鉄道と仲良く並走する(?)珍しいトレイル【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.20】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

山・ハイキング・クライミング

2025.04.25

鉄道と仲良く並走する(?)珍しいトレイル【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.20】

鉄道と仲良く並走する(?)珍しいトレイル【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.20】
トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第20回をお届けします。

ひとつのトレイルを終え、ひと息つく間もなくさらに前へ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.19】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

[ポトマックヘリテージトレイル編 その20]

街に近い場所を通るトレイルを歩きながら

The Potomac Heritage Trail : MILE184.5

前回も触れたように、カンバーランドは古くからの歴史がある街です。ただ、それなりに規模の大きな街で、何となくガヤガヤしていて落ち着かない印象でした(個人の感想です)。

本当はもう1日休みたかったのですが、どうせなら小さな街でゆっくりしようと考え、早々に早朝から出発することにしました。

もともと、C&O運河はピッツバーグまで建設する予定だったそうです。でも、資金の問題に加え、時代が進むに従って鉄道が発達し、このカンバーランドでC&O運河の開発は終わりました。

ということで、C&O運河トレイルに続くGAPトレイルは、水陸の輸送争いに勝利した鉄道の跡地、線路跡を整備した道のりになります。

一般にイメージされるように、トレイルはたいてい自然の中を進む道のりです。でも、僕がここまで歩いてきたC&O運河トレイルも、これから歩くGAPトレイルも、わりと街に近い場所を通っています。

どちらのトレイルとも、アメリカの開拓の歴史を踏まえた産業遺構探索のような道のりなのです。だからこそ、C&O運河トレイルやGAPトレイルを含むトレイルの名称が、ポトマック「ヘリテージ」(=受け継いできたもの、遺産)トレイルとなっているのでしょう。

GAPトレイルは道路上にバイクルートが記されています。
トンネル内もハイカーとバイカーの通り道が柵で区切られています。

カンバーランドの中心地を抜けて郊外に進むと、石柱のマイルポストが見えてきました。C&O運河トレイルのマイルポストと比べると、少し固いイメージです(トップ画像参照)。

ここまでC&O運河トレイルを180マイル(約288km)以上も歩いています。でも、「1」と刻まれたマイルポストを目にすると、リセットボタンを押された感じというか、「また初めからですよ」と念を押された感じというか、妙な気分になります。

先述したように、GAPトレイルは線路跡に整備されたルートといわれています。実際にトレイルと並走している線路は、レールも枕木もそこまで古いものではないように見えました。でも、資料などでは線路跡と説明されているので廃線なのだろうと思い、並走するトレイルを歩いていました。

トレイルの真横を線路が通っています。

しばらく歩いていると、遠くから汽笛のような音が聞こえてきました。トレイルと並走しているのは廃線なので、こことは別の場所を鉄道が走っているのだろう。

そう思っていたのですが、遠くに感じていた鉄道の走行音が迫力を増しながらぐんぐん近づいてきたので、慌てて線路から離れます。と、真横の線路を列車が通過していき、のん気そうな乗客が手を降っていました。線路、現役です!

列車通るんかい!

どういうことだろうと思って調べたところ、僕のすぐ横を走っていったのは「ウェスタン・メリーランド・シーニック鉄道」(WMSR)といいい、メリーランド州カンバーランドを拠点とする歴史ある鉄道だそうです。

現在は、蒸気機関車とディーゼル機関車を使用して、観光列車や貨物列車を運行。季節限定の特別観光列車など、イベント列車も運行しているとか。

なるほど、そういった観光列車などが1日数本だけ通るようです。って、簡単に線路に立ち入れないように柵を設けるとか、注意を促す案内板を設置するとか、何かしら安全策は必要だと思います。事故など起きていないのでしょうか…。

しばらく歩いていると、今度は線路上をペダル駆動のレールバイクが何台も走り抜けて行きました。

みんな、楽しそうです。手を振ってくれたので、礼儀として振り返したら、30台ほどのレールバイクに延々と手を振るはめになり、腕が疲れました。みんな、楽しそうでした…。

それから2時間ほど経ったころ、今度は逆方向から列車がやってきました。見覚えのある人たちが列車から手を振っています。ん?と思っていると、さらにレールバイクをけん引する車が現れました。

どうやらフロストバーグからカンバーランドまではレールバイクで下り、帰りは列車でフロストバーグに戻る、というツアーのようでした。みんな、楽しそうで何よりです…。

すると、今度は坂の上の方から、歩いている人が現れました。男女2人組で、何やら手押し車のようなものを押しながら歩いています。GAPトレイルに来る前のC&O運河トレイルでも、出会うのはバイカーばかりで、ハイカーはほとんど見かけませんでした。

