好奇心をかき立てる知的冒険へ出かけよう!
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愛知県・竹島水族館

案内してくれた人 館長 小林龍二さん

地元の蒲郡出身。水族館の運営が民間委託される際、会社が設立され、館長に就任。破天荒な改革で来場者数を飛躍的に増大させる。
行ってきた人 ライター 石田ゆうすけ

解説を読みながらずっと笑っていたほどのゲラ(笑い上戸)。近くにあったら年パス買っただろうなぁ。実際年パス会員はめっちゃ多いそうです。

オオグソクムシ(笑)。
蒲郡市竹島水族館
住所:愛知県蒲郡市竹島町1-6
電話:0533(68)2059
営業時間:9:00~17:00(平日)、9:30~18:00(土日祝日)最終入館は閉館の16時半
定休日:無休
料金:大人¥1,200、子供(4歳以上から中学生)¥500、3歳以下無料
施設の見どころ
1 おもしろい解説パネル
2 深海生物に触れる
3 深海生物展示数日本一!
DATA
設立 1956年7月8日
館内施設 2階建て/約1,954㎡
年間来場者数 約50万人

体長約1センチ。パッと見はメダカだ。でも解説パネルには《激珍》というシール。──おや? 解説を読んでみる。
《日本でこの魚を持っている人はいないぞ! と変態魚マニアに言われ、私費を投入してオランダの変態魚オークションで落札、自宅でモーレツに力を注いで繁殖させまくり、大量増産に成功したので水族館に持ち込み展示している館長の愛する魚のひとつです》
……な、なんだこりゃ?
別の魚には手書きの解説が。
《キレイな目に厚い唇、似てませんか? 石原さ◯みさんに》
……そ、そういえば。
魚が話しかけてくる解説も多い。ナヌカザメには噴き出した。
《ナヌカって七日って書くの。水からあげても七日生きていたっていう由来なの。でもそれ、ちょっと無理だわ》
館長の小林龍二さんがいう。
「学名など情報を並べても誰も読んでいないことに気付いたんです。知りたい人は図鑑やスマホで調べるだろうし、それならたくさんの人がもっと楽しめるようにと、担当の飼育員に自由に書いてもらっています」
廃館寸前だった蒲郡市のこの小さな「竹島水族館」の館長に就いたのが2015年。34歳という若さと、本人曰く「(水族館の古い体質に)グレていた」エネルギーが爆発、常識破りの改革に乗り出した。あちこちに貼られた味の解説もそう。
《美味しすぎて飼育員が泣いたウツボ料理→たたき!》
「こういうのを若手時代に貼ったら館長に怒られました。魚の生態を学ぶ場所だぞって。でもお客さんから一番聞かれるのが
『この魚おいしい?』なんです」
カサゴの水槽には色を塗ったコンクリートブロックが。
「水槽の人工岩は高価なんです。お金はないけど穴に入るカサゴは見せたい。そこでブロックを積み上げました。カサゴマンションと称して。クラウドファンディングのリターンで入居者を募り、穴に名前を書いたら、『私の部屋にカサゴが入ってる!』って喜んでくれました」
巨大な深海水槽では光がサーチライトのように動き、深海を照らしている。まるでジェームス・キャメロンの映画だ。
「首振り扇風機にライトをつけてまわしているんです(笑)」
底にはクジラの骨があった。いかにも死の象徴で、まわりで泳ぐ深海魚や、ゆらゆら動くタカアシガニといった“生”を際立たせている。別の、ヒトデだらけの水槽に放たれたホウボウは星の海を泳ぐ宇宙船のようだ。アートが好きそうな女性の一人客が多いのも分かる。
「見せ方を学ぶために美術館や演劇なんかにも足を運びます。劇団四季は狭い空間を広く見せる術に長けているんです」
日本一にもこだわった。
「深海生物の展示数です。蒲郡は古くから深海漁が盛んで、漁師さんといい関係を築き、分けてもらっています。深海は超レアな生物だらけですよ」
オオグソクムシなど深海生物に触れるプールでは大人も子供も大いに盛り上がっている。
筆者自身、この水族館に1日いたい、と心から思った。館内に充満するユーモアと飼育員たちの温かい視線に魅了されている。彼らの書いた解説を読めば、こちらも自然とそれぞれの生物に親しみを覚え、慈しむようにじっと見つめる。ひたむきに生きている、そう感じ、妙に打たれてしまう。かつては年間12万人まで落ち込んでいた来場者数が、今では50万人超と奇跡のⅤ字回復を遂げたのだ。
土産物も出色だった。メダカの産卵飴のメダカ形の紙箱は、最初はボラみたいだったそうで、16回も試作したらしい。オオグソクムシのせんべいは、味をとるか“オオグソクムシ感”をとるかで会議は紛糾したが、最終的には味をとったそうだ。
買って帰って家で食べたら、謎の甲殻類臭が口内に広がり、「え、これで味をとったの?」と仰天、体の内側からもこの水族館の魅力を再確認させられたのだった。一切の妥協も許さぬ、深海のように深い深い、愛──。
ミステリアス度満点の深海世界

