冬の間だけ現れる雪と氷の村で氷上温泉体験! | 日本の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2019.03.28

    冬の間だけ現れる雪と氷の村で氷上温泉体験!

    こんにちは、子連れライター渡部郁子です。幼稚園児の息子ハルを連れて、冬の間だけ現れる雪と氷の村「しかりべつ湖コタン」を訪れました。氷上に作られた露天風呂という、なんともワイルドな温泉があるらしいとのことで、冬ですが、水着を持参して、行ってきました北海道。

    しかりべつ湖は漢字で「然別湖」と書きます。標高810m、大雪山国立公園内、北海道の湖としては一番標高の高い場所にあり、冬季は完全に結氷します。湖が凍結する時期は、毎年1月下旬から3月中旬ごろ。この時期の期間限定で、結氷した湖上にイグルーが作られ、氷上露天風呂のほか、アイスロッジ、アイスバーなど、神秘的な氷の世界が登場します。聞くところによると、もうすでに30年の歴史があるイベントなのだそう。

    訪れたのは、春の訪れを感じる2月下旬。とはいえ外気温はマイナス7度。刺さるような冷たさを頬に感じる寒さでした。到着した時間は午後3時過ぎ。日差しはすでに傾きはじめ、日中の温かさはほんの少し残るものの、これからどんどん気温を下げていく気配を漂わせていました。

    雪が大好きなハルは大喜びで、雪と氷の世界をめがけて一直線に走っていき、案の定、つるりと滑ってコントのようなこけっぷりを披露。このときの湖の氷の厚さは、だいたい60cmぐらいとのことで、氷の表面で、風に舞い上がった細かい雪のかけらが、雪煙となって白く渦を巻いていました。

    雪と氷で作られている、見るからに寒そうなイグルーですが、中に入ってしまえば風は防げるので体感的には多少温かく感じます。大きめのイグルーと小さめのイグルーの中を確認したところ、大きなイグルーは、開放感があるものの寒さが厳しく、小さいイグルーは少々狭苦しい印象はありますが一晩過ごすにはこちらのほうが温かいとのこと。そう、この日は雪と氷で作られたイグルーで一晩を過ごす予定でやってきたのです。ドーム型で美しい形のイグルーを選んで荷物を置いたら、冷えた体を温めるため温泉へ。

    アイスロッジ内

    氷上露天風呂へ

    しかりべつ湖コタンの名物でもある「氷上露天風呂」は、湖畔の温泉旅館から直接パイプを引いて、源泉をかけ流しで供給する、正真正銘の温泉です。夕方までは混浴、夜は時間により男性専用、女性専用の時間が設けられています。とはいえ、暗くなってからの入浴は、少々不安。明かりが不十分な脱衣所でハルに着替えさせるのは大変だし、いまよりさらに寒さが厳しくなることを考えると、明るいうちに入ってしまいたい。ということで、ちょうど誰も入浴していない時間だったので、混浴時間に水着を持って脱衣所へ。

    いい湯だな、水着で入浴

    脱衣所は、氷で囲われているので風からは守られているものの、暖房器具があるわけもなく、棚が用意されているだけの簡易的なつくりです。くつを脱いで手際よく服を脱ぎ、水着に着替え、いざ、浴槽へ。外気温の低さから、温泉の泉温が気になったのですが、さすが、ちょうどいい湯加減で、着替えから入浴まで、あまりストレスがありませんでした。

     湯温は40℃前後。冷えた体に最初は少し熱く感じるものの、外気温が低い中で慣れてしまえばむしろぬるめで、体が温まるまで何時間でも浸かっていられる適温でした。泉質は塩化物炭酸水素塩泉。良く温まる温泉で、湯触りはなめらか。肌がつるつるとします。

    まわりの山々の間に、日差しが隠れるように沈んでいく中、温泉の湯気に囲まれて、茶褐色の源泉に身を浸していると、それまでの体の底から襲ってくるような冷えはすっかり消えて、マジックアワーの美しい景色と温泉の快適な温度に、時間のたつのを忘れてしまうような気持ちよさでした。

    全身浴が不安な人は足湯へ

    すっかり温まり、出るときは寒い脱衣所も全く気にならずに着替えることができます。身体は芯からぽかぽかとして、氷点下の世界にいることを忘れてしまうほど。浴室のとなりには、足湯専用の湯船が用意され、こちらは全身用と比べると少し熱めに設定されているようです。寒すぎて服を脱ぐのが難しい場合などは、足湯で体を温めることが可能です。

    本格的に夜のとばりが降りて、暗い湖上にイグルーが明るく光を放ち始めました。氷でできたバーカウンターでキンキンに冷えたアルコールを提供するアイスバーのはじまりです。

