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2026.04.06

ノスタルジックな古都、台南で、ローカルグルメ食い倒れの日々

ノスタルジックな古都、台南で、ローカルグルメ食い倒れの日々
旅行作家・写真家の山本高樹による、台湾写真紀行の短期連載。第7回は、台湾南部の古都、台南(タイナン)で、この街ならではのローカルな小吃(シャオチー、軽食)を食べ歩いた体験などをレポートします。
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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第7回:台南

嘉義(ジアイー)での数日間の滞在と、阿里山(アーリシャン)への山岳鉄道の旅を終えた僕は、再び在来線に乗って、70キロほど南にある台南の街に移動しました。

台南は、台湾でももっとも早くから発展した都市のひとつで、17世紀にはオランダがこの地に拠点を築き、その後の清による統治時代には首府が置かれるなど、日本統治時代に中心地が台北に移るまで、長きにわたって栄えてきたそうです。今も街の至るところに、史跡や歴史的建造物が数多く残されています。

僕はこの台南に、どこで何をしようという計画をまったく立てないままやってきて、街の中心部にある安宿のドミトリー(多人数部屋)に、4泊ほど滞在することにしました。あえて何も決めず、のんびりぶらぶら街を歩き回りながら、気の向くままに行動してみたい、と考えていたのです。実際、そういう過ごし方をするのに、台南はうってつけの街でした。

台南を代表するレトロ建築のひとつ、旭峯號(僾果鮮)。

台南を紹介するガイドブックや記事にもよく登場するアイコニックな建築、旭峯號(シーフォンハオ)。日本統治時代の1932年に建てられたこの建物は、当初は食器や調理器具を扱う商店だったそうです。現在は店貸しされていて、フルーツや野菜などの食品を扱う店が入居しています。旭峯號の近くには、ほかにも居心地のよさそうなカフェが路地沿いに何軒かあって、観光客にも人気のエリアみたいですね。

日本語のレトロ看板も残っている台南の街。

台南の街をぶらぶら歩いていると、日本にももう残っていなさそうなほど超レトロな日本語の看板が普通にあるので、ちょっとびっくり。こういったものをうまく生かして楽しむセンスのよさが、台湾の人々にはある気がします。僕たちも見習いたいところです。

朝から街を練り歩いてたお神輿。

台南滞在中のある日の朝、泊まっていた宿の近くで、バババババッ!と爆竹がけたたましく爆ぜる音が何度も鳴り響きました。宿の人に聞くと、「何かのお祭りじゃないかな。この街では、何かしらの理由で、しょっちゅういろんなお祭りをやってるんですよ」とのこと。確かにその日、午前中に街をぶらついていると、いくつものカラフルな扮装の団体が、お神輿や山車で通りを練り歩いていました。

石畳の敷かれたレトロなストリート、神農街。

台南の街は、大通りや脇道、細い路地などがかなり複雑に入り組んでいて、気ままにぶらぶら歩き回っているだけで、いくらでも時間をつぶせそうな面白さがあります。とりわけノスタルジックな雰囲気を醸し出しているのは、神農街(シェンノンジエ)と呼ばれる長さ数百メートルほどの通り。石畳の敷かれた道の左右には、清や日本による統治時代を偲ばせる古民家をリノベーションした、カフェやショップが軒を連ねていました。

日本の実業家が建てたデパートを修復した、林百貨。

台南の街でもひときわレトロで瀟洒な佇まいのこのビルは、林百貨(リンパイフォ、ハヤシ百貨店)。もとは、日本統治時代の1932年に日本の実業家が開業したデパートの建物で、当時の台南では唯一のエレベーターを備えたビルだったそうです。第二次世界大戦後はいくつかの用途で使用された後、1980年代以降は空き物件となっていましたが、台南市により古跡に認定され、2010年から3年ほどかけて修復作業が行われました。現在は、台湾各地の特産品や、台湾ブランドのファッションアイテムやグッズなどを取り揃えたデパートとして、国内外から人気を集めています。台南で旅のおみやげを探すなら、林百貨に来れば、いろいろ選べて楽しいのではないかと。

台南の小吃を、かたっぱしから食べ歩く

虱目魚肚粥で有名な店の一つ、阿憨鹹粥。

街をぶらつく以外の計画を何も持たずに台南に来た僕ですが、その日その日の行動は、どこの店で何の小吃を食べるかによって考えることにしました。台南の街の食堂は、営業する曜日や時間帯が本当にまちまちで、一応事前に調べておかないと、営業時間中に店に入れなかったりするからです。

滞在中、ほぼ毎朝、朝ごはんを食べに行っていたのは、阿憨鹹粥(アーハンシエンジョウ)という食堂。虱目魚(サバヒー)という魚を使ったおかゆがおいしいことで有名な店です。水曜日以外の毎日、朝6時半から昼の14時頃まで営業しています。

阿憨鹹粥の虱目魚肚粥。

虱目魚は、日本ではほとんど馴染みのない存在ですが、亜熱帯から熱帯にかけて広範囲に生息している魚で、台湾では食用魚として、膨大な数の虱目魚が養殖されているそうです。確かに、台湾の南部を列車で移動していると、窓の外に虱目魚の養殖池がずっと広がっている風景をよく目にします。台湾では、もっともポピュラーな魚の一つなのだとか。

淡白で柔らかな身を持つ虱目魚を使った定番の料理が、鹹粥(シエンジョウ、出汁粥)です。小骨を丁寧に取り除いた新鮮な虱目魚の切り身と小粒の牡蠣を煮たおかゆを、れんげですくって口にした時のうまさは、ちょっと言葉にならないくらい。このおかゆを食べるためだけでも、また台南に戻ってきたい、と思えるほどでした。

葉家小巻米粉で食べた、小巻米粉。

海にほど近い場所にある台南の小吃は、シーフードを使ったものが多い印象です。個人的に、虱目魚の鹹粥の次に気に入ったのが、小巻米粉(シャオジュアンミーフェン)。使われているのは粗米粉(ツーミーフェン)というビーフンで、太めで短く、箸で持ち上げるとプツッと切れる柔らかさ。澄み切ったスープに使われている調味料は、たぶん塩だけだと思うのですが、とにかくイカの風味が濃厚で、飲み干すのが惜しくなるほど。これもまた、いつか台南に戻ってきたら必食だ……と思わずにいられませんでした。

矮仔成蝦仁飯で食べた、蝦仁飯。

蝦仁飯(シアレンファン)は、小さなエビを使った炊き込みごはん。あっさり素朴な味わいで、スープやおかずと一緒に、もりもり頬張りたい感じの小吃です。虱目魚やイカもそうですが、エビも台南では新鮮なものを調達できるので、それらを食材に活かした料理が、いろいろと発案されてきたのかもしれません。

石精臼牛肉湯で食べた、牛肉湯。

シーフード以外で食べた台南の小吃だと、牛肉湯(ニュウロウタン)が気に入りました。牛肉の薄切りを入れた丼に、熱いスープを注ぎ入れ、軽く火が通ったところをいただくという、とてもシンプルな料理。これも期待通りのストレートな味で、ごはんと一緒にいくらでも食べられますね。

聞いた話だと、台南には牛の産地があって新鮮な牛肉がすぐ手に入る土地柄なので、こうした料理が生まれたのだとか。さばいてから冷凍せずに6時間以内の牛肉を使う牛肉湯を出す店が、地元ではおすすめの食堂なのだそうです。

台南には、ほかにもこの地発祥の有名な小吃があるのですが、それは次回の記事で。

山本 高樹さん

著述家・編集者・写真家

1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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