北国の短い夏を彩るトマトの季節がやってきた!食べるのはもちろん、栽培することも大好きというトマトフリークの宇土さん。太陽の光と谷の水を真っ赤な果実に凝縮させたトマトは、宇土さんの暮らしに欠かせない野菜のひとつ。生食にも加工にも大活躍している。オリジナルのサラダやパスタのレシピを参考に、旬の味を楽しもう!
トマトが好きだ!

8月の菜園の主役はトマト。太陽の光と谷の水を糧に成長したトマトは北国の束の間の夏を猛スピードで駆け抜ける。早朝、散歩のついでに菜園に立ち寄ると花房に行儀よく整列したトマトが迎えてくれる。
「おはよう!ピンキー」
花房から赤く熟れた実をひとつもいで口に入れる。味を確かめて隣のオレンジ色のトマトもひとつ。
「元気?オレンジパルチェ」
その隣の梨形の実もひとつ。美味この上なし。私はトマトが好きだ。食べるのも好きだが栽培する方がもっと好きだ。とりわけ種を播いて苗を作るのが好きだ。
春、トマトの精鋭たちの種を播く

気分は春。でも外にはまだ雪がたっぷり残る4月の半ば、トマトの種を手に温室に急ぐ。トマトフリークの私にはトマトの種を播くこの日こそ本当の新年なのである。用意したトマトの種は20種類あまり、生食用と加工用が半分ずつ。冬の間、あーでもないこーでもないと悩みに悩んで選んだトマトたち。彼らは100種類を超すトマトの中から選ばれた精鋭たちなのである。
直径6センチの育苗用のビニールポットに培養土を入れる。じょうろで水を撒いて土を湿らせる。その上にそっとトマトの種をおいてふるった土を被せる。種子は1ポットにつき2個ずつ。温室とはいえ夜間は零度を下回ることもあるのでビニールカバーをかけて保温する。10日もすればトマトは芽を出してゆっくり生長する。日中は覆いを外して光に当てて水をやる。5ミリにもみたない小さな種のどこにこんな力が潜んでいたのか、トマトは貪欲に光を吸収して40~50日もするとしっかりとした若い苗に育つ。

この時期の温室はトマトや茄子、ゴーヤーやオクラなど夏野菜の苗、アブラナ科のキャベツやブロッコリーの苗、豆類の苗や花の苗がズラリと並ぶ。40年来変わらぬ春の光景、これこそ私が愛してやまない光景なのである。
夏の食卓の主役、「あのサラダ」を作ろう!

トマトのない夏の食卓なんて想像もできない。家族が集う夏の食卓の主役は決まって大玉トマトを使った「あのサラダ」。
「あのサラダ」作り方
1.大玉トマトを薄切りにして大皿に円を描くようにして並べる。
2.白ワイン酢1:オリーブ油1、塩と白胡椒少々をかき混ぜて作ったシンプルなドレッシングを
トマトにまわしかける。
3.皿ごと冷蔵庫で2時間以上冷やしてバジルを添えて食卓へ。
気が向けばみじん切りの玉葱、黒オリーブ、ちぎったモッツァレラチーズなどを散らすこともあるが、ともかくマリネして冷やす、ここがポイントなのである。菜園直送の採れたてトマトはもちろんのこと冬にスーパーで売っているようなトマトでも美味しくできるところが嬉しい。万一残ったら翌日、バゲットにのせて食べると美味しい。
今年は「あのサラダ」用に大玉の「モモタロウ」と「ポンテローザ」と「世界一」を栽培している。
毎日食べても飽きなミニトマトのパスタとは?

7月も半ばを過ぎると菜園に定植したミニトマトが色づき始める。8月に入るとそれこそ手がつけられない量のミニトマトが実る。そうなるとランチは来る日も来る日もミニトマトのパスタということになる。
ミニトマトと一緒に収穫した茄子や万願寺唐辛子、サヤインゲンやスナップ豌豆、オクラなどを使って目先を変えれば毎日がトマトパスタだって飽きることはない。かな?
ミニトマトのパスタの作り方
1.鍋でパスタを茹で始めると同時に薄切りにした大蒜と唐辛子をオリーブ油で炒める。
2.唐辛子は取り出して適当に切った茄子やインゲンを加える。
ヘタをとって半割りにしたミニトマトも一人分で10個ほど加え、白ワインを注いで蓋をする。
3.2~3分蒸し煮してパスタのゆで汁を加えてソース状にする。
4.茹で上がったパスタを湯切りしてフライパンに加えて味を馴染ませる。
5.皿に盛ってバジルやルッコラを散らす。食べる。美味この上なし。
このシンプルなトマトソースはパスタのみならずグリルした鶏肉や豚肉や魚介類のソースにしても美味しいから、ミニトマトの消費に大いに貢献してくれる。


毎朝、菜園の見回りついでに食べるミニトマトは朝食のサラダ代わり、菜園の草とりに疲れたらミニトマトで水分補給、昼食はトマトのパスタと、私の体の半分以上はミニトマトでできているに違いない。今年は10種類ほどのミニトマトを栽培している。赤、オレンジ色、黄色、濃紫色、丸型、洋梨型、細長型と色も形も様々、味も様々。そんなにたくさん!と心配するなかれ、食べきれない分は冷凍しておいて冬のスープやソースに余すことなく利用する。
果汁が少なく、うまみが強い加工用トマト

大玉トマトやミニトマトの他に調理用トマトというのがある。日本では生食用トマトが中心なので調理用トマトはそれほど馴染みがないかもしれないが、トマト缶のラベルに描かれているのが調理用トマトの代表選手「サンマルツァーノ」。
生食用のトマトは皮が薄い、果汁たっぷり、糖度が高いが売り物になる。一方の加工用は皮が厚い、果汁が少ない、甘みよりうま味が強い、と生食用とは逆の方向で進化してきた。皮が薄くて糖度の高いミニトマトはすぐに実割れするので収穫に追われるが、皮の厚い調理用は実割れしにくいので完熟したトマトをまとめて収穫することができる。まことに効率がいい。果汁が少ない分うま味が凝縮しているし、加熱すると短時間で水分が蒸発するので煮込みに時間がかからない。煮込み料理の決め手は甘みよりもうま味と酸味。
というわけでトマトを調理に利用する機会が圧倒的に多い私はどうしても加工用トマトが栽培の中心になる。種はほとんどオークションで入手しているので中には怪しげなものもある。今年、入手したオレンジサンセットという名前の調理用トマトは雑草のごとく繁茂してオレンジ色ではなくて黒紫色の実をつけている。この実がオレンジ色に華麗に変身するのを楽しみに待っているが、もしかしてサンセットというのは夕焼けではなくて日没後というつもりなのだろうか?

この騒々しくも幸せなトマトとの蜜月は8月いっぱい続く。
*撮影/藤門 弘




