富士山より高い北カリフォルニアの単独峰「シャスタ山」。その麓にある小さな町を歩く | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海外の旅

2026.10.06

富士山より高い北カリフォルニアの単独峰「シャスタ山」。その麓にある小さな町を歩く

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北カリフォルニアのラッセン火山国立公園を歩く。火山と山火事が変える大地の姿 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

カリフォルニア観光局主催FAM(現地視察)ツアー参加記の第2弾です。前回のラッセン火山国立公園からさらに約150㎞北上し、シャスタ山(Mt. Shasta)を目指しました。

シャスタ山の標高は4322m。富士山が3776mですから、それより500m以上も高い山です。そして富士山と同じように単独峰です。周囲の山々の中に紛れることなく、遠くからでもその山容を眺めることができます。

カリフォルニアにはもっと高い山もあります。たとえば、州最高峰のホイットニー山(Mt. Whitney)は標高4421mで、シャスタ山をさらに約100m上回ります。ところがこの山はシエラネバダ山脈の中にあり、周囲にも高い峰が連なっています。見る位置によっては、どれが一番高い峰なのか見分けがつかないこともあります。

「米国自然保護の父」と呼ばれるジョン・ミューア氏も、ホイットニー山は周囲の山々の中に埋もれて見つけにくい一方、シャスタ山は遠くからでも目立つ山だと記しています。

そんなシャスタ山の麓にあるのが、同名の小さな町、Mount Shastaです。私たち一行ははるか遠くにそびえるシャスタ山を車の中から眺め、だんだんと近づいていきました。

山麓の小さな町で目にしたもの

町のどこからでもシャスタ山を眺めることができる。

この町の人口は約3000人。メインストリートはわずか数百メートル。と書くと、まるで浜田省吾さんの名曲『MONEY』の出だしのようですが、それとはだいぶ雰囲気が異なります。こちらは荒れ果ててもいませんし、寂れてもいません。むしろ、静かで落ち着いた、という表現が似合う町です。

この小さな町に、自然食専門のスーパーマーケットやヨガのスタジオなどが点在していることから、健康志向の高い人たちが多く住んでいることが想像できるでしょう。全国チェーンのファストフード店はなく、代わりにおしゃれで個性的なカフェやレストランがあります。天然石やクリスタルを扱う店も目につきました。ヨガや瞑想などの文化も、この町では特別なものではないようです。

早朝に町の周辺を走ってみました。大通りを外れ、住宅地域に入っていくと、この町がいかに緑豊かな自然に恵まれているかがよく分かります。道路は高い樹々に囲まれ、その両側に広い敷地をもった家が並んでいます。派手な豪邸は目につきませんでしたが、よく手入れされた家が多い印象を受けました。

大きな樹に作られたプラットフォーム。奥が家屋。

道路の脇に「Gateway Peace Garden」と書かれた小さな看板を見つけました。平和への入口の庭園? 入口には「祈りと瞑想の場です。静かにお立ち入りください」と注意書きがあります。

仰せの通り、そ~と中に入り、庭園を散策してみました。シャスタ山を遠景にした花園のあちこちにはマリア像や仏像が立ち、そして人々が祈りの言葉を綴ったたくさんの札が枝からぶら下がっています。

Gateway Peace Garden内部。

庭園の周りは普通の住宅が並んでいます。すぐ近くには公立高校(Mount Shasta High School)があります。ごくごく日常的な場所にこのような場所が溶け込んでいるのです。この町では祈りと瞑想がごく身近にあることを感じました。

もうひとつ、印象的な場所がありました。シャスタ山周辺からの湧き水を汲める泉です。容器を持った地元の人が入れ替わり立ち寄り、清涼な水を汲んで持ち帰っていきます。

私たちツアー一行もこの泉で水を汲み、そして飲んでみました。冷たくて、美味しい。BE-PAL読者にもおススメしたいのは山々なのですが、住所などの詳細を述べることは控えさせていただく事情があります。 

というのは、この泉は日本の「名水百選」のような公的なお墨付きがついた場所ではないのです。それどころか、「この泉の水を飲むことの安全性は確認されていません。使用は自己責任で」と市当局の警告文が掲げられています。私自身は飲んだ後も何も問題は起きませんでしたが、他の人におすすめするわけにはいきません。

シャスタ山からの湧き水を汲む。

この場所はあまり公にしない方がよいのかもしれません。今より多くの人が訪れるようになると、水が汚れてしまう可能性もありますから。小学校唱歌のような「水は清き ふるさと」を、シャスタ山の人たちに残しておきたいと思います。自分は行っておきながら、まことに身勝手な言い分なのですが、ご容赦ください。

