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磯野貴理子の推し鳥DIARY 第12回 富山にて石を拾いにひとり旅
今回は、長いあいだ封印してきた密かな"推し"をとことん語ります!
皆さんは、いつもバッグに忍ばせているものってありますか? 私は、石です。鳥を好きになるよりずっと前から、密かに石に惹かれていました。きっかけは『すべてのひとに石はひつよう』という絵本。石の素晴らしさや自分なりの石の見つけ方みたいなことが描かれていて、出かける先々で石を拾ったり、大きな岩を触ったりしているうちに、気づけばすっかり石好きになっていたんです。
そんなに好きなら声を大に「好き」といえばいいのに、って思うでしょう? じつは一度、33年続いている『はやく起きた朝は…』というテレビのトーク番組で、拾った石のことを嬉々と話したことがありました。ありがたいことに放送後にはいつも感想のお便りをたくさんいただくのですが、石の話をした回のリアクションはたったの2通だけ……。それで、ああ、石って人気ないんだなとしょんぼりしてしまって。それ以来、石好きのことは胸にしまっておこうと決めていたんです。
ところがです! BE-PAL3月号「みんなのソロ活」特集を読んでいたら、この連載の担当編集者である酒井さんのソロ活が「石集め」だと載っているじゃないですか。もう、びっくりやら嬉しいやら。それで酒井さんにおすすめスポットを教えてもらって、久しぶりに石を拾いに行ってきました。

北陸へ1泊2日の石拾いひとり旅
向かったのは富山県の宮崎・境海岸。東京から新幹線と在来線を乗り継いで、越中宮崎駅で下車します。駅から海までは歩いてすぐ。宿に荷物を置くなり長靴に履きかえて、海へ直行しました。
透明度の高いきれいな海で、浜辺は見渡す限りの石だらけ。“ヒスイ海岸”という別名もある場所で、翡翠の原石を探している人が多い印象です。でも、私の目当ては私好みのツルッとした丸っこい石。模様の美しい石にカラフルな石、それから、よもぎ餅にそっくりなかわいらしい石。見た瞬間「ブックエンドにいいかも!」ってひらめいた、ちょっと重い石も見つけて。持ち帰る大変さを忘れて、気に入った石を袋に入れました。気づけば腕がじんわり重くなっていて(笑)。
石を探しながら、ときどき顔をあげて鳥の姿も探しましたよ。ウミネコのつがいにカワラヒワ。嬉しかったのは、渡り鳥のジョウビタキたちに出会えたことです。私が石拾いに訪れたのは春先。ジョウビタキたちはこれから大陸へ渡っていく時季でした。この日本海を越えていくのかあ、なんて思いを馳せたりもして。そんなふうに鳥を眺める時間を挟みつつ日が暮れるまで、翌日も朝から石拾いに明け暮れました。
お気に入りの石を拾うだけでも楽しかったけれど、駅前のヒスイテラスという施設で、石を見極める名人の方とおしゃべりできたのも印象的でしたね。拾ってきた石を見せると、これは何々石だと教えてくれるの。黒い石を手にして「これは蛇紋岩。磁石にくっつくんですよ」と実際に磁石につけて見せてくれたり。細かな穴のあいた石は「薬石ですね。湯舟に入れると穴から泡が出て体が温まりますよ」と教えてくださったり。自宅で試したら泡は3つくらいしか出てこなくて「これだけ?」って拍子抜けしてしまったけれど、いつもより温まった気分になりましたっけ(笑)。石拾いに夢中になれたし、名人と好きな石の話を思う存分できたしで、とっても満たされた1泊2日のひとり旅でした。

素敵でしょう?
机の上に石を置いておく
石といえば、私が心から尊敬している養老孟司先生のことを語らずにはいられません。解剖学者であり、大の虫好きとしても知られる養老先生は、文庫版『養老先生と虫〜役立たずでいいじゃない〜』のエッセイでこんなふうに書いています。
「『脳化』に抗うには、できるだけ無意味なものを身近に置くとよい。私は会社の偉い人に会うと、オフィスの机の上に石を置いておくよう勧めている」と。この本によると養老先生は、理由や意味のあるものしか目に映らなくなって、頭に重きを置いてしまうような状態を「脳化」といっています。都会はそうした傾向がとくに強い場所だとも。だから、石のような存在をそばに置くことを勧めているのだと私は受け取って、読んだとき妙に腑に落ちたんです。そしてやっぱり石っていいなあと改めて思ったんですよね。
触って気持ちいいし、眺めているだけでも癒やされる。石を握っていると地球に触っている感じがして、すごく落ち着くんです。そもそも石は気の遠くなるような年月をかけてできあがるもの。宮崎・境海岸で拾った石の中には、恐竜が生きていた時代に、すでに地下でかたまっていたものだってあるかもしれません。長い旅を経てきた石が今、私のバッグの中で静かに転がっている。そう考えると小さな石がいっそう愛しく思えてきます。

海岸で拾った美しい石たち。まさかこんなにカラフルな石をたくさん拾えるなんて……。
ジョウビタキ

ウミネコ

どこに行っても野鳥観察は欠かせません。海でよく見るウミネコのほかにも、かわいい小鳥たちに遭遇。大陸へ渡る直前のジョウビタキにも会えました。
磯野貴理子

1985年、お笑いアイドルグループ「チャイルズ」の一員としてデビュー。解散後はタレント、俳優としてマルチに活動。軽やかなトークとユーモアあふれるキャラクターでお茶の間の人気者に。
【出演情報】CSフジテレビTWO「はやく起きた朝は…」(新作エピソード毎月第2日曜日 6:30〜7:00)が放映中。
フジテレビ「ホンマでっかTV」毎週水曜日21:00〜21:54 出演中。
※撮影/磯野貴理子 構成/安井洋子 プロフィール撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2026年8月号より)