    氷でできたグラスに注がれるカクテルは、アルコールだけでなくノンアルコールも用意されています。温かい飲み物もありますが、氷のグラスで提供される飲み物は冷たいものだけなので、次々に訪れるお客さんは、みんな冷たい飲み物をオーダーしていきました。

    このあとアイスロッジに宿泊するので、夕食を湖畔の温泉ホテル「風水」のレストランで済ませてから、寝る前にちょっとアイスバーをのぞく程度にして、体が温かいうちに寝袋に入ってしまおうと思っていたのですが、氷のグラスに注がれる美しい飲み物を見てしまった息子が、「ハルちゃんも何か飲みたい」と言うので、ジンジャーエールをオーダーして、二人でシェアすることにしました。

    アイスバー

    一口飲んで満足してしまったハルの代わりに、結局私がほとんど飲み干すことになり、温まっていたお腹の奥底に、冷たいジンジャーエールが流れ込んでいく冷たさを実感。これがこのあと、面倒なトイレ問題を引き起こすことになるとは気づいていませんでした。

    氷と雪で作られたロッジには、室内灯があり、夜は幻想的な明かりをともします。その明かりは夜10時まで。この明かりのほかには、何もありません。中央にマットレスが敷かれたベッドがあり、そこで寝る準備を進めました。

    アイスロッジ

    シュラフは極寒仕様で、3重構造。インナーフリースに、シュラフ本体、そして防寒のため、防水カバーでシュラフをくるんで使用します。シュラフに入るまでがひと苦労。インナーにくるまってからハルの靴下を脱がせ、ダウンを脱がせ、シュラフとカバーにすっぽりとくるまれて、横に寝かした直後は、「どうしたら寝られるかな」とつぶやいていた息子ですが、ものの10秒で、寝息が聞こえてきました。たくましく育ったものです。

    トイレはホテルを利用

    私も同様にシュラフにくるまれ、横になってうとうとするものの、なかなか足先が温まりません。寝る前にキンキンに冷えたジンジャーエールを飲んでしまったことを思い出して後悔したり、もう一度お風呂に行こうかと悩んだりしているうちに、いつの間にかしばらく眠ったようですが、一度目が覚めると、忘れていた寒さに気づいてしまい、またしばらく眠れない時間が過ぎていきました。

    明け方、何度目かの目覚めで、トイレに行きたくなり、時計を確認したところ、430分。息子はまだ目を覚ます気配がありません。明け方にトイレに行きたくなるなんて、ふだんならまったく起こらないのに、きっとジンジャーエールのせいでしょう。時間がたつにつれて、尿意は気のせいではなく本格的に増していきます。ちなみに、アイスロッジにトイレはありません。トイレに行くには、部屋を出て湖畔のホテルの近くまで歩いていく必要があります。

    私がトイレに行く間、この氷の部屋に息子を置いて行っていいだろうか。普通の部屋なら迷うまでもなく置いていきますが、ここは氷の部屋。置いていかずに連れていくとして、寝ている息子を背負ったままトイレをすますことができるだろうか。そもそも、極寒仕様の寝袋は大きすぎて、息子を寝袋に入れたまま背負うことはできそうもない。さてどうしよう。

    コタンでの夜はかけがえのない思い出

    悶々と悩んだ結果、荷物を置いている湖畔のホテルの部屋に息子を連れていき、そこでトイレを済ますことにしました。5時。眠っている息子を寝袋から出し、靴下をはかせ、ダウンを着せて、靴をはかせて背負い、湖上から湖畔への坂道を登りました。トイレを我慢しながら背中に重い息子を抱えて登る坂道は、ここ数年で一番息が切れました。

    トイレを済ませたのが5時半。もうそこから氷の部屋に戻る気力がなく、荷物を置いている部屋でうとうとしていたところ、6時になり、息子が目を覚ましました。「あれ?氷のお部屋が普通のお部屋になった」と驚く息子に、かくかくしかじか、経緯を説明し、このあとホテルで朝食を済ませてから氷の部屋に戻り、散らばった寝袋を片付けて、朝の露天風呂へ。

    氷に囲まれて寝るという特別な体験も、このお風呂があるから幸せな体験でした。朝も夜も、氷の世界で体が冷えても、芯から温めなおしてくれる特別な温泉です。夕方の景色も最高でしたが、朝の光あふれる露天風呂は格別で、冬の期間限定の村、コタンでの体験は、忘れられない冬の記憶になりました。

    渡部写真 

    渡部郁子(わたなべいくこ)

    アウトドアナビゲーター、温泉ソムリエ。JFNラジオ「JOYFUL LIFE」ほか、山と温泉と音楽をテーマに「人生を豊かにする情報」を様々なメディアで発信中。子どもにやさしい温泉や山、フェス情報など、親子で楽しむアウトドアスタイルを提案しています。

    HPhttp://www.watanabeikuko.jimdo.com/

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