隅田川近くに源頼朝由来と伝わる神社も登場。歩いて感じた東京のエリアごとの景観の違い【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.20】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.11.25

    隅田川近くに源頼朝由来と伝わる神社も登場。歩いて感じた東京のエリアごとの景観の違い【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.20】

    隅田川近くに源頼朝由来と伝わる神社も登場。歩いて感じた東京のエリアごとの景観の違い【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.20】
    プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

    今回は東京都墨田区の白髭橋から〜荒川区の南千住まで歩く「南千住GREEN WAY」です。
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    20th ルート:南千住GREEN WAY

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    前回はこちら↓

    墨田区の歴史の深さを感じた散策コース。日本初の少年野球場ほか発見がたくさん!【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.19】

    前回のFILE.19 「向島GREEN WAY」は、隅田川にかかる白鬚橋で歩き終えました。今回は、さらに隅田川沿いの道を北上し、荒川区の南千住まで歩いてみたいと思います。

    ということで、FILE. 20は何のヒネリもなく「南千住GREEN WAY」です。

    まずは、白髭橋から東白髭公園へ向かいます。広い東白髭公園に囲まれるようにして、隅田川沿いに桜堤中学校があります。中学校の敷地内に「近代映画スタジオ発祥の地」の碑が建っていました。

    近代映画スタジオ発祥の地

    ここは、東洋一のスタジオ(当時)である日活向島撮影所のあった場所。1913年(大正2年)に開設され、「カチューシャ」など750本以上の映画が製作されたそうです。しかし、残念ながら関東大震災によって倒壊し、大正12年(1923)に閉鎖されました。

    見つけづらいし見づらい「近代映画スタジオ発祥の地」の碑。

    あらためて、東白髭公園の園内に歩を進めます。緑豊かで木陰が多く、散策にぴったりな園路が伸びています。

    東白髭公園。
    東白髭公園で、ふと振り返るとスカイツリーが見えました。これぞ墨田区。

    気持ちよく歩いていると、神社と案内板が見えてきました。

    隅田宿

    1180年(治承4年)に源頼朝が布陣したと伝わる隅田宿。もともとは中世武士団の軍事拠点であったと考えられ、鎌倉を目指した源頼朝がここから武蔵国へ川を渡ったという記録も残されています。そうしたことから現在の白鬚橋の西側一帯が隅田宿のあった場所とされていますが、正確なところは今も不明なのだとか。

    江戸時代に入ると、日本の中心が江戸に移ります。そして、隅田川に千住大橋や両国橋が整備されると、渡船場として栄えていた隅田宿は賑わいを失ってしまったそうです。

    隅田宿跡の案内板。

    隅田川神社

    詳細は不詳ですが、言い伝えによれば源頼朝が創建したと伝えられている隅田川神社。もとは浮島神社といい、水神社、水神宮、浮島宮などとも呼ばれ、「水神さん」として親しまれていたそうです。

    現在の隅田川神社となったのは、1872年(明治5年)です。隅田川一帯の守り神でもあり、水運業者や船宿など、川で働く人たちの信仰を集めたほか、水商売の人々にも信仰されたそうです。

    公園沿いにある隅田川神社。

    隅田川神社から少し進むと、お寺が見えてきました。

    木母寺

    平安時代中期の977年(貞元2年)、天台宗の僧が「梅若丸」の供養のために建てた念仏堂が起源という木母寺(もくぼじ)。古くは梅若寺という名でしたが、江戸時代に「梅」の異字体「栂」を「木」と「母」に分けて、現在の寺号になったそうです。

    近代的な雰囲気の木母寺。

    梅若伝説

    木母寺の由緒に登場する梅若丸は京都の貴族の子息ですが、人買いにさらわれ、この隅田川のほとりで亡くなりました。その死から1年後、息子を探し求めていた母親が梅若丸の供養塚の前で念仏を唱えると亡霊が現れ、悲しみの対面を果たした…という伝説があります。

