冒険家の足跡と個性派公園をたどる石神井川めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.39】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

アウトドア・外遊び

2026.05.29

冒険家の足跡と個性派公園をたどる石神井川めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.39】

冒険家の足跡と個性派公園をたどる石神井川めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.39】
プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

今回は、東京都板橋区内の石神井川をたどる「石神井板橋GREEN WAY」です。
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39th ルート:石神井板橋GREEN WAY

●前回はこちら

かつての景観や歴史にふれる「音無川=石神井川」散策【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.38】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

隅田川との合流点である終点から源流に向けて歩いている石神井川遡上トレイル。今回は「石神井板橋GREEN WAY」と題し、前回歩き終えた都営三田線の新板橋駅ターミナス(=トレイルの起点や終点となるアクセスポイント)からスタートします。

早速、新板橋駅から石神井川に向かい、7、8分歩いて金沢橋に着きました。すぐ近くには加賀公園があります。

加賀公園

その名の通り、江戸時代には加賀藩前田家の下屋敷があった場所。その広さは21万7千坪余り、東京ドーム15個分ほどだったそうです。大名屋敷の庭園に欠かせない築山もつくられましたが、現在の加賀公園でもその山は健在です。

都内の低い山をめぐる連載「TOKYO山頂ガイド」でも加賀公園の築山を紹介しているので、興味のある方はご覧ください。

ルーツは加賀藩の下屋敷。板橋区の加賀公園に残る人造の山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.122】

また、加賀公園周辺には明治時代に陸軍板橋火薬製造所があり、輸送用の軍用鉄道も走っていました。加賀公園内には、その時代の遺構や史跡も残されています。

石神井川の対岸から望む加賀公園の築山。

見どころの多い加賀公園を離れ、再び石神井川沿いの遊歩道を進んでいきます。このあたりにはサクラが多く植えられています。一般的な道路沿いの並木は、街路樹と呼ばれています。では、川沿いの並木は何と呼ぶのでしょうか…。

って、「街」を通っている「路」沿いの「樹」だから、街路樹でいいのか。などと愚にもつかないことを考えていたら、「南極の石」がありました。板橋区の、石神井川沿いに、南極…?

南極の石

この場所には1973年から2009年まで、南極の調査などを行う国立極地研究所がありました。南極の石は、そうした縁から寄贈されたものだそうです。

南極の石。雨ざらしです…。

また、南極の石の近くには板橋区立植村記念加賀スポーツセンターがあり、植村直己冒険館が併設されています。植村直己氏は、この施設の近くに長く暮らしていたそうです。

植村直己冒険館のそばまで歩いてきて、僕自身の思い出が蘇りました。以前、誘われて植村直己冒険館に足を運んだことがあったのです。でも、石神井川沿いではなかったような…と思って調べたら、2021年に板橋区蓮根から現在地に移転してきたことが分かりました。

僕を植村直己冒険館に誘ってくださったのは、冒険家の故阿部雅龍さん。日本人で初めてメスナールートで南極点に到達した方です。

阿部さんは秋田出身・在住でしたが、山形在住の冒険家である大場光郎さんに師事していました。僕も山形在住で、共通の知人がいるなど縁が重なり、阿部さんと交流させていただいたのです。なお、残念ながら阿部さんは病気によって2024年に41歳の若さで他界されました。

阿部さんのことをいろいろ思い起こしながら、自然と足が植村直己冒険館に向かいました。

植村直己冒険館(板橋区立植村記念加賀スポーツセンター)

板橋区立植村記念加賀スポーツセンターでは、1階は犬ぞりの展示やアウトドアの関連書籍を集めたブックスペース、2階はパネル展示という構成になっていました。3階は、冒険を「準備する」「極限に挑む」「次に向かう」という3部構成の常設展示室で、植村直己氏の足跡をたどることができます。

板橋区立植村記念加賀スポーツセンター。

展示をめぐりながら、ふと阿部さんから植村直己氏の本をプレゼントされたことを思い出しました。あの本、また読み返さなければ。

期せずして阿部さんとゆかりのある場所に来て、いろいろな記憶が蘇りました。僕は冒険家ではないし、偉そうなことは何もいえないけれど、これからも歩き続けようと気持ちを新たにしました。

