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2026.03.31

憧れの台湾の山岳鉄道、阿里山森林鉄路についに乗車!

憧れの台湾の山岳鉄道、阿里山森林鉄路についに乗車!
旅行作家・写真家の山本高樹による、台湾写真紀行の短期連載。第6回は、嘉義(ジアイー)と阿里山(アーリシャン)との間を結ぶ山岳鉄道、阿里山森林鉄路に乗車したときの体験レポートをお届けします。
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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第6回:阿里山森林鉄路

今回の台湾での僕の旅は、首都の台北をスタートとゴールの地点にして、台湾の在来線である台鉄(台湾鉄道)に乗って、街から街へと少しずつ移動しながら、1か月ほどかけて台湾を反時計回りに一周するという計画でした。旅の途中、どこの街で何をしよう、という具体的な目的はあまり考えていなかったのですが、唯一、阿里山森林鉄路に乗る!ということだけは、旅を始める前から決めていました。手配の関係上、先に決めざるを得なかったのですが。

嘉義と阿里山の間を結ぶ狭軌の山岳鉄道、阿里山森林鉄路は、日本統治時代に敷設が始まり、1913年に嘉義駅から阿里山駅(現在の沼平駅)までの全線が開通しました。支線を含めた現在の総延長は70キロ以上に及びます。かつては主に阿里山から切り出された木材の運搬に利用されていましたが、現在は観光路線として、国内外から多くの乗客を集めています。

嘉義から阿里山までの林鉄本線では、毎日、次のような列車が運行しています(2026年3月現在)。

阿里山号1車次(嘉義9:00→十字路12:00)
阿里山号5車次(嘉義10:00 →阿里山14:56)
阿里山号2車次(十字路13:21 → 嘉義16:51)
阿里山号8車次(阿里山11:50 → 嘉義15:45)

林鉄本線の乗車券は全席指定で、嘉義駅の窓口か、公式サイト(https://afrch.forest.gov.tw/Ja)から予約します。何しろ大変な人気の路線なので、駅の窓口では、たまたまキャンセルが出るなど運が良ければ……という状況のようです。

したがって、個人による手配で林鉄本線に乗る場合、公式サイトから予約することになります。サイトでは、乗車日の15日前(当日含む)から予約可能で、現地時間の朝6時(日本では朝7時)から夜24時まで受け付けています。

ただ、この公式サイトでの予約がまた、とんでもない競争率で……。受付開始の時報と同時にサイトにアクセスして猛スピードで入力しても、すでに先を越されて満席、という場合がほとんどなのです。特に、嘉義から阿里山まで林鉄本線の全線を走る、阿里山号5車次と阿里山号8車次は、個人での公式サイトからの予約はほぼ不可能、と考えた方がいいでしょう。

僕はしばらく考えた末、嘉義から阿里山まですべての区間に乗車するのは断念し、若干予約しやすいとされる阿里山号1車次で、嘉義から途中の奮起湖(フェンチーフー)駅までの区間を予約し、奮起湖から阿里山までの区間と阿里山から嘉義までの帰路はバスを利用する形で、嘉義から日帰りで阿里山を訪れてみることにしました。奮起湖から阿里山までのバスは本数が少なく、乗り損ねると後がかなり大変というリスクはあったのですが、たぶん何とかなるだろう、と。

阿里山号1車次での嘉義から奮起湖までの予約は、まだ日本にいた頃に、乗車予定日の15日前の朝7時の時報と同時にサイトにアクセスして、どうにか成功。数分後にサイトを見てみたら、もう満席になってしまっていました。危なかった……。

阿里山森林鉄路の客車内の様子。

そんな予約段階での苦労を経て、ようやく乗車することができた、阿里山森林鉄路、阿里山号1車次の車内。阿里山森林鉄路は線路の幅が762ミリしかない狭軌なので、客車も1列につき3席しかないコンパクトな構造です。ほかの乗客の方々も念願が叶ってうれしそうで、みんなウキウキしていました。

先に進むにつれ、次第に霧が深くなっていく。

嘉義から奮起湖までは、時刻表通りなら、およそ2時間半ほどの行程です。嘉義を出発してしばらくの間、列車はのどかな田舎の風景の中を走っていましたが、そのうち少しずつ、白い霧がたち込めるようになってきました。いよいよ山々の中に分け入っていくのだな、とテンションが上がります。

独立山駅にあった、海抜743メートルを示す標識。

海抜30メートルの嘉義駅から、海抜743メートルの独立山(ドウーリーシャン)駅まで登ってきました。この独立山の付近では、列車が斜面を登りやすくするために、線路がループ状に敷設されているそうです。最終的には海抜2200メートルを超える場所にある阿里山駅まで登っていくために、敷設当時からさまざまな工夫がなされていたのですね。

白い霧に包まれていた、梨園寮駅。

さらに列車は高度を上げ、海抜904メートルの梨園寮(リーユェンリャオ)駅に停車。今は無人駅となっていますが、かつては、蒋介石や皇太子時代の昭和天皇もここを訪れたことがあるほど、風光明媚な場所だそうです。この日は完全に白い霧に包まれていて、それはそれで神秘的な雰囲気を漂わせていましたが。

