どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
【オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅vol.5】今回は「素朴な裏道歩き」も!
「絶叫マシン」は好きなんですがあまりスリリングすぎるのも…。そんな人でも絶対に楽しめそうなマシンですよね。「絶叫マシン」というよりは「爽快マシン」。
レールの上を爽快にすべりだした瞬間、思わず「♪ヨ~ロレイヒ~~~」とか叫びたくなるような。ヨーデルできんけど。
これに乗ったら私もハイジちゃんのような満面の笑みを思わず浮かべてしまうでしょう。写真の子の名前、ハイジちゃんか知らんけど。
これが楽しめるのは前回紹介した「ハラインの岩塩坑」から車道を登って2キロメートル。「ゾンマーローデルバーンケルテンブリッツ(Sommerrodelbahn “Keltenblitz”)」という施設です。訳すと「夏のリュージュ列車”ケルトの稲妻”」。
リュージュっていうのは冬季オリンピックとかでよく見る小型のソリ。ボブスレーと違って足がソリから出ているやつですね。
こういう名称になったのはここが本来的にはスキー場で、雪のない夏場だけでこの「ケルトの稲妻」で遊べるからだと思います。ケルトというのは紀元前などにヨーロッパ全土に住んでいたケルト人のこと。
というわけでスキーやスノボのようにリフトに乗って「山頂側」まで行き、そこから「ケルトの稲妻」で颯爽と降りてくるのです。「稲妻」って表現が適当かどうかはさておいて。笑
さて天候はというと…。
雨は一時的に止みましたが、いつまた降りだしてもおかしくない空模様です。でも行きつく先で私のかわいい「ケルトの稲妻」に乗れるんですもの。意気揚々と歩きました。頭の中で「となりのトトロ」の挿入歌「さんぽ」をループ状態にして。
看板が見えました。ヒャッホー! ハイジに再会したペーターのように喜び勇んで霧の中をかけあがりました。…あっ、あれは同じアルプスでもスイスの話か。しかし相変わらずたとえが古くてすみません、すみません。
そしてリフト乗り場にたどりついたのですが…天候以外にもなにやら雲行きが怪しい。
いやいやいや、人が来たら動かすんだろうね。…私のポジティブシンキング脳、別名「能天気ちゃん」はこの期に及んでそんなことを考えてみたり。
あっ、階段の上、建物のところになにやら看板が立てかけられていますね。見てみましょうか。…嫌な予感がして現実逃避のために日本テレビ系「ぶらり途中下車の旅」の小日向文世さん風のナレーションを頭の中で流している私です。
マジか~。つうか「手書き」でなく「印刷された看板」ってなによ! しかもそれなりのレイアウト! 普段から運休させる気満々なのかよっ。っていうかそれだけ天候が不安定なのかもしれません。山の中ですから。
極東ならぬ「極南」のオーストラリアから来た身としては「いやいや、小雨模様だけど雷雨っぽくはないだろ~。このくらいなら雨天決行しろよ~」と猛烈抗議したくなりましたよ。けど裏手のリフト乗り場に回ってみたら…。
まあ運休もやむなしですな。…けどここに来る前に運休の可能性を一考だにしなかった私って。笑
ちなみにですが晴れていたらこのあたりはどんな景色が広がっているのか、ハラインの観光局から画像を借りました。
「怪我の功名」の裏街道
さてさてどうしたものか。…ってもちろんここから撤収するしかないんですが、1時間に1本のバスを待ってスゴスゴと帰るのはあまりにも寂しい。ということでグーグルマップ先生に訊いたところ、裏道的な別ルートでこの話のスタート地点というか「オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅vol.4」で紹介した「ハラインの岩塩抗」まで出られるようです。
はい。転んでもただで起きないタイプです。ところが…。
しばらくは普通の田園風景が続きます。しかも霧模様。頭の中で「あ~あ、素直にバスで帰れば良かった~」という慚愧(ざんぎ)の念がベートーベン交響曲第9番第4楽章中の「歓喜の歌」レベルで大合唱を繰り広げています。
だけどおやおや、途中で右に曲がる小道がありました。行ってみましょう。…はい、ただ下がりだったテンションが少し上がって「ぶらり途中下車の旅」の小日向文世さんが戻ってきました。
その先には。
「異世界への入口」感満載です! 行ってみましょう。
さてさてこの先、どんな事件が待ち受けているのやら。お菓子の家で歓待されるのか、おばあちゃんのフリをしてベッドで私を待ち構えているのか。…あっ、「赤ずきん」はオオカミか。
ところが5分もしないうちにたどりついたのは…。
このまま車道をトボトボ兼スゴスゴと敗走しようかと思ったのですが、なぜかさっきの「けもの道」を戻りたくなりました。そしてもと来た道までたどりつき、そこから下り始めてすぐに出てきたのが、こんな風景!
さらに近づいてみます。
「Wallfahrtskirche Maria Durrnberg」と書かれていたので調べてみたら「デュルンベルクマリア巡礼教会」と意味らしいです。この村の名前がバード・デュルンベルクです。
さて中に入ってみましょう。「おいおい、勝手に入っちゃダメだろう」とツッコミを入れられそうですが、「オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅3」でもお伝えした通り、教会というのはいつでもお祈りできるように出入り自由にしていることが多いのです。そしてドアが開いていれば「お祈り可」の意味。
その大聖堂を出てふりかえると、左横から伸びる細道を発見しました。
幼稚園児のころからしょっちゅう迷子になって親を困らせていた理由はここにあったのかと今更ながら気づきましたよ。笑
歩き始めてわずか2~3分で小高い丘に到着。ちょっとした広場のようになっています。
「屋外礼拝堂」みたいなもの? 晴れている日にここで結婚式を挙げたら素敵でしょうね。
さて小道を教会まで戻り、さらに坂道を下っていきます。
その後「ハライン岩塩坑」の裏手の「ケルト人村」という施設に出ます。
石器時代などのケルト人の小屋などが復元されて、当時の生活がパネルなどで説明されていました。
「ケルトの稲妻」の運休で最初はどうなるかと思いましたが、知られざる小さな村でこんなにも素敵な風景と建物を見つけることができました。「ヨーロッパの底力」みたいなものを思い知らされた午後でした。
きっと日本の小さな村々にもこんな「小さな宝石」が隠されているはず。それを紹介することでインバウンド客を呼ぶこともできるでしょうし、彼らの訪問先が分散することで京都や夏の富士山のようなオーバーツーリズムの問題も解消される気がしました。
旅に出るといろいろなことを考えさせられます。見るだけが旅じゃない。考えるのもまた旅。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
ザルツブルク市観光局
オーストリア政府観光局