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磯野貴理子の推し鳥DIARY! 第1回
磯野貴理子

見つけた!
1985年、お笑いアイドルグループ「チャイルズ」の一員としてデビュー。解散後はタレント、俳優としてマルチに活動。軽やかなトークとユーモアあふれるキャラクターでお茶の間の人気者に。
鳥沼にハマり人生が変わる!
いま、私は鳥に夢中です。いつでもどこでも鳥を探して、旅へ行くのも鳥目当て。魅力を知れば知るほどいろんな鳥に会いたくなって、どちらかといえばインドア派だった私が、鳥のために山登りまではじめてしまって。着る服も、モンベルやワークマン女子で買う機能性抜群なアウトドアなものばかり。一期一会の鳥たちの写真を撮りたくてカメラもはじめて、かわいい鳥たちのことをたくさんの人に伝えたい一心でインスタグラムもはじめました。鳥を見たい、撮りたい、伝えたい! って気持ちで毎日が推し鳥暮らし。
鳥を通して知る自然の営みにも心を寄せるようになって、本当に私の人生は大きく変わりました。きっかけは、シジュウカラという小っちゃな鳥の鳴き声なんです。今になって思えば、そのかわいらしい小鳥に「鳥の世界へおいで」って呼ばれたのかもしれません。
かわいい鳴き声が聞こえてきた
あれは3年前の春でした。ある朝、自宅のマンションの窓をあけたら、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてきたんです。
「ツツピー ツツピ ツツピーツツピ」って。耳にした瞬間、わあ、なんてかわいい鳴き声なんだろうって感動しちゃって。あくる日も、またその次の日も、朝になると鳴き声が聞こえてくる。あ、またあの子だ。今日も鳴いてる、うれしい! って、毎朝起きるのが楽しみに。それで、ふと知りたくなったんです。鳴き声の主はどんな鳥なんだろうと。でも、鳴き声は覚えているけれど、姿を見たことはないから、図鑑では調べられない。それで鳴き声を頼りに、インターネットで「鳥の鳴き声」みたいな言葉を打ち込んで検索をかけて、いろんな鳥の鳴き声をひとつずつ聞いていったら、ツツピーと鳴く鳥はシジュウカラだということがわかったんです。画面に映し出された姿を見たら、頬っぺが白くて首元は黄緑色がかっていて、ころんとしたフォルムで。鳴き声だけじゃなく、姿もとってもかわいい。
もう、本当にびっくりしました。何がって、こんなかわいい鳥がこんな大都会にいたのか! ってことにです。
大都会にキツツキがいる⁉
私は三重県の田舎町の生まれで、毎年、春になると実家の納屋にはツバメが巣をつくりにやってきました。今年もツバメがきたなあ、うれしいなと思ってはいましたが、子供時代の鳥にまつわる記憶といえばそれくらい。
鳥に興味を持ったことなんて一度もなくて、何しろ3年前までほかに名前をいえる鳥といったら、スズメにカラス、神社によくいるカワラバトくらい。つまり、鳥とはまったく無縁の暮らしだったんです。趣味はBTSやヤクルト スワローズにハマったり中国語を勉強してみたり色々ありましたけど、フィールドに出て何かを楽しむってことはほぼありませんでした。
そんな私がシジュウカラを知ってからは、気づけばいつでもアンテナを張って鳥を探すようになって、近所を散歩するのさえ楽しくなって。こんなこともありました。自宅近くの公園で「ココココココ」って聞き慣れない音が聞こえてきたので、音のする方をパッとみたら、樹の幹を小さな鳥がつついていたんです。あとで調べて知ったことですが、それは、しましま模様のコゲラという日本で一番小さなキツツキ。エサになる虫を探し求めて枯れた樹をつついていた音だったんです。そのときも、森の中にしかいないだろうと思っていたキツツキがまさか東京のど真ん中にいるなんて! ってまたびっくりしちゃって。
おもしろいものですよね。それまでだって私の周りで鳥は飛んでいたのに、鳥に意識を向けるようになったら、急にどんどん鳴き声が聞こえるようになって、姿が目に飛び込んでくるようになってきたんですから。そうなると一層楽しくなって、仕事の合間もスマホで鳥の画像や鳴き声をチェックしたり、知り得た情報をもとに、海水を飲むというアオバトを見に大磯の海まで遠征したり。もう毎日、鳥のことを考えるだけでうれしくてドキドキしっぱなし。鳥が好きになりすぎちゃって、もっと見たい、もっと知りたいという気持ちがわいてきたんです。
「日本野鳥の会」入会を決心
インターネットで鳥の名前や生態などいろいろ調べることはできるけれど、独学では限界がある。やっぱり鳥のプロに教わらなきゃ。そう考えて、決めました。「日本野鳥の会」へ入会しようと。昭和の時代、年末のNHK紅白歌合戦で双眼鏡をのぞきながら客席審査のカウントをしていた、鳥のプロたちが所属するあの会です。
もちろん軽い気持ちなんかじゃありません。ずいぶん躊躇しましたよ。なぜって、名前からしてマジメそうだし、高尚な会かもしれない。芸能活動をしている私が、おちゃらけて入ったと思われたらどうしようとか、迷惑がかかったらイヤだなとか。そもそも鳥のことを何ひとつ知らない私なんかが入会していいのかしらと。でも、真剣に鳥を覚えたいっていう私の気持ちはまったく揺るがなかった。
そして勇気を出して日本野鳥の会へ入会したことで私の生活スタイルは一変したんです。本格的に、推し鳥暮らしまっしぐら。どんなふうに変わったか、その話はまた次回。お楽しみに。
愛用のガイドブック


野鳥観察時には『フィールドガイド 日本の野鳥』を持参。鳥を観察したその場所と日付を忘れぬようメモするのも楽しい!
今月の推し鳥
シジュウカラ

お気に入りの一枚。シジュウカラは日本全国、山林から市街地まで広く生息している身近な鳥。

水浴び直後のびしょびしょの姿もかわいい! 全長は14.5㎝ほど。

体毛がふわふわとした幼鳥。関東では5月中ごろが巣立ちシーズン。
※鳥の撮影/磯野貴理子 構成/安井洋子
(BE-PAL 2025年9月号より)







