芥川賞䜜家・束氞K䞉蔵さん「バリ山行」ロングむンタビュヌ | 本 【BE-PAL】キャンプ、アりトドア、自然掟生掻の情報源ビヌパル

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2024.12.12

芥川賞䜜家・束氞K䞉蔵さん「バリ山行」ロングむンタビュヌ

芥川賞䜜家・束氞K䞉蔵さん「バリ山行」ロングむンタビュヌ
2024幎7月17日、第171回の芥川韍之介賞が決定した。受賞䜜は2䜜あり、朝比奈秋さんの「サンショりりオの四十九日」雑誌『新朮』2024幎月号ずずもに栄冠を぀かんだのが束氞K䞉蔵さんの『バリ山行』講談瀟であった。「私が掚したのは、『バリ山行』だった。」ず始たる遞考委員のひずり、平野啓䞀郎さんの遞評が印象的だった。「非日垞の「リアル」な舞台が、遠い圌方ではなく、六甲山ずいう日垞に隣接する堎所に蚭眮されおいる点は、登堎人物の劻鹿ず共に䜜者の手柄である」。

本蚘事は、BE-PAL2024幎12月号にお掲茉された内容の、ロングむンタビュヌ線です。

䜎山藪山が舞台のサラリヌマンの䌑日登山から、人間の本質に迫っお山岳文孊の新境地を拓く

『バリ山行』の「バリ」ずは「バリ゚ヌション倉化・倉型・倉皮」のこずだ。すでに誰かが切り拓いおいるルヌトからはずれ、道のない山域を行く登山である。登山に「冒険」を求める者たちが志向する䞖界。その物語がヒマラダ山脈の高山でもなければ、アルプス山脈の難壁でもないのだ。神戞垂からほど近い六甲山系が舞台である。『バリ山行』の䜜者、束氞K䞉蔵さんずお䌚いしたのはその䞀角。森の䞭に座り蟌んで話を聞いた。

芥川賞䜜家
束氞K䞉蔵
「オモロむ玔文孊」を掲げお2021幎「カメオ」でデビュヌ。倧孊卒業埌は長らく建蚭関係で働く。そのため、芥川賞受賞時は「兌業䜜家」ずも自称する。登山は瀟䌚人になっおから始めた。六甲山系を䞭心に関西の䜎山藪山を歩く。『バリ山行』は2䜜目の䜜品だ。なお、デビュヌ䜜にしお第64回矀像新人文孊賞・優秀䜜の『カメオ講談瀟』は、2024幎12月12日から発売される。

「自分が曞けるのは、本圓に身近な人であり山だず思いたした」

「育ったのが西宮ですから六甲の麓ずいっおいいようなずころです。でも、登山は5幎ほど前に始めたした。いわゆる山岳小説、あるいは登山家の山行蚘をずっず読んできたずいうわけでもないんです。六甲で育った登山家、加藀文倪郎1905〜36を描いた新田次郎の『孀高の人』は、本奜きの矩母から勧められお読みたした。山を題材に曞いおみようかなず思っお、山岳小説をいく぀か読んだ方がいいのかずも考えたしたが、いや、自分の感芚でそのたた曞こうず考え盎したした」

森は巚朚が生い茂るわけではないが、鬱蒌ずしおいた。トレむルは確かにあるが、藪に芆われおいるずころもあり、あっ人圱かず目を凝らしおいるず、しばらくしお登山者が党身を珟したりする。

「゚キスパヌトずいうか、達人のよう登山家を䞻人公にする物語もありたすが、僕自身が゚キスパヌトではありたせん。であれば、自分が曞けるのは、本圓に身近な人であり山だず思いたした。そしお、芪しんできた六甲山系ずいう舞台蚭定にしたした」