しかも、手押し車ともにトレイルをしている人なんて、これまで目にしたことがありません。不思議に思い、足を止めて話しかけてみました。

彼らはジョアンご夫妻で、ピッツバーグから歩いてきたそうです。手押し車は、背負えないほどの大荷物を抱えているので利用しているといいます。GAPトレイルやC&O運河トレイルはバイクルートでもあり、整備されたアスファルトの道が大半を占めます。

山道や自然道と違い、デコボコの少ないバイクルートなら手押し車でも問題なく進めるだろうと考え、ジョアンご夫妻は自分たちなりのトレイルを実践しているのです。

トレイルは、できるだけ少ない荷物で歩くもの。そんな固定観念に凝り固まっていた自分自身を少し反省しました。トレイルは、どこまでも自由なもの。自分たちなりのスタイルで楽しく歩けば、それでOKなのです。

ジョアンご夫妻はカンバーランドで休んだら、例のレールバイクに乗るそうです。僕も一緒にどうかと誘われましたが、天気予報は雨だったので「晴れたら一緒に乗ろう!」といって別れました。

ジョアンご夫妻(と手押し車)。

The Potomac Heritage Trail : MILE200

広々とした立派な駐車場と、たくさんの人たちが見えてきました。どうやら、カンバーランドの次の街、フロストバーグに到着したようです。

フロストバーグは、1820年までマウント・プレザントと呼ばれていました。そして、政府が郵便サービスを開始した際に、フロストバーグに改名されたそうです。

メリーランド州西部、フロストバーグ周辺の山々では、石炭が採掘できます。ただ、地形的に輸送がとても困難でした。そこで、1852 年、マウントサベージ鉄道はフロストバーグへの鉄道路線を最初に建設。

お隣のカンバーランドを通るボルチモア&オハイオ(B&O)鉄道やC&O運河と繋がって輸送範囲が広くなり、鉄道会社としても繁栄しました。

その後、1864年には高品質の耐火粘土を利用した耐火レンガの製造が始まり、街の主要産業になります。フロストバーグは、現在でも東海岸の耐火レンガの主要サプライヤーの一つとなっているそうです。

フロストバーグの街の入り口近くに、給水ポンプなどを備えた東屋のような施設がありました。そこで一息ついていると、ハイカーが珍しいのか、街の人たちに声をかけられました。やはり、というか、今はシーズンオフということもあり、この近辺でハイカーの姿はあまり見かけないようです。

その東屋から宿に向かう途中、何やら奇妙なモニュメントがポツポツと置かれていました。調べてみると、SCOTT GAWOODという方の作品のようです。彼のサイトによると、芸術家、溶接工、製作者、彫刻家、作家、そして「木陰の哲学者」とプロフィールに書いてありました。得体の知れない感じがしますが、アメリカらしいといえばらしい気もします。

街の入り口からB&O鉄道の駅舎(1891年建立)までは、つづら折りの道が続いていていて、そこに自転車をテーマにしたモニュメントがいくつもありました。さながら屋外美術館のようです。

SCOTT GAWOODの作品。たぶん芸術か何かが爆発しています。

SCOTT GAWOODを作品を横目にしながらB&O鉄道の駅舎までくると、すぐ目の前にトレイル・イン・ロッジング&キャンプグランドがありました。ここにはバンクハウスとキャンプ場、2つの宿泊施設があります。

右側がレストラン、左がバンクハウス。

フロストバーグでは、ゼロディ(トレイルを歩かず、休息したり今後の計画を考えたりする日)を取ろうかと考えていて、このキャンプ場のことを日本にいるときからチェックしていました。

受付で「バンクハウスとキャンプ場、どっちに泊るの?」と聞かれたので、ひとまずキャンプ場を見せてもらうことにしました。

かなり急な木道を3分ほど登ります。すると、原っぱのような場所がありました。東屋のような施設も、コンセントも、水道も、トイレもありませんが、たぶんここがキャンプ場です。

トイレや水道は、いちいち木道を登り降りしてバンクハウスまで行かなくてはならない様子でした。しかも、天気予報によると、今夜は雨です…。

せっかくのゼロデイなので、なるべく面倒やストレスは遠ざけたいものです。ということで、バンクハウスに2泊することにしました。1泊30ドル(約5,000円)なので安くはない出費ですが、モーテルに泊まることを考えたらリーズナブルです。※1泊30ドル=安くないは、個人の感想です。

バンクハウスには、シャワーもトイレも、テレビも冷蔵庫も、備わっています。そんなことで、トレイルを出発して15日目、8日ぶりにベッドでの就寝となったのでした。

キャンプ場に至る木道。散々トレイルを歩いた後で登るのは大変です。
原っぱ…のようなキャンプ場です。

ポトマックヘリテージトレイル公式サイト

ナショナルシーニックトレイル踏破レポのバックナンバーはこちら

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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