雲の中を進んでいるかのような、車窓の外の風景。

列車が高所へと登っていくにつれ、車窓は、もはや霧ではなく、分厚い雲の只中を突っ走っているような雰囲気になってきました。モノクロームの世界の中、生い茂る木々の梢の黒い影が、窓の外を過ぎ去っていきます。霧があまりに濃いせいか、途中の各駅への到着も、次第に遅れ気味になっています。奮起湖から阿里山までのバスにうまく乗り継げるだろうか……と、僕は内心、焦りはじめました。

奮起湖駅のプラットホームに停車する列車。

予定より30分以上遅れて、列車は奮起湖駅に到着しました。阿里山へのバスは、もう行ってしまったかな、次のバスはだいぶ後だったな……と思いながら、とりあえずバス停までダッシュ。すると、何とバスもこの霧のせいで遅れていたようで、僕がバス停に着くのとほぼ同時に、バスも到着。びっくりするようなタイミングで乗り継ぐことができました。

ひとつ残念だったのは、奮起湖で買う予定だった名物の駅弁、奮起湖弁当を、あまりにも時間がなくて、買いそびれてしまったこと。豚肉や鶏肉がどかんと入った豪華な駅弁だそうで、ものすごく楽しみにしていたのですが……無念……。

阿里山国家森林遊楽区をそぞろ歩く

雲海の中に広がる、阿里山の風景。

狙っていた駅弁を買いそびれて腹ぺこになりながら、バスに揺られて1時間弱。阿里山駅を中心とした阿里山国家森林遊楽区に到着しました。バスの外に降り立つと、黒々とした巨木の森の彼方、雲海の切れ間に、垂直の断崖を持つ険しい山々がそびえています。古の水墨画を見ているかのような光景に、思わず息を呑みました。

鉄橋につけられていた阿里山の巨大看板。

阿里山駅からは、林鉄支線として、神木(シェンムー)駅までを結ぶ神木線、沼平(ヂャオピン)駅までを結ぶ沼平線、沼平駅からさらに祝山(ヂュシャン)駅まで行く祝山線という路線があります。祝山線は主に祝山からのご来光を見るために朝の時間帯に運行していて、神木線と沼平線は、午前から午後にかけて、30分おきくらいに運行しています。いずれの路線も距離はごく短く、阿里山駅から沼平駅や神木駅までは、10分もかからずに到着します。

毎週水曜に運行する、沼平線のヒノキ車両。

林鉄支線の乗車券は駅の窓口で買えますが、日や時間帯によってはかなりの行列になり、希望の時刻の列車に乗れない場合もあります。僕が訪れた日も、列車に一度に乗り切れないほどの大混雑。結局、1本後の沼平線に乗って、沼平駅まで行ってみることにしたのですが、歩いて行った方が早かったですね……(苦笑)。毎週水曜にだけ沼平線で運行する、ヒノキ製の客車に乗ってみたかったので、それはそれでよかったのですが。

踏切を通り過ぎようとする沼平線の列車。

沼平駅の外で、阿里山駅へと引き返していく沼平線の列車を撮影しました。狭軌のレールを走る赤いディーぜル機関車、風情がありますね。何だかんだで、乗れてよかった……。阿里山森林鉄路は、当初は蒸気機関車で運用されていましたが、1953年からディーゼル機関車を導入。一時期を除いて、日本製の機関車を採用してきたそうです。

巨木が立ち並ぶ森の中の散策路。

沼平駅からは、至るところにある標識を参考にしながら、遊歩道を歩いて阿里山駅まで戻ることにしました。もう少し時間があれば、沼平駅から神木駅まで、有名な巨木のある森を散策してみたかったのですが、ここまでにいろいろ遅れたり待たされたりした関係で、時間がなくなってしまったので。

阿里山駅のバス停留所に行ってみると、嘉義方面に向かうバスを待つ場所には、またしても長蛇の列が。列車と同様、一度には乗り切れないほどの人数で、うかうかしていると、最終のバスにも乗れなくなってしまいそうな状況でした。僕はどうにか、当初の予定より1本後のバスに乗ることができましたが、危ないところでした……。

バスでの下山の途中、雲海に沈んでいった夕日。

満席となった嘉義行きのバスに乗っていると、途中、おそらく予定外のタイミングで、運転手がバスを停めました。

「今、きれいな夕日が見られるから、ここで5分だけ休憩するよ!」

言われるがままに車外に出ると、一面に広がる雲海が、沈んでいく太陽が放つ眩い光で、燃え立つような茜色に染まっていました。阿里山への旅の最後に、こんな光景を見せてもらえるとは……! 運転手さん、ありがとう。

今回、実際にトライしてみて実感したのは、列車とバスを乗り継ぐ形で嘉義から阿里山まで日帰りで訪れるのは、時間に余裕がなさすぎるので、現地であれこれゆっくり楽しむのは難しい、ということでした。日帰りなら、バスツアーやチャーター車などで訪れる方が無難でしょう。予約の困難さなども考えると、山岳鉄道ならではのロマンを満喫できるという点以外、阿里山森林鉄路に乗るメリットは、あまりないのかもしれません。

でも、だからこそ、一度は乗ってみたい……と思わせてくれる路線でもあるのですが。

山本 高樹さん

著述家・編集者・写真家

1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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