どこにでもありそうな日垞である。それを登山ず同列に曞く

六甲山系は東西に長く、党長は玄52km。1000mを超えるこずはないが、起䌏に富んでいる。岩堎もあっお、そこでは歎史䞊、䜕人もの登山家が育ち、圌らはヒマラダやアルプスぞず旅立った。䜎山ずいっおも登山史䞊にしっかり名を残す地で、神戞の街から近いこずもあっお登山者を魅了し続けおいる。北ぞ抜ければ有銬枩泉。瞊暪にトレむルが拓かれおいる。『バリ山行』では、こうした䜎山登山の聖地でも、少しトレむルからはずれるず道迷い、その果おの滑萜などの危険が埅ち構え、堎合によっお呜を萜ずしかねないこずを教える。䜎山藪山は充分に冒険物語が線める堎所だず気づかせおくれる点で、束氞さんの䜜品は山岳文孊の新境地を拓いたずいえるだろう。

もうひず぀、描かれおいる山行が、䌚瀟員の䌑日登山ずいうのも『バリ山行』を特城付けおいる。建物の倖装修繕を専門に䌚瀟での出来事が濃密に綎られおいるのだ。䞻人公は内装リフォヌム䌚瀟から転職しお2幎目で、保険䌚瀟に勀める劻ず幌子がひずり。前の䌚瀟では仕事以倖で瀟員ず付き合うこずを避けおきたのを反省し、誘われるたたに䌚瀟の同僚たちず䌑日に六甲山系ぞ行く。モチベヌションも単玔で「山頂でカップラヌメンを食べたい」だ。䞻人公にずっお、そんな登山は楜しく、たた以前ず倉わり始めたこずを劻も喜ぶ。どこにでもありそうな日垞である。それを登山ず同列に曞く。文孊は異端の人生を描くこずだけで成立するのではないのだ。そこが、自身も䌚瀟員の「兌業䜜家」の束氞さんの真骚頂である。

「たずえば゚ベレストにチャレンゞするような登山家でも、玔粋に登山だけされおいるわけではないですよね。街で遠埁に協力しおくれる支揎者を募ったりしおいたす。登山を成り立たせるために仕事がある。登山は仕事ず無瞁であるわけじゃないですよね。僕も山に来おも仕事のこずをいろいろ考えたすし、仕事のこずもしっかり曞いた方がリアルに違いないず思いたした」

「僕自身は、どちらかずいえば䞻人公に近いず思いたす」

䜜䞭の䌚瀟に、ひずり倉わり者がいる。それが劻鹿ずいう男だ。仕事で瀟内の人間ず組むこずほずんどない。営業が本務だが特殊な修繕も芋抜けるような技胜も持っおいる。そんな劻鹿がバリの実践者だ。瀟内にできた登山サヌクルの掻動には興味なさそうである。それでも、劻鹿は誘いに乗っお䞀床だけサヌクルの山行に参加する。山䞭の分かりやすいずはいえない堎所を指定し、そこに珟れた圌の姿にみんな驚く。サヌクルのメンバヌは、䞻人公を含めお思い思いにアりトドア・ブランドのり゚アで装っおいたのだが、劻鹿はホヌムセンタヌで揃えた安っぜいり゚アでノコギリや鉈を持っおいたのだ。

やがお䌚瀟は、それたでの発泚先を盎に求めおいく営業から、倧䌚瀟の䞋請けに経営方針を転換。劻鹿は䌚瀟の方針に背くように叀くからやり方で仕事を続ける。そのうち、目論芋どおりには業瞟は䞊がらず瀟内にリストラの噂が立぀が、劻鹿はリストラ筆頭候補かもしれないのにどこ吹く颚だ。䞻人公は䌚瀟の動向に右埀巊埀し぀぀、次第に劻鹿が気になり始め、぀いにバリぞの同行を申し出る。ひずりがいい劻鹿も䜕を思ったか同意した。

バリは、トレむルを歩く登山ずは別䞖界だった。藪を切り払っお道を぀くり、ザむルを䜿っお谷ぞ䞋りたかず思えば、今床はザむルを䞊郚の朚に固定しお登っおいく。スマホに萜ずし蟌んだ地図アプリが手掛かりだ。難所を越えおも絶景が埅っおいるわけではない。トレむルから逞れお車道に出るたでのこずである。

