「え、ママが用意してたやつ? 知らない」
そんな会話に心当たりはありませんか。防災グッズはそこそこ揃えてある。でも、どこにしまったか、何が入っているかを知っているのは、揃えた本人だけ。いざというときにその人が家にいなければ、せっかくの備えも“開かずのポーチ”になってしまいます。
この問題に、意外なところから答えを出しているのがキングジムです。ファイルとテプラの会社がつくる防災グッズは、とにかく「誰が見てもわかる」ことに振り切っています。
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防災グッズは、シンプルな段ボール箱の方が実はいいという気づき
非常食やライトをかわいいポーチや丈夫そうなバックパックにまとめて、クローゼットや下駄箱の奥へ。よくある光景です。でも、ほかの家族から見れば、それはただのポーチやバック。その中身が防災グッズだとは気づいていなのではないでしょうか。
防災の日の前後や大きな地震の後、防災グッズの売れ行きはぐっと伸びるそうです。つまり、みんな「何かあった直後」に慌てて買い、しまい込み、そして場所を忘れる。これが“防災あるある”の王道です。
キングジムの開発担当者は、こう話します。
「リュックだと、どうしてもしまう場所に困ったり、大きくなったりしてしまいます。箱の形なら、家庭でも本棚などに並べておけますし、何が入っているかもパッケージを見ればひと目でわかります」
そこでキングジムが考えたのが、防災グッズをファイルのように本棚に並べるという発想です。

「災害対策セット」シリーズは、A4またはA5ファイルとほぼ同じサイズの箱に防災用品を詰めたもの。書類がペーパーレス化で減って空いた棚のすき間に、ファイルの代わりに差し込んでもらうことも想定しているそうです。さすがファイルの会社、発想が本棚基準です。
背表紙は日本語と英語のリバーシブルデザイン。棚にすっきりと並べて保管でき、しかも防災グッズだとひと目でわかります。2025年にはグッドデザイン賞も受賞しました。

なぜポーチではなく箱なのか。担当者によれば、理由は「自立して、収納しやすいから」です。
「箱なら自立するので、すっきり収納できます。災害対策セットシリーズはオフィスなどの棚に並べて保管しやすく、車載セットなら、ほかにもいろいろなものが入っているトランクの中にも収めやすい。収納する場所を考えて、箱型にしています」
ラインアップは用途別に20種類近くあります。6種類の味のご飯が入った「3日分」セット、熱中症対策の「暑さ対策」セット、10月発売予定の「火山灰・粉じん対策」セットまであり、もはや防災の図書館状態です。
中でもよく考えられているのが「差し替え式 災害対策セット」。期限のある食料や水、簡易トイレと、期限のない軍手やホイッスルを別々の箱に分けてあり、期限が近づいたら食料などの箱だけを買い替えればOKです。「全部まとめて買い直すのはもったいない」という、あのモヤモヤを解消してくれます。
ほかにも、電車やエレベーターに閉じ込められたときに備える「災害常備ポーチ」など、使う場面ごとのセットが揃っています。

積みっぱなしで−20℃〜80℃までOK。車載セットは真夏の車内もへっちゃら
大雪で立ち往生、渋滞で何時間も動けない、故障で救援待ち。車の“もしも”は、アウトドア好きほど他人事ではありません。
「非常用車載セット」は、そんな車内での足止めに備えるセットです。すごいのは、水や食料を含むセット全体が−20℃〜80℃の環境で品質に問題がないことを確認している点。真夏の炎天下の車内でも、真冬の雪山の駐車場でも、直射日光を避けられる状態であれば積みっぱなしでOKです。
中身は保存水、クッキー、氷砂糖、簡易トイレなど12アイテム。連絡カードに戻り時間や連絡先を書いてダッシュボードに置けば、車を離れるときの伝言メモになります。
「車1台にこのセットがあるだけでも全然違います」と担当者。A5サイズなので、助手席の下にもすっと収まります。



キングジムの防災ブランド「KOKOBO(ココボ)」とは
キングジムは2025年8月、防災ブランド「KOKOBO(ココボ)」を立ち上げました。コンセプトは“特別感のない防災”です。
「いざという時に備えていても、使い方がわからなかったり、すぐに使えなかったりしたら、備えている意味がなくなってしまいます。日常の身近なところに置いていただける設計にすることで、普段から使っていただける。フェーズフリーの考え方にもつながりますが、日常に寄り添った防災を目指しています」(開発担当者)
ブランド名には、「ここにぴったり」「個々が使える」「ここぞというときに役に立つ」という3つの”ここ”と、「あったら安心、そなえて安心」という”こころ”の想いが込められています。新製品だけでなく、これまでに発売された防災用品もすべてKOKOBOブランドに含まれます。今回ピックアップした商品も、新旧含めてKOKOBOブランドに統一されました。
同社の防災用品カテゴリの売上は、2020年度から2025年度にかけて約600%に伸びました。需要が高まるのは、9月の防災の日や3月11日の前後、年度末の予算消化の時期。大きな地震や南海トラフ関連の情報が出た後にも、問い合わせが一気に増えるそうです。
ファイルや収納用品でオフィスの課題解決に取り組んできた同社らしく、防災用品はA4ファイルやA5サイズの箱に収まるものが多く、デスクの引き出しや書棚にすっきりしまえます。この「しまいやすさ」も、日常に溶け込ませるための工夫のひとつです。
いつやってくるかわからない「いざ」という時。防災用品はたくさんありますが、一番大切な認知しやすさに着目したのはさすがの視点ですね。