山で過ごす静かな時間

シャスタ山には、頂上を目指す登山路のほかに、ハイキング気分で歩けるトレイルがいくつかあります。そのうちのひとつを私たちも歩きました。

幸運なことに、素晴らしい天気に恵まれました。抜けるような青空の向こうに、万年雪をかぶった山頂をはっきりと眺めながらのハイキングです。

私はトレイルランナーでもありますので、こういうところではついつい歩くペースが速くなります。それどころか、鼻息も荒く走りだしてしまうこともあります。思索とか内観とかにはあまり縁がないタイプです。せっかくの景色なのに、もったいないなとは思います。

このシャスタ山には、そんな「ランナー気質」あるいは「体育会系」とはいささかタイプを異にする人々が多く訪ねてきているようでした。

岩の上でひとり静かに座っていた人、泉の畔に腰を下ろしていた数人のグループ、木々に囲まれた場所で長い間立ち止まっていたカップル。祈っているのか、瞑想をしているのか。彼らに共通しているのは静けさです。

トレイルからいくつもの小川や沼が見えた。

ここでは私もいつものようにドタバタと通り過ぎるわけにもいかず、ましてや眺望が開けた場所で「ヤッホー」と大声を上げることなどできません。自然の中で静かな時間を過ごす人々の邪魔にならないよう、足音は忍ばせ、口数も少なくなりました。

こうしたハイキングは私のスタイルではありません。それでも、天高くそびえるシャスタ山の崇高な姿に畏敬の念を抱く人々が多くいることは十分理解できました。

「少し形が崩れた富士山みたいな山」と家族に伝えた私は罰当たりであったかもしれません。

清らかな水で遊ぶ

シャスタ山の町から少し車を走らせると、森の中には川や滝、湖が広がっています。山登りだけではなく、水遊びができる場所も多いのです。

そのひとつがマクラウド川(McCloud River)です。川沿いにはUpper Falls, Middle Falls, Lower Fallsという滝があり、3つを結ぶトレイルを歩くことができます。上流から下流へと向かう限り、ずっと下りの比較的歩きやすいコースです。

3つの滝はいささか安易に名づけられているようにも思いますが、どれも目が洗われるような美しさでした。滝つぼでは岩から飛び込む人や泳ぐ人も見ました。水に手を入れると切れるような冷たさなのですが、どこにでも元気な人はいるものです。

Lower Fall。岩から飛び込む人が周囲から拍手を浴びていた。

Heart Lake、Lake Siskiyouといった湖では、カヌーやSUPを楽しむ人々が多く集まっていました。レンタルのような施設は見当たりませんでしたので、みなが車に積んでくるのだと思います。水は透き通り、周囲は深い森に囲まれ、遠くにはシャスタ山を眺める。羨ましいぞ、と思わざるを得ませんでした。

Heart Lake。SUPの運搬を手伝う代わりに撮影の許可を得た。

こんな場所が町の中心部から数十分ほどの距離にいくつもあるのですから、私から見るとかなり贅沢な環境です。私たちが訪れたときは、どこも比較的空いていました。しかもほとんどが入場無料です。もし町がどれだけアウトドア遊びに向いているかを評価する指数みたいなものがあれば、きっとシャスタ山周辺はかなりの高得点を獲得するのではないでしょうか。

後日談

ツアーを終えて帰宅してから数週間後、シャスタ山に関する気がかりなニュースを目にしました。この山で遭難した登山者が救助された、というものです。気がかりなのは救助されたことではなく、3人の初心者グループがAIに頼って登山ルートや持ち物などを計画していたことが報じられたことです。

彼らは8時間程度の登山を想定して出発しました。ところが、実際には山頂に到着したのは午後7時。すでに日没に近く、予定していた引き返し時刻を大幅に過ぎていました。その後、暗くなってからの下山中に迷い、1人が膝を負傷して動けなくなりました。翌朝、米国森林局のレンジャーらによって全員が救助されました。

登山路入口から眺めたシャスタ山は、雄大ではありますが、険しさはさほど感じませんでした。登山の素人である私にもそれほど登攀が困難なようには見えませんが、むろん実際のところは分かりません。はっきりしているのは、やはり4322mという高さを甘く見てはいけないということです。

シャスタ山登山路入口のひとつ。標高約2400m。

カリフォルニア観光局ウェブサイト内シャスタ山案内ページ:
https://www.visitcalifornia.com/experience/mount-shasta/

著者画像

角谷剛さん

米国在住ライター(海外書き人クラブ)

日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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