏間や仏壇が必ずある。

    ——そういう部分に、関さんがこれまでブータンと関わり続けてきたモチベーションの源があったんですね。

    関:ブータンという国の人々のことを知った時、何が何でも行きたいと感じたんですけど、その時の感情が、ずっと僕の中に残っているんですよね。それがいったい何なのか、いまだにうまく説明できないんですけど……。「ブータンが好き」という気持だけではないです。これだけ長く関わり続けていると、飽きてる部分もあるんですよ。好きだけど、飽きてるし、嫌いな面もあるし、もういいんじゃないのという気持もなくはないし、ごちゃまぜなんですけど……そういうものも全部ひっくるめて、ブータンと一生、関わっていくんだろうな、と。これからブータンがどうなっていくのか、ずっと見ていきたいと思っています。

    ——1人の写真家として、これからブータンで撮り続けていきたいと考えているテーマは?

    関:昔から僕は人に惹かれるので、これからも人を撮っていきたいなと思っています。ブータンの人たちを撮らせてもらうと、僕の目から見ると輝きがそこに写っているような、人としてのパワー、魅力を感じるんですよね。今後はブータンで、何人かの方々をずっと追いかけてドキュメンタリーとして撮りたいです。老人、少女、若者……時代がどんどん移り変わっていく中で、彼らがどんな考えで生きていくのか……。

    ——それは関さんならではの、関さんにしか撮れないテーマですね。

    関:僕は人間の生き方にすごく興味があるんです。その理由の根本には、僕自身の生き方がともすると揺らいでしまいがちだからというのもあります。だから、自分らしい素敵な生き方をしている人に憧れるんです。僕がブータンに惹かれるのは、「自分は自分でいいじゃん」という人が多いからというだけでなく、ブータン自体が一つの国として、ほかの国々を意識しながらも自分たちの文化やあり方を大切にして、それを前面に出した国づくりをしているという部分に興味や憧れがあるからです。もちろん、ブータン以外の国々にも魅力的な被写体はたくさんありますから、これからはそういう国々も積極的に撮りたいと思います。ただ、ブータンとはこれまでに太いご縁をいただいているので、このつながりはずっと大切にしていきたいですね。

    ——ライフワークとしてのブータンとの関わりと、写真家としての可能性の拡がり。これから関さんが撮っていく新たな作品を拝見するのがとても楽しみになりました。どうもありがとうございました。

    【写真家・関健作さんに聞く:前編】

    関健作 Kensaku Seki
    1983年千葉県生まれ。写真家。2006年、順天堂大学・スポーツ健康科学部を卒業。2007年から3年間、体育教師としてブータンの小中学校で教鞭をとる。現在、写真家の道を選び、ブータンやチベット文化圏をはじめ世界各国の人々を撮影している。また、ブータンの価値観を伝えるべく、講演会や執筆活動も行っている。 日本で唯一のブータン語(ゾンカ語)翻訳、コーディネーター。著書に『ブータンの笑顔  新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間』(径書房)『祭りのとき、祈りのとき』(私家版)など。
    http://www.kensakuseki-photoworks.com


    『ブータンの笑顔  新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間』(径書房)
    https://www.amazon.co.jp/dp/4770502168


    『祭りのとき、祈りのとき』(私家版)
    http://www.kensakuseki-photoworks.com


    関健作 写真展「祭りのとき、祈りのとき」
    2016年9月27日(火)〜10月7日(金)
    会場:コニカミノルタプラザ
    http://www.konicaminolta.jp/plaza/

    聞き手:山本高樹 Takaki Yamamoto
    著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行。
    http://ymtk.jp/ladakh/

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