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カリフォルニア観光局主催FAM(現地視察)ツアー参加記の第3弾です。ラッセン火山国立公園、シャスタ山と北カリフォルニアの山岳地帯を北へ北へと進んでいた私たちは、ここから西へ向けて太平洋岸に近づいていきました。次の目的地はオレゴン州との州境に近い海岸沿いに広がるRedwood National and State Parks(レッドウッド国立・州立公園)です。
その名の通り、この公園の目玉は大木の森(レッドウッド)です。そこには世界一高い、とされる木があります。
と聞くと「あれっ?」と思う人もいるかもしれませんね。カリフォルニア州にはやはり大木があることで知られる国立公園があるからです。セコイア国立公園(Sequoia National Park) とキングスキャニオン国立公園(Kings Canyon National Park)がそれです。ヨセミテの南東に位置するという地理的な要因もあり、どちらかといえばこちらの方が有名です。
レッドウッドもセコイアも、どちらも巨大になる樹木です。天に向かってまっすぐ伸びた見た目もそっくりで、私には見分けがつきません。しかしながら、厳密には違う種類の木だということです。
レッドウッドは海岸近くに生育し、非常に背が高くなる木です。一方、セコイアは山岳地帯に生育し、レッドウッドほどの高さにはならない代わり、幹が太い(体積が大きい)ことが特徴です。
つまり、高さならレッドウッド、体積ならセコイア、というわけです。それぞれの木の名を冠した国立公園は、どちらもそれぞれのカテゴリー内で「世界で一番の木」が園内にあります。ただし、その見せ方については大きな違いがありました。
森と川とビッグフットの伝説

シャスタ山からレッドウッドまでは4時間を超える長い道のりでした。その後半は州道299号線。トリニティ川(Trinity River)に沿った山道です。
トリニティ川は以前に紹介したクラマス川の支流です。本流と同じく、鮭が豊富に遡上することで知られ、何千年もの間、北米先住民の生活を支えてきた川です。
この川の流域にはもうひとつ、知る人ぞ知る、隠れた名所があります。太平洋まであと約100㎞の下流のウィロー・クリーク(Willow Creek)という小さな町にある博物館です。
正式名称は「Willow Creek China Flat Museum & Bigfoot Collection」。全米にいくつかあるビッグフットに関する博物館のひとつです。たぶんですが、そのなかでもっとも有名な博物館ではないでしょうか。公式ウェブサイトも「ビッグフットの世界の首都」であると主張しています。
ビッグフットって何? という人は多いかもしれませんが、知らなくてもけっして恥ではありません。ビッグフットとは巨大な類人猿のような姿をしているとされる未確認生物。ネッシーや雪男のようなものですね。
ビッグフットは北米大陸のとくに太平洋側の山岳地帯で多くの目撃報告があります。まさにこの辺りです。それくらい、深く、人の気配がしない森が続いているのです。
まことに残念なことながら、私はビッグフット博物館を訪れることはできませんでした。ツアーバスがウィロー・クリークの町を通り過ぎるとき、「ここで停めてくださ~い」と叫ぶことはさすがに憚れたためです。
運転手兼ガイドの方は「寄りたいところがあれば、遠慮なく言ってくださいね」と親切におっしゃってくださっていましたが、いいトシをした大人が「未確認生物に興味があります」とはなかなか口に出せませんね。

この日に宿泊したユーリカ(Eureka)の町で、地元観光局に勤める先住民族出身の女性と話をする機会がありました。家族は今もウィロー・クリーク近くに住んでいる、ということでしたので、ビッグフットについてどう思いますかと尋ねてみました。
彼女はミステリアスな微笑を浮かべ、少し言葉を選びながら、「ビッグフットは象徴であり、目には見えない」という意味の答えをくれました。さすがだな、と唸りました。哲学的というか、神秘的というか、何か霊的なものさえ漂ってくるようでした。いるか、いないか、という即物的な議論とは一線を画した考えですね。
順番は逆になりますが、この会話の前にツアーで訪れていたレッドウッド国立・州立公園でも、私は目には見えない大切なものを感じていたのです。
「木を見て森を見ず」の戒め

