角幡唯介ファン歴15年のライターが伝授する、新刊『どうせ死ぬなら北極で』の楽しみ方 | 本 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

2026.05.10

角幡唯介ファン歴15年のライターが伝授する、新刊『どうせ死ぬなら北極で』の楽しみ方

毎年冬から春にかけて北極圏を長期旅する極地旅行家の角幡唯介氏。今年も北極で長期漂泊旅をしている只中に、新刊『どうせ死ぬなら北極で』が発売された。角幡氏をインタビュー取材したことがきっかけで、新刊が出るたびに読み続けて15年のファンだというライターの櫻井卓さんは、角幡唯介本の魅力は探検的読書体験が味わえることだという。
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写真/竹沢うるま

「衛星電話を持つことは探検の純粋性を失う」

いまから15年ほど前、探検家・角幡唯介氏をインタビューしたときに彼が言ったもっとも印象的な言葉だ。

だが同時に思った。この人はいったい何を言っているんだろう、と。

解らない、ということは興味を生む。それ以来、彼が書く本はすべて読んできた。

この『どうせ死ぬなら北極で』をはじめ多くの著書を読むことで、具体的な探検内容だけでなく、彼の探検への取り組み方、家族への愛、そして死生観などがじょじょに見えてくる。特に今作は、探検の話はもちろん、環境問題、北極圏での犬橇ライフ、日本の日常生活などなどテーマが多岐に渡っているし、そこまで苛酷な探検話は少なめなので、絶好の角幡入門書だ。ぜひ前作『エベレストには登らない』と合わせて読んでみてほしい。

彼の作品の面白いところは、探検そのものというよりも人間の核のようなものに徐々に迫っていくところだ。

はっきり言って一般人には理解できない心の動きも多い。もうやめたら良いのに……。なんでそんな危ないことをするのか……。そんな言葉が何度も脳裏をよぎるはずだ。

彼自身もきっとそれを感じているに違いない。解ってはもらえないかもしれない……、というある種の諦念を滲ませながらも、言葉を紡いでいく。

でも、解らないから面白いのだ。

例えば初めての山域に行く時。新しいアクティビティに挑戦する時。ビーパル読者であれば、アウトドア経験を通じて、不安とともに立ち上がってくるワクワク感を味わったことがある人は多いはずだ。それと同様の興奮が彼の著書にはある。

読むことで未知を知る。そんな探検的読書体験が味わえるのだ。

彼はいま、衛星電話どころか地図すら存在しない北極圏を、狩りをしながら旅している。かつてアフリカ大陸から人類が拡散していく過程で何度も行われてきたであろう、ある種、原初の旅のスタイルだ。だがいまや彼は知識の蓄積という、テクノロジーを超えた武器を携えているのだ。

大ファンになったいまだからこそわかる。

きっと彼は北極では死なないはずだ。

新刊『どうせ死ぬなら北極で』(角幡唯介、小学館)。3月6日発売の小学館文庫『エベレストには登らない』とあわせて読むと、角幡氏の30代後半から40代半ばにかけての極地旅を網羅的に知ることができる。

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