2024年に増築された新館にはメインの深海巨大水槽が。クジラの骨とサーチライト風の光が、まさに劇場型水族館。

深海水槽の一部はトンネル状で、天井にタカアシガニが。まるでエイリアンのフェイスハガー。
ユニークな展示
お金をかけずにアイデアとセンスで勝負!
①カサゴマンション

名前があるとカサゴも可愛く見えます。
②ヒトデとホウボウ

宇宙船のようなホウボウ。
③ウツボの大群

昔の陶製の水道管を利用。気持ち悪いものをあえて大量に集めると大人気に。
④触れるオオグソクムシ

わりと柔らかめ。水から出すのは厳禁。
⑤イガグリガニ

痛そうに見えて手が気持ちいい!

オモシロ解説パネル
飼育員たちの"好き"が詰まっています
その生物のことを最もよく知り、最も愛情を注ぐ飼育担当者たちに自由に描かせている。現場の生の声を届ける方がおもしろい、という方針から校正もしない。常連客が多いので定期的に取り換えてもいる。
ヤマトカラッパ


ジョーフィッシュ


シテンヤッコ


エビスダイ


ツボダイ

タカアシガニ


オープン水槽で南海が目の前
南国のサンゴ礁を再現

副館長の戸舘さんが設計したオープン水槽。水槽の強度を上げるために厚く張り出した縁は肘置きになり、リラックスした姿勢でサンゴ礁に遊ぶ熱帯魚たちを上から間近で見られる。タイミングが合えば餌やりも。
案内してくれた人 副館長 戸舘真人さん

別の水族館で小林館長と同じくグレていたが、SNSでつながった小林氏から誘われ竹島水族館へ。2人の強力タッグが改革の起爆剤に。
深海は"激珍"だらけ
深海生物の数は日本一!


ジュンさんとタツさんという漁師の親子がとった新種のエビの和名には2人の名が。


プロたちも「似た物すら見たことない」と口を揃えるUMA。


ヒトデに近い生物。エイリアンじゃありません、たぶん。
お土産もユニーク
超グソクムシせんべい
¥1,200

オオグソクムシ粉入りせんべい。箱の手触りもリアル。展示を見ずにこれだけ買う人続出の人気商品。
カピバラの落し物
¥1,300

いうことをきかないカピバラショーも同館の名物。チョコ菓子にはカピバラのアレは入っていません。
メダカの産卵 ♯16
¥900

16回の試作を経て箱が完成、その苦労を商品名にも。卵の各成長段階の様子を金太郎飴で再現。
生物のプロたちの本気の造形美を見よ

店頭での陳列方法にもこだわって、魚市場で使われるトロ箱を特注し、並べている。カピバラまでトロ箱に入っているのはシュール。
超ウツボサブレ
¥1,200

携行を無視した等身大の箱。味はやはりウツボ感濃厚。なのに1枚だけリッチブレンドも。
目の前のカフェで水族館コラボメニューが楽しめる!
グラスの水族館
オーシャンブルー
¥700

ソーダに入った魚の形のゼリーが泡をまとって上下に浮いたり沈んだり。魚ゼリーは追加注文も可。
普通に美味!
深海400m カレー
¥1,300

グルメ素材の深海産ガスエビがのっている。深海200mカレーもある。違いはカレーの色の濃さと辛さ。
Mai Café(マイカフェ)

住所:愛知県蒲郡市松原町16-10
電話:0533(95)1995
営業時間:10:00~17:00
定休日:月・火曜日(祝日営業の場合あり)
※構成/石田ゆうすけ 撮影/安田健示
(BE-PAL 2026年9月号より)