前述した通り、レッドウッド国立・州立公園には世界一高い木があります。2006年に発見されたハイペリオン(Hyperion)という木で、高さは100mを大きく超えます。『ナショナル・ジオグラフィック誌』(National Geographic)で取り上げられたことで有名になりました。
ところが、レッドウッド国立・州立公園を歩いていても、「世界一高い木はこちら」という案内はありません。園内は森の中にトレイルが通じているだけです。見上げるような高さの木が並んでいますが、どの木が一番高いかは地上からはよく分かりません。
私たちツアー一行を案内してくれた地元ガイドさんの説明はこうでした。
「世界一高い木の場所を観光客に公表してしまうと、そこへ人が集中してしまう。そして、多くの人が同じ場所を歩けば、木の周囲の植生や土壌が傷んでしまう。だからあえて分からないままにしておく。ある一本の木ではなく、森全体を見てほしい」
「世界一高い木」を観光名所として売り出すより、そこに広がる森林の自然環境を守ることを優先する。立派な見識だと私は思いました。

公園内には倒れた木もたくさんあります。なかでもひときわ大きな倒木を、「これはThe Earthquake Treeと呼ばれています」とガイドさんが教えてくれました。
直訳すると「地震の木」です。最初は、地震で倒れた木なのだと思いました。ところが、話をよく聞くとそうではありませんでした。その逆です。倒れた木の衝撃によって地面が揺れ、それが地震計に記録されるほどの大きさだったということです。
本当かよ、とそのときは半信半疑だったのですが(反省しています)、後日調べたところでは、どうやら事実のようです。『ナショナル・ジオグラフィック』にもそのことが紹介されていることを知りました。
■『ナショナル・ジオグラフィック』オンライン版の記事:
https://education.nationalgeographic.org/resource/tall-trees/
1991年3月25日、Dyerville Giantという巨大なレッドウッドが嵐のために倒れました。その際に地面に倒れた衝撃が近くの地震計に記録されたということです。
そんな面白いエピソードも、この倒木がそれだよ、と示す案内はどこにもありません。ただ大きな木が地面に横たわっているだけです。倒木にはコケやシダなどが生え、森の一部になっています。ガイドさんが教えてくれなければ、きっと気がつかずに通り過ぎていたでしょう。

セコイア国立公園との違い
ガイドさんに連れられてレッドウッド国立・州立公園を歩いている間、私は以前訪れたことがあるセコイア国立公園のことを思い出していました。そこにはGeneral Sherman Tree(シャーマン将軍の木)という、体積では世界最大の木として知られるセコイアがあります。
高さは約84mですが、体積は約1487立方メートル。巨大な幹を目の前にすると、木というより大きな建造物を見ているような気分になります。
そして、ここでは「世界最大の木」が観光名所、もっとはっきりいえば、記念撮影スポットとして、多くの訪問客を集めています。駐車場のトレイル入り口には「シャーマン将軍の木はこっち」矢印つきの案内板があり、木の根元には柵があり、その周辺には写真撮影の順番を待つ人々が長い列を作っています。
あえて世界一高い木がどれであるかを公表しないレッドウッド国立・州立公園とは対照的な光景です。同じカリフォルニア内にあって、樹木の名前を冠した国立公園ですが、その見せ方には異なるアプローチを取っているように感じます。
私自身は空いた場所が何よりも好き、というへそ曲がりな人間ですので、レッドウッド国立・州立公園の方に好意を持ちます。
そんな私の好みはともかくとして、レッドウッド国立・州立公園が森林保護優先の方針をとる背景には、この自然が急速に失われているという危機感があります。米国国立公園局(NPS)の資料では、1850年代からレッドウッドの商業伐採が急速に進み、蒸気機関や20世紀の機械化によって伐採の規模がさらに拡大しました。特に第二次大戦後には大規模な皆伐が進み、1960年代にはもともとの原生レッドウッドの約90%が伐採されたということです。
■米国国立公園局(NPS)資料:
https://www.nps.gov/redw/learn/historyculture/area-history.htm
私の目には見渡すばかりの大木だらけに見えたレッドウッド国立・州立公園ですが、実はけっして無限ではありません。観光の利便性を優先させるか、残された自然を守ることを優先させるか。一考に値する命題ですね。
カリフォルニア観光局ウェブサイト内レッドウッド国立・州立公園案内ページ:
https://www.visitcalifornia.com/things-to-do/redwood-national-state-parks/







