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BOOK 01
あるハンターの成長と葛藤。命のやり取りに見出すものは
『夜明けのハントレス』
河﨑秋子著
文藝春秋
¥2,035

ハントレスとは、女性ハンターのこと。札幌の大学に通う岸谷万智(マチ)は、たまたま見た雑誌で狩猟に興味を持ち始める。トレイルランに熱中していたマチは「アウトドアの世界にいる」と思っていたが、同じ山に入るでも、命のやり取りをする狩猟は全く違う世界に映った。そして、訪れた銃砲店で後に師匠となる新田と出会い、本格的にハンターの道を歩み始める。経験を積み、さまざまな人との出会いから変化していくマチの姿を軸に、狩猟の実情や取り巻く環境を描く。純粋かつ真剣に狩猟と命と人と向き合おうとするマチのひたむきさが清々しい。
現実社会では昨年多くのクマが出没した。物語の中でも単独猟に出たマチが期せずしてクマと遭遇してしまう。結果的に仕留めるが、そこに喜びはない。持ち帰った肉(不味い)を噛み締めている場面は印象深かった。撃つのか? 撃てるのか? 一対一、真剣勝負には思わず呼吸を忘れてしまった。
BOOK 02
自らが生きるために書く私的ドキュメンタリー
『親友は山に消えた』
小林元喜著
小学館
¥2,090

2022年5月17日、山岳ムービーカメラマンとして活躍していた平賀淳氏が米アラスカで亡くなった。撮影で訪れていた際に起きた事故でまだ43歳だった。一般的には無名だがNHKの山岳系番組やそれに関連するドローン映像は彼が手がけたものが多く、山岳・アウトドアのメディア界ではよく知られた人物でもある。
平賀氏と同郷で中学時代からの友人である著者は、一周忌あたりから精神に支障をきたす。過去に重度のうつ病を患っていた。長い付き合いの主治医からは「喪の作業がうまくいっていないんだな」と。そこから“喪の作業”が始まる。自分と平賀は親友だったのか? 親友って? 亡き友と自らの人生を辿る旅。違う道を歩んだふたりの軌跡は対照的で太陽と月のよう。太陽はいつも月を照らしていたことを著者は実感していく。
自分にここまでしてくれる友はいるのだろうか。逆も然り。このふたり、出会えたことが奇跡だ。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2026年5月号より)




