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拝見! アウトドア達人のソロ活
登山家・作家 服部文祥さん

「月の半分以上はここにいるかな。ナツ(犬)がいるから、ソロって感じもしないけど」
ここは服部文祥さんの物書き兼狩猟小屋。1月は狩猟シーズンなので、必然的にここでの生活が長くなる。
朝は7時前に起床。マイナス6度Cのなか、起きたらまず薪ストーブに火を入れ、湯が沸いたらチャイを淹れる。スライスしたショウガに茶葉、塩ひとつまみ、ザラメを入れて煮出す。茶葉が開いたら、牛乳と、ゴリゴリ擦ったカルダモン、シナモン、クローブを入れる。
「朝これ飲まないと、スッキリしないんだよね」
8時過ぎにちょっと遅い朝飯を食べ、原稿を書いて野良仕事。冬とはいえ少しの野菜が採れる。昼食は食べず、畑をやりながら、適当に干し芋をかじる。寒いからなかなかやる気が起きないが、狩猟に出かけるなら夕方獲れることが多いので、昼の14時過ぎに出る。獲れなくても、暗くなったら山から降りてくる。
「狩猟に行かないときは、散歩を兼ねてジョギングする。標高差200mの道を往復4㎞」
そして薪づくり。夕方暗くなる前に、天然水の五右衛門風呂に火を入れ、沸くのを待つ間に研いでおいた米を炊く。
「風呂が人生の楽しみ。でも、冬沸かすには夏の倍薪がいるから(ふた抱えほど)、とにかく時間があれば薪を作ってる」
夕飯を済ませたら、20時には床に就く。それが冬の一日だ。家族が暮らす横浜にいるときも、意識がここに向かうと話す。
「畑にシカが入っちゃうかな、とか、干し柿をハクビシンに持っていかれないかな、とか。今年はカケスにやられたから、家の中に移したんだよ」
山から湧き水を引いて、燃料を拾い、自給自足。生きることを直接やれば、お金も使わない。
干し柿がぶら下がっている横には、干し肉もぶら下がり、薪ストーブの上にはいい感じの干し芋が揺れる。
「生のトマト食べて畑でクソすると、トマト生えてくるんだよ。こういう生活してると、人間も分解者なんだなって思うし、すべてが循環するってわかった」
とはいえ、服部さんの古民家には、ソーラーパネルもあるし、蓄電した電気でWi-Fiを動かすこともできる。それを隠そうとしないところがまた、服部さんらしい。自分の意思で、自分の必要なときにだけ使う分には、構わないでしょ、という。
「たださ、この暮らしに効率を求めちゃダメ。非効率のほうが人間って体を動かすじゃん。面倒くさいけど、薪を切る。生き物だから、動いてないと」
自由なソロ生活を楽しむには、不便を楽しむ心構えが必要。それが服部流なのかもしれない。

明治時代に建てられた古民家を修繕しながら暮らす。

乾燥した倒木を薪用に調達。

電動チェーンソーで玉切りする。暖とりには広葉樹、炊事には火力の強い竹を使う。

冬場はホウレンソウやルッコラを栽培。自然農なので形も味もバラバラ。

柿の木はクマが登れないようトタンで巻いている。
不便さのなかで人間力を磨く古き良き暮らし

文化竈が設置された台所。カゴや食材が吊り下げられている。「食材は吊り下げないとネズミに食べられるから」。

柿は皮をむき、ウイスキー(熱湯でもOK)消毒したあと陰干し。

屋根裏に吊るされた鹿の干し肉。ストーブの煙で燻されている。塩を揉み込むがナツ用は塩なし。

ウイスキーで洗い砂糖で漬けた梅。シロップは水で薄めて飲む。

残った果肉はジャムにして保存。

鹿の干し肉を使ったスープを作る。材料は鹿肉とダイコン、ショウガ、ネギ。

まずは肉だけ湯がいて毛やゴミを取る。

ストーブの上でさらにことこと煮込みながら、干し芋を焼く。

竃で炊いたご飯といただく。味付けは塩と醤油、隠し味にナンプラー。
※構成/大石裕美 撮影/亀田正人
(BE-PAL 2026年3月号より)