加賀二丁目公園

再び石神井川沿いを進んでいくと、加賀さくら橋の近くに加賀二丁目公園という表札のような看板がありました。表札のようだと思ったのは、公園というより一般住宅のような雰囲気の入り口の石柱に看板が付けられていたからです。

しかも、その入り口の奥には細い路地が延びていました。ほんとに公園があるんだろうかと不安に思いつつ歩を進めると、気持ちの良い芝生の広場があらわれました。芝生に寝転んで半日ぐらいボーッと過ごしたら最高だろうな…。

それにしても変わった構造の公園だなと思って調べたら、理由は不明ですが開園時間や休園日もあるようです。つまり、入り口が閉まってしまうこともあるようなので、お出かけの際は留意してください。

加賀二丁目公園(板橋区役所ホームページ):https://www.city.itabashi.tokyo.jp/1014983/1015442/1014984/1015636.html

素っ気ないというか怪しい雰囲気の入り口ですが…。
細い道を進んでいくとあらわれる開放的な芝生広場!

再び石神井川に戻って遡上していくと、旧中山道に行き当たります。この石神井川と旧中山道の交差場所にかかる橋が、地名の由来になったといわれる「板橋」です。ここから旧中山道を北に少し歩くと、縁切榎というのぼりが立っていました。

縁切榎

もともと、この木の下を嫁入り行列が通ると不縁になるという噂があり、幕末に皇女和宮(仁孝天皇の第8皇女)が14代将軍の徳川家茂に嫁ぐ際にも迂回したといわれています。その後、「悪縁は切るが良縁は結ぶ」といわれるようになり、信仰の対象として多くの人が祈願に訪れるようになったそうです。

ちなみに、敷地内には絵馬の自販機がありました。現代的というか、縁切りの祈願のやり方も時代とともに変化しているんですね。

都営三田線の板橋本町駅のすぐ近くにある縁切榎。

縁切榎は仲宿商店街にあります。渋い町中華などがあって後ろ髪を引かれつつ、先を急ぎます。すると、石神井川沿いに戻り、首都高をくぐった先で、釣り堀を発見。気になるので、先を急げません。

氷川つり堀公園

石神井川の旧川を利用・整備してつくられたという釣り堀(公園)。タナゴ・クチボソ・ウグイ・フナなどが釣れるそうです。釣り堀の利用料は無料、竿やイスも無料で貸し出していますが、エサだけは各自で用意する必要があります。

通りすがりのハイカー(僕)に釣り餌の用意はなく、エサを売っていそうな店も近隣に見当たらなかったので、泣く泣く断念。釣りしたかった…。

氷川つり堀公園(板橋区役所ホームページ):https://www.city.itabashi.tokyo.jp/bousai/kouen/kouen/1006642.html

氷川釣り堀公園。平日の昼でも賑わっていました。

釣り堀公園から再び石神井川を遡上していくと、桜並木が続いていました。春先の花見の時季はもちろん、新緑の季節も気持ち良く歩けそうな道のりです。

中板橋という橋を過ぎた先に、草木に隠れるようにして水神宮碑がありました。ここの由来は不明ですが、一般的に水神宮は治水に苦労している地域で水難事故の防止などを祈願して建立されます。かつての石神井川は水害も多かったようなので、こうした水神宮碑がつくられたのかもしれません。

水神宮碑。

水神宮碑の先には東武東上線の高架橋があり、そこをくぐると間々下(まましも)橋がありました。ここから中板橋駅はすぐそばなので、今回の「石神井板橋GREEN WAY」はここでフィニッシュとします。

偶然にも地元・板橋ゆかりの冒険家、そして個人的に交流のあった冒険家と関係のある場所をめぐることになり、僕としては感慨深いGREEN WAYとなりました。一方で、個性的な公園を3カ所もまわることになり、それはそれで楽しかったです。

北区、板橋区と進んできた石神井川遡上トレイル、次回には練馬区に突入しそうですが、まだまだ続きます。

■今回歩いたルートのデータ
|距離約4.6km
|累積標高差約9m

今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

●石神井川板橋GREEN WAY

著者画像

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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