    この梅若伝説は、室町時代に作られた能「隅田川」の題材となったほか、江戸時代には歌舞伎や浄瑠璃でも作品化され、広く知られるようになります。伝説に登場する梅若丸の供養塚は、現在、木母寺に再現されています。

    梅若塚。

    のんびりと東白髭公園を散策するつもりでしたが、周辺に源頼朝ゆかりの宿場や平安時代の伝説やらが点在していて、なかなか前に進めません。それでも園路を北上していくと、一般道をまたぐように梅若橋がありました。ただの園路のような見た目ですが、梅若伝説と関係あるのでしょうか。

    梅若橋。この下を一般道が通っています。

    梅若橋から東白髭公園を離れ、あらためて隅田川沿いの遊歩道に出ます。土手の上からは、対岸(荒川区)の汐入公園の桜並木が良く見えます。

    以前、この連載で隅田川の河口に近い中央区の勝どき周辺を歩きましたが(FILE.13)、あのあたりには新しい高層ビルやタワマンが建ち並んでいました。一方、墨田区や荒川区の隅田川沿いにはそれほど高い建物はありません。河口近くの高層ビル群を目にして東京らしい光景だと思いましたが、個人的には広い空が見渡せる下町の川辺に魅力を感じます。どちらが上ということではないですが…。

    こちらは荒川区内の隅田川の土手。変な言い方ですが、景色としても気持ちいいです。

    とかなんとか、隅田川の土手で愚にもつかないことをぼんやり考えた後、GREEN WAY歩きを再開。東白鬚公園の北側には、荒川と隅田川を結ぶ500m弱の小さな川が流れています。

    その川にかかる綾瀬橋を渡ると、墨田区から足立区に入ります。500mほど歩き、今度は隅田川にかかる千住汐入大橋を渡り、荒川区へと進んでいきます。

    そこからさらに隅田川の上流に向かって土手を歩いていくと、見覚えのある車両が何両も停まっている場所に行き着きました。東京地下鉄(東京メトロ)の車両基地で、日比谷線の車両が所属しているそうです。ふだん地下でしか目にしない車両を青空の下で見ると、不思議な気分になります。

    日比谷線の車両と青空の貴重な(?)の1枚。

    地下鉄の車両基地の近くには、貨物専用の「隅田川駅」もありました。考えたら旅客用の駅では、隅田川駅ってありません。良い名前だと思うけど、なぜないのでしょうか(範囲が広すぎるから?)。

    貨物専用のJRの駅「隅田川駅」。

    ドナウ通り

    隅田川駅の横の道は「ドナウ通り」と名付けられています。ドナウ川のドナウ?荒川区の隅田川の近くで?と、いくつも「?」が浮かんだのですが、荒川区とウィーン市ドナウシュタット区(オーストリア共和国)との交流を記念して命名されたとか。ちなみに、ドナウシュタット区内にも「東京通り」「荒川通り」と名付けられた道があるそうです。

    ドナウ通りの近くには「ドナウ広場」もあります。

    このドナウ通りから南千住駅は目と鼻の先です。今回の「南千住GREEN WAY」は、ここでフィニッシュとなります。

    単に広い公園を歩くだけでも十分に楽しいですが、周辺の神社や寺院の由来などにも目を向けてみると、散策がより味わい深くなると思います。また、この連載で隅田川沿いをあちこち巡ってきて、同じ川でも場所ごとに表情=景観の違いがあることを再認識しました。ベタな感想ですが、東京って狭いようで広くて奥深いですね。

    なお、前回のFILE. 19 「向島GREEN WAY」と「南千住GREEN WAY」を続けて歩くと、上記のような街歩きの妙味をより深く楽しめると思います。ぜひ、隅田川沿い散策、楽しんでください。

    今回歩いたルートのデータ
    |距離約5.9km
    |累積標高差約15m

    今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

    ●FILE.19「向島GREEN-WAY」 to FILE.20「南千住GREEN-WAY」

    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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