花も野鳥も美しく撮る!野鳥の魅力が引き立つコラボレーション撮影術 | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

自然観察・昆虫

2026.04.03

花も野鳥も美しく撮る!野鳥の魅力が引き立つコラボレーション撮影術

花も野鳥も美しく撮る!野鳥の魅力が引き立つコラボレーション撮影術
ソメイヨシノが開花しました! 毎年、この時期になると朝はソワソワして落ち着きません。その訳はもちろん、ソメイヨシノと絡めて野鳥が撮影できるからです。野鳥を花と絡めて撮る方は多いですが、ソメイヨシノ(桜)ほどさまざまな野鳥やシチュエーションで楽しめる被写体(名脇役)はないのではないでしょうか。今回は、その主役となるカワセミを中心に、春の鳥景色の魅力と満喫するコツをご紹介しましょう。

「サクカワ仲間」と一年ぶりの再会

今年もソメイヨシノが開花した。近所の川でも注意深く探せば「奇跡の瞬間」に出合える。


かつては渓流の宝石とも言われたカワセミですが、現在は都市部の小河川や小さな池でもその姿を観ることができます。この時期はソメイヨシノが咲く川沿いでカワセミを観察&撮影することをおすすめします。なぜなら、繁殖期ならではのカワセミの行動や生態を知ることが、「奇跡の瞬間」(桜とカワセミのコラボ、略して「サクカワ」と野鳥愛好家が呼ぶ)に遭遇する近道だからです。

私がカワセミを観察しているのは東京都と神奈川県の境を流れる、その名も境川の中流域。境川は東京都町田市西部の山中に源を発し、神奈川県藤沢市の江の島付近で相模湾に注ぐ二級河川です。ここに「サクカワ」狙いのカメラマン4、5人が、毎年のソメイヨシノの開花時期に自然と集うようになりました。顔を合わせるなり一年ぶりの再会に話も弾みます。が、話題の中心はすぐに境川のカワセミの最新情報とその分析に。境川に架かる幾つかの橋とそれぞれの周辺に居着いているカワセミのカップルの最新の生息状況が、互いに持ち寄った観察情報から明らかになっていきます。

水辺を彩るソメイヨシノやハナモモの花。そんな枝のどこかでカワセミが水面を見つめていることも。

繁殖期に入った今の時期は、カワセミたちの動きが活発になっています。オスは川に飛び込んで魚を捕らえてメスのところへ運んでいき、メスがその魚を受け取ると「カップル成立」となりますが、この行動を求愛給餌といいます。その後、カップルとなった後も愛の絆を確かめるように求愛給餌が行われます。カワセミが満開のソメイヨシノに止まる「奇跡の瞬間」に出合うには、こうしたカワセミの行動を注意深く観察することが大事です。

カワセミの求愛給餌。オス(左)はメスが飲み込みやすいよう魚の頭の方から与える。

カワセミ探索の決め手は鳴き声

仲良く並んだカワセミのカップル。メスはくちばしの下側が赤く、羽の青色もやや地味だ。

カワセミが居ることを確認するためのもっとも簡単・確実なサインは鳴き声です。カワセミは飛び立ったりどこかに止まったり(着地したり)するときに「ピピピピピピピ…」または「チチチチチチチ…」と、やや尻下がりの声を上げます。また、川面を一直線に、比較的長い距離を移動する時などには「チィ……チィ……チィ……チィ……チィ」と約2秒の間隔で鳴きます。飛行中なので、いわゆるドップラー効果によってカワセミが近づいてくるのか、去っていくのかも聞き分けることができます。この2パターンの鳴き声を覚えることが基本です。ちなみにこの「聞き取り」を繰り返していると、耳がカワセミの鳴き声にそっくりな自転車のブレーキ音にも反応するようになるため要注意です。「サクカワ仲間」同士で談笑していても、この鳴き声がするとたちまち臨戦態勢になります。

次に、鳴き声を頼りにカワセミの居場所のアタリを付けます。川幅にもよりますが、カワセミは川の流れに沿って数百メートルの範囲の縄張りを持っていると考えられます。観察していると、オスとメスが比較的一緒に過ごす場所や、それぞれが出かけていくおおよその範囲が判ってきます。この時期はまだ営巣前であることが多く、基本的にメスは狭い範囲でオスが餌を持ってくるのを待っています。そのオスが狩り(魚獲り)をするのは川の淀みなどの深さがある場所です。

ハナモモの枝にとまったオス。開花時期がソメイヨシノとは微妙に異なる。

こうしてメスやオスが活動している場所を特定できると、狩りをする時に止まる川沿いの木の枝や休憩する時に止まる枯れ草、2羽がデートをする場所などが判ってきます。そして、ソメイヨシノを止まり木にしている個体が見えてくるというわけです。

そのような場所では、カワセミの警戒心は比較的低く(緩く)なります。そして、近くに川面に枝を伸ばしたソメイヨシノがあれば「サクカワ」の場面が期待できます。特にソメイヨシノの枝にとまったオスのカワセミを見付けたら、川沿いのフェンスなどにゆっくり近付きながらそーっとレンズを向けてみましょう。多くの野鳥はふつう人間の身体の大きな動きを警戒しますが、狩りの最中のカワセミのオスは10メートルくらいのところでカメラを構えても水中の魚の動きに集中していることが多く、警戒が緩むことが多いのです。このチャンスを見逃さないようにしたいものです。

