クロアチアのパラディニ村で「トリュフ探索犬」の実力を知った! | キノコ・山菜 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

キノコ・山菜

2026.06.20

クロアチアのパラディニ村で「トリュフ探索犬」の実力を知った!

クロアチアのパラディニ村で「トリュフ探索犬」の実力を知った!
クロアチア・イストラ半島のパラディニ村では、かつてトリュフは「臭いジャガイモ」とまったく顧みられなかったという。しかし、1966年にひとりの男がトリュフ・ハンティングを始めた。やがて、パラディニ村はトリュフの名産地になった。湯本貴和さんは村の功労者の娘さんが経営する農園を訪ねた。そこでまず知らされたのは、よく訓練されたトリュフ探索犬の優れた実力だった!

写真/トリュフ博物館の展示より。

黒と白があるトリュフ。22万ユーロの値がついたことも!

黒トリュフも白トリュフも探せる稀なキカ(Kika)号は、コッカー・スパニエルだ。クロアチア・パラディニ(Paladini)村のカルリック・トリュフ園(Karlić Tartufi)にて。

クロアチアのイストラ半島は、イタリア語ではイストニア半島と呼ばれるアドリア海の奥に位置する三角形の半島である。北からイタリア、スロベニア、クロアチアの3カ国にまたがっている。この地は、トリュフのなかでも白トリュフの産地として知られている。食材としてのトリュフは、おおまかに黒トリュフと白トリュフに分けられる。黒トリュフは、フランス、スペイン、イタリア、スロベニア、クロアチアで生産されている。なかではフランスでの生産が多く、全体の45%を占めている。それにスペインの35%、イタリアの20%gが続く。季節によって収穫するトリュフの種が異なっていて、夏トリュフ(Tuber aestivum)、秋トリュフ(T. uncinatum)、冬トリュフ(T. melanosporum)などがある。

それに対して白トリュフは、圧倒的に産地が限られていて、生産量も少ない。そのひとつであるT. magnatum北イタリアと中央イタリア、そしてクロアチアなどの一部で生産されるに過ぎない。もうひとつの白トリュフT. borchiiは、イタリアのトスカーナ地方、ロマーニャ地方、マルケ地方を産地としている。おおむね黒トリュフは1kgあたり100〜1000ユーロ、白トリュフは1kgあたり6000ユーロで取り引きされている。大きな白トリュフはきわめて稀であり、イタリア・トスカーナ地方で収穫された世界最大1.8kgの白トリュフはマカオでオークションにかけられ、22万ユーロの値がついたという。

トリュフ産業の功労者の娘さんが経営するトリュフ園へ

カルリック・トリュフ園(Karlić Tartufi)創業者のラドミラ・カルリック(Radmila Karlić)さん。

今回は、イストラ半島のパラディニ(Paladini)という村を訪ねている。パラディニでのトリュフ・ハンティングは、1966年にイヴァン・ラスポディック(Ivan Rašpolić)さんが始めた。イヴァンさんは、妻のダニカ(Danica)さんや兄弟のルカノ(Lučano)さんと協力して、ブトニガ(Butoniga)湖とモトヴン(Motovun)の森の周辺で精力的にトリュフ・ハンティングをおこなって、イストラ半島がトリュフの生産地として大きな可能性があることに気がついた。

イヴァンさんがトリュフの価値を見出すまで、この村ではトリュフは「臭いジャガイモ」とまったく顧みられなかったと聞く。クロアチア国有林から正式にトリュフ採取許可を得て、いまではパラディニの住民約60人のほとんどがトリュフ産業に従事している。カルリック・トリュフ園(Karlić Tartufi)は、イヴァンさんの娘であるラドミラ・カルリック(Radmila Karlić)さんと夫のゴラン(Goran)さんによって事業を拡大して今日に至っている。

パラディニ村では人口の3倍ぐらいのトリュフ探索犬がいる?!

トリュフ探索犬で、奥がラブラドールとポインターのミックス、手前がロマーニョ・ウォーター・ドッグ。

パラディニでは、イヌを訓練してトリュフ・ハンティングに使っている。トリュフ・ハンティングにイヌを使うことは1880年代にイタリア・アルバ地方のロッティー村で始まり、トリュフ探索犬の養成学校も設立された。とくに白トリュフは地下1m以上のところに埋まっていることもあり、トリュフ探索犬の嗅覚が頼りになる。トリュフ探索犬は扱いやすい小〜中型犬で、活発すぎず、飽きっぽくない性格が重要視される。

優れたトリュフ探索犬は、10〜20mの距離から深さ1mの白トリュフを探し当てるという。昼間は農作業に時間を費やし、また他のトリュフ・ハンターとの競合を避けるために、トリュフ・ハンティングは夜間に行われることが多かった。そのため、トリュフ探索犬は人工のライトに過敏に反応せず、また暗闇にも目立つ明るい毛色をしたものが好まれる。

カルリック・トリュフ園で飼育されているトリュフ探索犬。ここではダルメシアンもトリュフ探索犬として活躍している。

犬種としては、ロマーニョ・ウォーター・ドッグがトリュフ探索犬として有名であるが、他の犬種、あるいはミックスでも、条件さえ満たせば優秀な探索犬になるという。カルリック・トリュフ園でも、ロマーニョ・ウォーター・ドッグだけでなく、ダルメシアンやラブラドール、コッカー・スパニエルなども使っている。ちなみにディズニー映画「101匹わんちゃん」で有名なダルメシアンは、クロアチアのダルマチア地方原産と考えられている。トリュフ探索犬は複数頭飼育が普通なので、パラディニでは人口の3倍ぐらいのイヌがいるらしい。

トリュフ探索犬について、それぞれの個体の犬種や性格、能力などが示されている。

子犬のうちから始まるトリュフ探索犬の訓練法とは?

カルリック・トリュフ園内にあるトリュフ博物館でのトリュフ探索の写真。

トリュフ探索犬は、生後3ヶ月から訓練を始める。まず子犬にトリュフの匂いを覚えさせる。次の段階ではトリュフを細かく刻んだもの、あるいはトリュフ油を染み込ませたパン切れを1〜3cmの深さに埋めて、それを前足で掘るように訓練する。そのあと、すでに訓練を受けた先輩のトリュフ探索犬とともに森に連れ出す。

先輩のイヌがトリュフを見つけると、そのイヌをトリュフから離し、かわりに子犬を呼び寄せてトリュフを掘り出させる。こうして子犬は森や匂いに慣れ、掘り方を学ぶのだ。黒トリュフと白トリュフは匂いが異なり、埋まっている深さも黒トリュフは数〜10数cm、白トリュフは1m以上と大きな違いがあるので、トリュフ探索犬は黒トリュフもしくは白トリュフに専門化しており、両方とも探索できるイヌは稀である。

トリュフ博物館に展示されているトリュフ・ハンティングに使う道具類。

写真はすべて湯本貴和さんの撮影です。

著者画像

湯本貴和さん

1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

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