
かつて「ヒュンダイ」と呼ばれていた韓国最大手ブランドは、いま「ヒョンデ」となって最先端のEVで日本に再上陸。ヒョンデが属する現代自動車はグループ全体でトヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ、世界第3位の売り上げ台数を誇り、ことEVに関しては、日本メーカーより断然進んでいるとの噂は耳にしていましたが、はてさて実際はどうなのでしょうか?
日常生活はもちろん、キャンプやアウトドアにも使いやすいサイズの「インスタ―」の魅力を徹底リポートします。
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価格はお手頃!街でひときわ目立つデザインも魅力

ヒョンデから新しいコンパクトEV(電気自動車)、「inster」が発売になりました。
さっそく、3つあるグレードの最上級「Lounge」(価格357万5000円・税込)に首都高速と一般道で試乗してみました。
insterは、見ての通り個性的な外観をしています。どんなクルマにも似ておらず、街中でも目立っていました。

カジュアルで、クルマっぽくないディテイルが新鮮です。とても魅力的なのですが、では自分で買うかとなると躊躇してしまいますかね。若者にはピッタリですが、中年の自分には若過ぎるセンスのようです。
サイズは5ナンバー規格、乗車定員は4人

insterのボディサイズは全長3830x全高1610x全幅1615mmと、日本の5ナンバーサイズに収まっています。乗車定員も無理に5名押し込まず、割り切って4名です。

高めに設けられたシート位置が、乗り降りを楽にしてくれています。日常的な使いやすさに直結していますね。同乗する高齢者の負担の多寡にも関係するので、乗り降りは大切なチェック項目です。その点で、insterはとても乗り降りやすく使いやすい。
内装は明るく、乗り降りしやすい工夫も

試乗車はベージュ内装が施されていて、それが車内を明るくしていました。これが黒ベースだと、実際のサイズ以上に狭く感じられてしまいます。好みにもよりますが、このベージュを選べば車内は明るく、広々と感じることができるでしょう。

実際に広く使える工夫も、insterには施されています。シフトレバーを、運転席と助手席の間ではなくステアリングホイールの付け根から斜め上に生やしているので、行き来できる空間があります。
狭い駐車場で仕方なく右側の壁ギリギリに停めざると得ない場合でも、助手席側から出るのはたやすくなります。コンパクトカーだからありがたい設計ですが、ヒョンデは日本再進出第1号となった「ioniq5」でも同様の設計を採用していました。
中央にシフトレバーがなくなると、その周囲のモノ入れなどもなくなってしまいそうですが、そこは上手く工夫してダッシュボード側に大きな空間を2段に分けて造ってあるから万全です。
生活道具としてよく考えられた収納

肘掛けの下にもペットボトル2本が入るホルダーとキー収納スペースがあります。さらには運転席と助手席ドアにもモノ入れが設けられています。その他に、4枚のドアの黄色いパネルを取り外しても収納を増やすことができます。
収納やモノの置き場については、とても良く考えられています。生活の道具としてEVを使う際の大きな助けとなってくれるでしょう。
必要十分な電池性能とモーター出力

バッテリー容量は49kWhで、走行可能距離は458km(国土交通省審査値)。これだけ走れば十分でしょう。充電よりも先に、人間の方が根を上げてしまいますから。

モーターの最高出力は85kW、最大トルク147Nmと十分な値です。
実際に走らせても、非力な感じもなく、EVならではの停止から滑らかで強力な加速が気持ち良い。着座位置が高いので視点も高くなり、見通しの良さも運転しやすにつながっています。
車線変更や曲がるときに安全性を高める後方カメラ機能

これもioniq5と共通していますが、左右にウインカーを出すと、それまでメーターパネルにデジタル表示されていたパワーメーターかスピードメーターが後方を撮影しているカメラの映像に切り替わります。
ドアミラーの代わりにカメラを使うクルマもありますが、insterは変わらずミラーはミラーを使い、ウインカー使用時だけ切り替えてメーター内に表示します。これならばリアビューカメラを苦手とする人にも馴染みやすく、コーナリング時の安全確保にも確実に役立つでしょう。
やや背が高いボディによる不安定感のようなものも感じませんでした。走行性能は、とても良くバランスが取れていた。小さなことによるデメリットは生じていませんでした。
昼寝も快適、オンライン会議にも便利なシートアレンジ

最も大きな長所は、シートアレンジが多彩なことです。後席の背もたれを後ろに傾けて座って足を倒した前席の背もたれに投げ出せば、行儀はあまり良くないがリラックスできます。

全部倒せばフルフラットになり、かなり大きな荷室となります。
また、助手席の背もたれを前に倒して、そこに資料やPCなどを置けば運転席に座って仕事ができます。外回り担当ならば、会社に戻らずにオンライン会議で済ませられるでしょう。EVを出先で充電する場合には、車内で過ごす時間も増えるので、こうした車内環境の充実は大事になってきます。
金子浩久の結論:「生活でどう使うのか」ということについての洞察が行き届いたコンパクトEV

insterはコンパクトなことで生じそうな不便を工夫で解消し、さらにその上でシートアレンジを多彩にすることで使い途を増やしました。日常生活にも便利ですが、仕事でも活躍してくれるでしょう。アウトドアでも、頼もしそうです。
注意が必要なのは、3つのグレードによって装備が違うことです。特に運転支援機能はまったく同じではないので、自分の使い途や予算などと良く勘案する必要があります。
insterでは、必要十分な走行性能の実現は当然のこととして、さらにそこからユーザーがコンパクトEVをどう使うのかということについての洞察が行き届いています。まさに、“ユーザーに寄り添っている”クルマです。試乗記もコンパクトに書いてみました。