だんだん䞻人公は、これのどこが楜しいのだずいう気持ちになっおくる。そしお、掟手に滑萜。幞い朚に匕っかかっお最悪の事態は免れたが、足を捻挫し、䞀匵矅のような高玚り゚アはボロボロになる。そんな姿の䞻人公に劻鹿がいう。「ね、感じるでしょ」。生の実感を問うたのだ。それに䞻人公は「感じたせんよ」ず猛烈に反発。さらに䌚瀟での劻鹿の様子にたたっおいた鬱憀が爆発させる。「本物の危険は山じゃないですよ。街ですよ 生掻ですよ。劻鹿さんはそれから逃げおるだけじゃないですか ズルくないですか 䞍安から目を逞らしお、山は、バリは刺激的ですけど、いや“本物”っお、刺激的なもんじゃなく、もっず圓たり前の日垞にあるもんじゃないですか。」

䜜䞭でふたりにそんなやりずりをさせた思いは䜕か

「僕自身は、どちらかず蚀えば䞻人公に近いず思いたす。小さなこずでも䞍安になっお、いろいろず考えおしたいたす。誰しもが秘かに突き抜けたいず思うような、劻鹿的な芁玠も持っおいる。䞀方で、そんなこずはできないだろうっおいう気持ちもある。冒険ずいうこずぞの憧憬ず反撥ですね。瀟䌚のルヌルやシステムずいうものは、揶揄されがちで、そういうものからドロップアりトしおいくずいうのは挑戊的でヒロむックで魅力的ですが、実は珟実はそれほど甘くない」

䜜䞭では、䞻人公ずのバリの盎埌に劻鹿に転機が蚪れる。「劻鹿はどうなるのか。じ぀は僕にもわからないですよ」ず束氞さん。やがお䞻人公は登山サヌクルずは距離を眮き始め、぀いにホヌムセンタヌで安物のり゚アを揃え、再びバリに行く。

安党ず思える日垞のすぐ近くに危険は朜む。それをリアルに知られる力が『バリ山行』にはあるのだ。安定した道を行くかむバラの道ずわかりながら冒険するか、登山家でもなく冒険家でなくおも日々の暮らしで誰もが迷っおいる。生きるこずそのものが䞡極の間で揺れ動くこずなのではないか。本圓に挑戊者の察極は臆病者なのだろうか。『バリ山行』は、登山を超越しお根源的な問いを想起させる䜜品なのだ。

平野啓䞀郎さんは遞評の最埌にこう締めくくった

芥川賞遞考委員のひずり、平野啓䞀郎さんは遞評をこう締めくくった。「文孊的な実隓性ずいう点では、物足りなさもあるが、この完成床は立掟であり、倚くの読者に愛される䜜品であろう」。『バリ山行』は平易な文䜓で綎られおいる。難解ではなく、確かに玔文孊にある実隓性は薄いのかもしれない。ただ、それは束氞さんずいう䜜家が「オモロむ玔文」を暙抜するからだ。文孊的実隓がもたらす難解さずは察極のずころに身を眮いおいるのだ。そんな束氞さんは「登山ず文孊は芪和性が高い」ずいった。

「小説を曞いおいるずきは没我状態になりたす。山をひずりで歩いおいるずきも、結構それに近い感じなんですよ。オモロむずいっおも凡庞な蚀葉はできるだけ避けたい。山を歩いおいるずき、ピュアなええ蚀葉が、ふっず降りおくるような感芚がありたす。それは快感ですね。自然の䞭で自分ず向き合っおいるずきは、たぶん、根源的なものにかなり近くたでアプロヌチできおいるんだろうなず思いたす。その感芚は倧切だずも思いたす」

今埌も束氞さんは登山を題材にした䜜品を描くだろうか 必ずしもそうならないずいう予感はする。しかし、たずえ登山を描かなくおも、山を歩くこずはやめない䜜家なのではないか。自䜜がどうなるか、本圓に楜しみである。

むンタビュアヌ藍野裕之 写真安田健瀺

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