諸説ありな歴史スポットをめぐる石神井川の遡上散策【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.40】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

アウトドア・外遊び

2026.05.30

諸説ありな歴史スポットをめぐる石神井川の遡上散策【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.40】

諸説ありな歴史スポットをめぐる石神井川の遡上散策【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.40】
プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

今回は、東京都板橋区から練馬区にかけての石神井川をたどる「石神井住宅街GREEN WAY」です。
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40th ルート:石神井住宅街GREEN WAY

●前回はこちら

冒険家の足跡と個性派公園をたどる石神井川めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.39】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

石神井川の源流までたどる遡上トレイル。今回のルートを事前にざっくり確認すると住宅街を通るようなので、そのまんま「石神井川住宅街GREEN WAY」とします。

はたして、住宅街を歩いて記事に書けるようなことなど見つかるのでしょうか。不安を抱えつつ、前回歩き終えた東武東上線の中板橋駅近くにある間々下橋を出発します。

すると、すぐに下頭橋があり、橋のたもとに祠が建っていました。

下頭橋の碑。

下頭橋

「げとうばし」という名前の橋ですが、その由来は以下のような説があります。

  • 参勤交代で江戸に赴く川越藩主を迎えるため、このあたりで家臣が頭を下げたから。
  • 旅の僧が榎(えのき)の杖を地面に突き刺したところ、根付いて大木に成長した逆さ榎がここにあったから。
  • 橋のたもとで旅人から喜捨を受けていた六蔵という人物のお金を使って石橋に架け替えたから。

橋のすぐそばに六蔵のための祠があることからしても、最後の説が有力な気がします。

でも、「諸説ある」ということは「妄想の余地がある」ともいえます。個人的には、あっさり答えが出るよりも、ああでもない、こうでもないと、推理(妄想)している時間に面白さを感じます。

とはいえ、今はGREEN WAYの途上、しかも出発したばかりです。六蔵の祠に手を合わせ、先に進みます。

六蔵祠。

この先の道のりを確認しようと地図に目をやると、気になるものを見つけました。現在地から遠くない場所に「伝 御東山板橋城 跡 碑」という案内板があるようです。

僕は以前、BE-PAL.netで東京都内の低山を紹介する「TOKYO山頂ガイド」という連載をしていました。その連載では都内の城跡もいくつか取り上げました。丘陵地に築かれていた城が多いので、そうした場所を低山と捉えて紹介したのです。

ただし、「板橋城」は紹介していませんでした。気になるので、石神井川からは少し離れますが、足を運んでみることにしました。

が、その碑は板橋区立上板橋小学校の敷地内にあり、校門も閉まっていました。碑の横に案内板らしきものもありますが、敷地外からは読めません。どうにも気になるので、調べてみました。

御東山

上板橋小学校に隣接して長命寺がありますが、この一帯はかつて「御東山(ごとうやま)」と呼ばれていました。そして、中世に板橋城が築かれていた…のではないかと伝わっています。そうです、伝聞であり推測です。江戸時代後期の「新編武蔵風土記稿」などでも、板橋城跡は不詳となっているそうです。

ただし、小学校の敷地内に碑があることから考えても、ここに城があったということは確度が高い説なのかもしれません。もっとも、僕はあっさり答えが出るよりも、ああでもない、こうでもないと…。先に進みます。

「伝 御東山板橋城 跡 碑」。校門の外から撮影しました…。

また石神井川沿いに戻り、GREEN WAYを再開します。やっぱり、というか、案の定、というか、住宅街が続いています。特に書くべきことも見つけられないまま川沿いを進むと、桜橋の先に緑豊かなエリアが広がっていました。石神井川の南側にあるのが茂呂遺跡、北側にあるのが城北中央公園です。

城北中央公園

約25万9,000平方メートルもの敷地を有し、板橋区と練馬区にまたがっている城北中央公園。もともとは第二次世界大戦中につくられた空襲の被害を防ぐための防空緑地で、戦後に公園として整備されました。

城北中央公園。

ちなみに、石神井川を挟んではいますが、茂呂遺跡も城北中央公園の一部です。先述した「TOKYO山頂ガイド」で茂呂遺跡を訪れていますので、興味のある方は記事をご覧ください。

旧石器時代の貴重な遺跡が発見された板橋区の小高い丘「茂呂遺跡」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.119】

その茂呂遺跡の取材で訪れたときは、城北中央公園で大規模な工事が進行中でした。工事というのは、石神井川が増水した際の治水対策として、城北中央公園の地下などに調節池を整備するというものです。工事はまだ続くようですが、約1年ぶりに城北中央公園を再訪したら調節池の様子を少し目にすることができました。

工事が進められている公園地下の調節池。

ここまで歩いてきて、各地で石神井川の水害対策に関する史跡や史料などを目にしてきました。すでに過去のことだと思いかけましたが、石神井川の治水対策は現在進行形のことなんですね。

城北中央公園の少し先に東京メトロ副都心線の氷川台駅がありますが、駅周辺が工事中でした。そこで、いったん迂回し、あらためて石神井川沿いを進みます。鎌田橋まできて、そこから住宅街を少し進むと、氷川神社発祥の地の碑があります。

氷川台氷川神社

室町時代の武将・渋川義鏡が戦の途上で石神井川を渡る際に泉を発見し、「御浜井戸」と名付けました。そこに須佐之男尊をまつって武運を祈ったことが、氷川神社の由緒だそうです。

もとの井戸は現在の練馬区桜台に鎮座していましたが、その後に消失し、江戸時代に現在地に移転しました。現在地の氷川台という地名は、氷川神社に由来するとか。

氷川神社発祥の地の碑。

氷川神社からさらに住宅街を進んでいくと、壁に仮面ライダーのフィギュアなどが飾られた一軒家がありました。てっきりファンの個人宅なのかと思いましたが、後から調べたら石ノ森章太郎さんの自宅兼仕事場だったようです。僕は気づきませんでしたが、石ノ森章太郎プロという表札も掲示されていたようです。

玄関には仮面ライダーとロボコン!

気づけば住宅街でかなり寄り道してしまったので、また石神井川沿いに戻ります。少し歩くと、圓照院という寺院、そして泉仙という老舗料亭がありました。

さらに川沿いを進むと、練馬総合運動場公園があります。この公園周辺の石神井川沿いには背の高いイチョウの並木が続いています。秋は紅葉がキレイだろうなと思いつつ、さらに歩を進め、中之橋にたどり着きました。ここから西武豊島線の豊島園駅はすぐそばなので、今回の「石神井川住宅街GREEN WAY」は、ここでフィニッシュとします。

練馬総合運動場公園のそばの糀谷橋。

たまたまですが、今回は「諸説ある」歴史スポットをいくつもめぐり、過去に思いを馳せるというか、妄想を遊ばせることができました。石神井川沿いは、よくある住宅街のようでも古くからの歴史が折り重なったエリアが多く、味わい深い散策が楽しめます。

この先も源流地点までに、どんな諸説にめぐりあえるのでしょうか。石神井川の遡上トレイル、興味がつきません。

■今回歩いたルートのデータ
|距離約5.8km
|累積標高差約12m

今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

●石神井川板橋GREEN WAY

著者画像

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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