家の裏の自然林で繁殖中!小さな猛禽類・ツミの子育てを見守る | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

自然観察・昆虫

2026.07.03

家の裏の自然林で繁殖中!小さな猛禽類・ツミの子育てを見守る

家の裏の自然林で繁殖中!小さな猛禽類・ツミの子育てを見守る
昨年引っ越してきた今のマンション。玄関側の共用廊下に隣接する自然林の存在は、生き物好きにとって大きな魅力だ。ドアを開けると、目の前にコナラやヤマザクラ、スギやヒノキなどが聳える小さな林が広がる。アナグマの巣穴も点在し、かつての多摩ニュータウンの面影を今に伝えている。ここで最初にツミの声を聞いたのは4月のある日のことだった。漢字で「雀鷹」と書くツミは主に小鳥を餌とする、キジバトほどの大きさの小さな猛禽類だ。最近は都心の公園や街路樹などでも営巣し、都会のバードウォッチャーにもお馴染みの野鳥である。先日、待望の雛の姿を遠くから確認できた。賑やかになった家の裏の自然林のひとコマをお伝えしよう。

玄関のドアの向こうでツミが繁殖

オスから獲物を受け取ったメスの親鳥。ここで羽毛を毟ってから巣で待つ雛の元へ運ぶ。獲物はメジロだ。

朝の林に猛禽類特有の鋭い鳴き声が響き渡る。ツミのメス親がオス親から獲物を受け取ったのだ。

オスは獲物を持って帰ると「ヒヨ、ヒヨ、ヒヨ」と可愛らしい声でメスに声をかける。

「獲物を持ってきたよー」

そう呟いているようにも聞こえる。

それに応えて、メスの親鳥がオスの親鳥から餌を受け取った後によく止まるコナラの横枝にやってきた。餌(獲物)はメジロのようだった。メスはここで獲物の羽を毟って、雛の前ですぐに切り分けられる状態にしてから巣へ運ぶ。と、ここまでは玄関のドアを開けてすぐの共用廊下で観察できてしまうのだ。ここに住んでよかったー、と今の素晴らしい住環境に感謝である。

獲物を届けたあとひと休み中のツミのオス。身体の大きさはメスよりも小さく、胸は淡い褐色。近くで観察すると眼が赤いことがよくわかる。

実は、4、5年ほど前を最後にツミの子育ての観察はご無沙汰の状態だった。人生の「どうしようもない事情」により、約20年暮らした南大沢(東京都八王子市)から何度か転居し、それまでの、ツミの営巣が身近だった環境から少し遠ざかってしまったせいもある。もちろん、日頃からツミは見かけていたし都内や近隣の公園からもツミの子育ての情報は耳に入ってきてはいたが、わざわざ電車で観に出かけるような野鳥との認識はなかったのだ。それなのに、今シーズンは部屋に居ながらにしてツミの鳴き声が聞こえる願ってもない観察環境にもかかわらず、あろうことか孵化直後の雛の姿を見逃してしまった。

久しぶりに会えた白い羽毛の雛

コナラの枝の巣を見上げると、木漏れ日に照らされて眩く輝いているような雛たちの姿があった。

私が雛の誕生に気付いたのは孵化しておよそ5、6日後と思われる頃。マンションから自然林に入り、巣が望める30メートルほど離れた位置に立つと、白い羽毛に包まれた雛の頭が揺れているのが見えた。巣を下から見上げているので雛が何羽いるのか数えるのに手間取ったが、確認の結果、雛は5羽!今まで観た中で最多である。

メスの親鳥は1~2時間に一度の割合で雛に餌を与えているようだ。餌として持ち込まれるのはメジロのほか、シジュウカラやムクドリだろうか。ここではスズメを見かけることは少ないから、持ち込まれることはほとんどないと思う。実際は羽毛を毟られた状態では何の野鳥か判然としないのだが、「獲物」になってしまった彼らもまた子育て中の親鳥等であろうと想像すると、複雑な思いだ。

あっという間に雛は猛禽の貫禄を備えた姿に

巣立ちしたばかりと思われる雛たち。白い羽毛から焦げ茶色の羽に換羽し始めていた。

離れた場所でオスから獲物の小鳥を受け取ったメス親は、自ら羽毛を毟り取って巣に持ち込む。ただ今回、オス親が直接獲物を巣に持ち込むシーンを初めて目撃したのだ。狩りの能力に秀でたオスなのか、あるいは子だくさんに対応した行動なのか。いずれにしても、このツミのペアは子育て上手であることは間違いない。

メス親はくちばしで獲物を千切って雛に与えるのだが、5羽もいるので餌は均等に与えられることはなく、むしろ雛同士の争奪戦になる。と、思うところだが、実際は2、3羽が争うものの、1羽は巣の端でのんびりしている。大丈夫だろうか。よく見ると、その「ノンビリちゃん」は顔を覆う白い羽毛が他の雛より多く、やはり成長がやや遅い気がする。5羽もいると全てが同じように育たないのは仕方のないことだろう。

家の裏とはいえ、自然林に棲息する大量のヤブ蚊の襲撃に尻込みをして散歩をサボっているうちに、いつしか1週間が経ってしまった。巣を見上げる場所に立つと……雛がいない。そういえば、最近はカラスの群れの鳴き声もよく耳にする。もしや、とよくない方へ思いを巡らせながら離れた場所から改めて巣を見上げてみた。すると、あの幼い雛、いや幼鳥が巣の裏側にいるではないか。よかった! 

いちばん成長が遅い末っ子が、巣から下を見下ろしていた。まだ頭には白い羽毛を残している。

よく見ると、他の幼鳥も背後のコナラの枝に散らばってくつろいでいた。つまり、すでに巣立ちしていたのだった。葉の陰に隠れているのか、同時に5羽を確認することはできないが、どの子も焦げ茶色の羽がだいぶ増え、猛禽の貫禄を備え始めていた。

ちなみに、過去に5、6度観察してきたツミの子育てのデータを振り返ってみると、今年のデータに近いものとして2018年の記録が出てきた。

初認 : 4月10日

営巣確認 : 4月18日

抱卵確認 : 5月17日

孵化(推定): 6月8日前後

育雛初認 : 6月16日

巣立ち初認 : 6月27日

営巣地出立 : 7月22日

コナラの横枝で親鳥の帰りを待つ雛。まだ羽は短いが、すでに猛禽類としての存在感を放っている。

ツミの子は孵化から2週間〜20日で巣立ち、つまり雛の生活の場が巣から外に移った状態になるということがわかる。それをもとに考えると、今回は若干早い気がする。あくまで想像だが、5羽という子だくさんの状況が結果的に雛の成長を促したのではないかと推測している。

さあ、この後、自然林のツミの家族はどうなるのか。また報告することにしよう。

著者画像

中村雅和さん

野鳥写真家

幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事などをしながら、バードウォッチングと野鳥撮影に勤しんでいる。

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