満開のソメイヨシノにとまったカワセミのオス。あえて逆光で撮影することで花びらやカワセミの姿を立体的に表現した。

菜の花の黄色も春に欠かせない彩り

魚を探すダイサギ。菜の花(セイヨウカラシナ)の彩りもこの季節ならではの楽しみ。

そして、春をイメージするもう一つの花と言えば菜の花でしょう。ちょうど3月頃から河原や農耕地などで黄色い菜の花の群落を見かけている方も多いと思います。これはアブラナ科のセイヨウカラシナと呼ばれる植物。葉はおひたしや炒め物にして食べることもできます。花が散ってさやに実が入る頃にはカワラヒワが集まってきます。余談ですが、この実から粒マスタードを作ることもできますよ。

河原に佇むコチドリのオスを菜の花と絡めてみた。
土手の菜の花をバックに飛ぶ冬鳥のコミミズク。運が良ければ菜の花と冬鳥のコラボ撮影が叶うことも。

菜の花の黄色を眺めていると、心がパッと明るく気持ちも晴れやかに変わっていくように感じますね。この黄色、実はデジタルカメラでの再現がとても難しいのですが、河原に棲息するサギ類や渡ってきたコチドリなどと絡めて撮影すると、とても春らしい印象的な写真になります。また、春は冬鳥と夏鳥が入れ替わる季節でもあります。運が良ければ冬鳥のコミミズクや夏鳥のノビタキと菜の花を絡めた写真を撮るチャンスも期待できるでしょう。

昨年春は、渡り途中のノビタキ(日本では夏鳥)が多摩川の河原の菜の花に立ち寄ってくれた。

春を迎えた生命の輝きを愛でながら撮影を楽しむ

ヨウコウザクラの花の蜜を吸いにやってきたコゲラ。

温もりを内包した穏やかな冬の光と違い、生命を育むエネルギーに満ちた春の日差しは、それを受けて輝く草花の鮮やかさも相まって解放的な気持ちを呼び起こします。これまでご紹介したソメイヨシノやセイヨウカラシナだけでなく、カワヅザクラからヨウコウザクラ、そして水面を埋め尽くす花筏まで、野鳥と桜が織りなす光景を愛でながらこの春だけのベストショットを狙いたいものです。

日本は国土が南北に長いため、いわゆる桜前線の北上に合わせて旅をすればソメイヨシノやヤマザクラなどの桜を長く楽しむこともできます。そして桜の開花に続いて様々な植物が芽吹き、都市の公園や里山、野山は一気に新緑の季節へと移っていきます。春のトップバッターである桜には花の蜜を求めてヒヨドリやメジロ、コゲラなどが次々とやってきて、まさに生命が輝く賑やかな季節の到来を感じます。

くちばしにお弁当(ソメイヨシノの花びら)を付けたカルガモが愛らしい。
花筏の中をすすむカルガモたち(青森県)。
弘前城の濠でくつろぐカルガモたち。南北に長い日本列島は、桜前線を北上しながら鳥見を楽しむことも可能だ(青森県)。

「サクカワ」撮影のコツまとめ

朝の眩い光の中、水面を見つめるカワセミのオス。その眼差しはいつでもまっすぐだ。

さて、カワセミの撮影現場のあれこれをご紹介してきましたが、カメラやレンズ、そして撮影時のコツなどを少しだけご説明しましょう。スマホでも撮れないことはありませんが、たとえ8倍の望遠レンズを搭載したiPhone17Proであってもスマホの画面で小さなカワセミにピントを合わせるのは至難の業です。それに、スマホの撮影者はどうしても被写体のそばに寄っていってしまうため、他の撮影者に迷惑をかけることになってしまいます。またコンパクトデジカメの場合もファインダーを備えた機種以外ではカメラ背面の液晶画面でピント合わせをやるほかなく、やはり難があります。しっかりファインダーを覗いてピントの操作ができるデジタル一眼レフカメラかミラーレス一眼カメラがおすすめです。この2つについては、現在はミラーレス一眼が主流です。露出(カメラのセンサーに取り込む光)をあらかじめ確認でき、被写体認識機能が野鳥の目にピントを合わせてくれる、早朝や夕方などの光量の乏しい条件でもファインダー内を明るくできピント合わせが容易、など多くのアドバンテージがあります。

レンズは300ミリ以上、できれば500ミリの超望遠レンズを使いたいです。野鳥は基本的に人間を怖がります。警戒する野鳥の状態を観察しながら徐々に距離を詰めることができる上級者と違い、初心者は安易に近づいてしまいがちです。他の人がすでにカワセミの近くで撮影をしていたとしても、その撮影者はカワセミの状態を確かめながら時間をかけて距離を詰めている可能性がありますから、その場所にいきなり走ったり歩み寄ったりすることは厳禁です。初心者ほど長い(倍率の高い)レンズを使うことが望ましい、とよく言われるのはそのような理由からです。

冒頭でご紹介した「サクカワ仲間」は年齢も職業もバラバラです。ソメイヨシノにカワセミがとまっている写真を撮る、ただそれだけの目的のために早朝にカメラを携えて川沿いを何往復も歩き、「チイ」と言う声に一喜一憂する趣味人たちです。カメラを構えれば散歩の人々も足を止め、一緒にカワセミを愛で、そっと狩りを見守ります。なかなか魚が獲れないカワセミのオスを応援したり、逆に大物をゲットしたオスに拍手をしたりと微笑ましい光景もちらほら。春の彩りと、そこで懸命に生きる野鳥を観に、近所の川沿いや公園を散歩してみませんか。

中村雅和さん

野鳥好き編集者

幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事をしながら、バードウォッチングと野鳥撮影に勤しんでいる。

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