すでに何度か訪れたことがあるツェルマット。数年ぶりの滞在となる今年は夏休みと重なり、国内外の観光客で大にぎわい。周囲の放つ高揚感がこちらまで伝わってきます。
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日本と深い絆も?心地よい空気が漂うツェルマットを歩く
標高1620mのツェルマットに到着した時、気温は21~22℃で気持ち良い風が吹いていました。ホテルにチェックインしてひと息ついた後、いつものツェルマット一周散策へ出かけることに。

夏のツェルマットは日本からの旅行者に最も人気が高い観光地の一つ。それだけに通りを歩いていると日本語がよく耳に入ってきます。

雄大な自然に囲まれ、和やかな情調あふれるツェルマットに魅了され、長年にわたり交流を重ねてきた日本の自治体も存在します。遠い国同士だけど似た風景があり、何となく郷愁感があるところも深い絆で結ばれやすいゆえんなのかもしれません。

さてぐるっと村を一周してマッターホルンに挨拶をしたり、道沿いに植えられたアルプスの花々の横を通り過ぎたりしながら、夫と一緒に明日の具体的なルートを作戦会議。

翌日は数年前にできたばかりのある場所と、この地域原産の動物たちが暮らすエリアへ足を延ばします。
希少なアルプスの花を守る、ローテンボーデンの「小さな植物園」
次の日、ホテルで朝食を済ませたらさっそく目的地へ出発!
ツェルマットでよく知られた名所といえば、ゴルナーグラート(Gornergrat)。スイス初のラック式電気鉄道で、1898年から運行を開始したゴルナーグラート鉄道に乗り、標高3089mの展望台で氷河の絶景を楽しんだり、ハイキングを楽しみながらアルプスの花々や動物を観察したりと、自然の魅力が凝縮されています。
とはいえ今回私たちが目指すのは頂上駅ではなく、途中駅のローテンボーデン(Rotenboden)。

ローテンボーデンは、リッフェル湖(Riffelsee/リッフェルゼー)の湖面に映る“逆さマッターホルン”の景色でよく知られますが、私が見てみたかったのは2024年にオープンした高山植物園「(Alpingarten/アルピンガルテン)」でした。
この周辺では100種を超える高山植物が見られるらしく、特に7月~8月半ば頃にしか開花が見られない種や、ここでしか見られない希少なものもあるそう。

ところが、ローテンボーデン駅からリッフェル湖を目指す多くの観光客によって高山植物が傷つけられてしまい、土地も荒れてしまっているのだとか。
もちろんここを訪れる人たちは故意に高山植物を踏んでいるわけではなく、草地や岩場にひっそり生えているがゆえに、気付かずうっかり踏んでしまうようです。

さらに駅からリッフェル湖への道は、石が多い砂地の道で不安定。歩いて降りていく時に「足を滑らせるのでは」という恐怖心から、多くの人が歩きやすい草むらを通っていたのかもしれません。

そういった背景から新しくできたミニ高山植物園「アルピンガルテン」は入場無料。木製の柵とロープで囲んで植物を守り、その横に小道が設けられています。
高山植物の写真や名前が書かれたプレートも至る所に立っており、ここでたくましく生きる植物のことを学べるようになっていました。

こうして花を観察していた私ですが、ダメージを受けている草地では花の姿もやや少なく思えます。その時横で花を見ていた男性2人が「ここにエーデルワイスの説明プレートがあるのに、エーデルワイスが見当たらないねぇ」と話しているのが聞こえました。
観光客に一番人気があるエーデルワイスですが、土地が踏み荒らされた結果、この地から姿を消してしまったそうで、現在再導入を試みている最中なのだとか。そのためアルプスの自然の中で咲く「高貴な白い花」は見られませんでしたが、他の様々な高山植物が私たちの目を愉しませてくれました。



リッフェル湖のほとりにたどり着いた後は、白いふわふわのワタスゲで彩どられた風景の中散策を楽しみ、ときおり小休止を挟みつつ贅沢な時間を味わったのでした。

“世界一カワイイヒツジ”不在…その直後に遭遇した愛すべき動物たち
ローテンボーデンに別れを告げ、次に目指した目的地はリッフェルアルプ(Riffelalp/標高2211m)。
ヴァリス州原産で“世界一カワイイ”と言われる「ヴァレーブラックノーズシープ(ヴァリス州の黒鼻ヒツジ)」ことヴァリザー・シュヴァルツナーゼンシャーフ(Walliser Schwarznasenschaf)に会いたかったのです。

なんでも夏の間放牧されているヒツジたちがどこにいるか分かるサイト『Meet the Sheep(ミート・ザ・シープ)』によれば、この日はリッフェルアルプ周辺にいるらしい。
しかし念のため、朝列車に乗る前に駅近くにある観光案内所も訪れていました。
地元で育ったのであろうメガネの若い男性スタッフが「『Meet the Sheep』が示している場所にいるはずですよ!あ、でも絶対会えるとは限りませんヨ、ヒツジたちは自分の意志で動きまわるので」とニッコリ。――果たしてヒツジたちに無事会えるのでしょうか。

さっそくリッフェルアルプの散策路を歩き回り、ヒツジがいそうな場所を手当たり次第に探してみるものの、姿はどこにもありません。ふと見ると、同じように愛犬連れの夫婦らしき二人も何かを探すようにうろうろしています。ちょっとあの二人に話しかけてみようか。
その途端、1台の車が山の上の方からゆっくりと坂道を下って来ました。リッフェルアルプのホテル所有の車です。すると二人連れの女性の方がその車を呼び止め、運転していた男性に何か質問し始めました。
私たちが遠くから耳を澄ませて会話を聞いていると、どうやら女性はヒツジがこの辺にいるか尋ねているよう。
「カイネ・アーヌン(ドイツ語で「全く分かりません」の意)!上の方にはいませんでしたよ」と申し訳なさそうに肩をすくめる男性。がっくり肩を落とす私たち。

後日分かったことですが、ヒツジたちは主に火曜日~日曜日に放牧されていて、月曜日は「休業日」なのだとか。そしてまさに私たちがヒツジに会いに行ったのは月曜日。
スイスアルプスの山の天気以上に予測が難しかった、ヒツジたちの“勤務スケジュール”でした…実に悔しい。

失意の中ツェルマットへ戻り、通りをぶら歩きしていると、どこからともなくガランガランと大量の鈴の音がします。何事かと様子を見に行くと、「ヴァリザー・シュヴァルツハルスチーゲ(Walliser Schwarzhalsziege)」が村の大通りを闊歩(かっぽ)しているところでした。
直訳すれば「ヴァリス州の黒首ヤギ」と呼ばれるヴァリス州原産のヤギで、白黒のツートンカラーが特徴です。首のみならず上半身全体が黒いので、なんだか白ヤギが黒い上着を着ているかのよう。

そういえばホテルのチェックイン時に、「夏の間ヤギたちが村の通りを歩いて牧草地まで行き来するんですよ。この時表通りの花をつまみ食いするので困ってるんです」とスタッフが話していましたっけ。
ちなみにこのヤギたちは搾乳や食肉用というよりは、景観保護目的もしくはペットとして飼育されることが多いのだとか。
こうして思いがけずヒツジの代わりに、またしてもヤギを引き寄せた私。思えば数年前のサース・フェーでも、マーモットに振られてヤギに頬ずりされた記憶が…。どうやらヤギとは相性がとても良いようです。
Zermatt – Matterhorn:
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