
BOOK 01
’60〜’70年代激動のアメリカ アウトドアの源流を探す
『パソコンとヒッピー』
赤田祐一原作
関根美有作画
エディトリアル・デパートメント
¥1,760

コンピューターとヒッピー。対極に感じられる両者だが、本書でその源流を辿ると、深い頷きとともに今私たちが置かれている状況を省みざるを得なくなる。
パソコンが生まれてからおよそ半世紀が経過。かつてコンピューターは大型で、一部の専門家だけが扱う装置だった。だが誰もが手にでき、大衆の人びとを繋ぐものとして考案されたのがパソコンであり、立役者はヒッピー層。そのひとりに企業家のスティーブ・ジョブズもいる。
ヒッピーカルチャー同様にカウンターカルチャー(対抗文化)として本来は生まれたものだった。アウトドアの精神〝Do it yourself.” も同じ流れを汲む。アメリカ発のアウトドアブランドの幾つかは、この時流の中で生まれたのだ。
本書は『ホール・アース・カタログ』の誕生秘話に始まり、さまざまなサイドストーリーを交えて1960年代から’70年代前半のアメリカのカルチャーを繙く。今後パソコン(スマホやインターネットと言い換えてもいいかもしれない)と、どう付き合っていくのか? という問いを私たちに投げかけている。自然やアウトドアがますます大切になることは間違いなさそうだ。
BOOK 02
多様性に満ちた食文化 食の宝庫からヒントを
『イタリア食紀行
南北1200キロの農山漁村と郷土料理』
大石尚子著
中央公論新社
¥1,210

日本と同じく、海に囲まれて細長い国土のイタリア。北、中央、南、そして島々。風土に根差した伝統食や豊かな食文化が華やぎ、スローフード発祥の国でもある。
農村の衰退といった問題を抱えつつも、民と官、両輪で地域再生の糸口を掴んでいる。本書はイタリア各地の特徴的な食材、食文化の継承や地方活性に従事する人びとのあらゆる活動を紹介。問題解決の策や手がかりが随所にちりばめられている。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年7月号より)