
京都、兵庫、鳥取の3府県にまたがる「山陰海岸ジオパークトレイル」を歩いた人しか見ることのできない景色を厳選して紹介。
目でも耳でも足裏でも。地形の変化を楽しめるジオパーク
かつて日本列島はアジア大陸の一部だった。長い年月をかけて少しずつ大陸から離れ、日本海ができた。そんな地球の鼓動ともいえる多彩な海岸地形、地層や岩石を間近に観察できるところが、京都、兵庫、鳥取の3府県にまたがる山陰海岸ジオパークである。
この海岸線に230㎞の歩き道が延びている。ビーパルでもたびたび取り上げてきた山陰海岸ジオパークトレイルだ。松葉がにが水揚げされる漁港から灯台が立つ岬へ登り、砂浜へと下りてまた登る……アップダウンが多いなかなかハードな山道。そんなトレイル上に歩いてしか行けない砂の楽園が点在する。
その代表が鳥取砂丘だ。中国山地の花崗岩などが砂となり、千代川によって海へと運ばれ、波や風によって集められたもの。その最高地点はなんと標高70m! 足裏をくすぐる十万年の砂の旅に思いを馳せる。
その鳥取砂丘から東へしばらく歩くと、複雑な入り江に多くの小島が浮かぶ。鴨ヶ磯の砂は粒が大きくてキラキラ光る。岬を回り込むと、今度は玉石が転がるゴロタ浜に。
砂を洗う波音の「ササー」が、岩礁の間で「ザブン」に変わる。たった十数㎞で、足元の地質がコロコロ変わった。目でも耳でも足裏でも、地形の変化を楽しめるジオパーク、それが山陰海岸だ。
ロングトレイルの神も絶賛した山陰海岸ジオパークトレイルとは?
京都、兵庫、鳥取の3府県にまたがって日本海沿岸に延びる総距離230kmのトレイル。コース1から27までセクションが細かく設定され、日帰りで楽しめる歩き道だ。2016年には米国のロングトレイルカルチャーの草分け的存在であるレイ・ジャーディン(下の写真の人物)が来日し、「世界に誇れるロングトレイルだ」と絶賛したことでも知られる。


徒歩か海上からしか行けない砂浜は、ダイナミックな岩壁が連続する鳥取県の東部に多い。5つを繋いで歩くもよし、車や自転車でホッピングするもよし。
1 山陰海岸国立公園のシンボル
鳥取砂丘(馬の背)

別天地!
視界が360度開けて日本海を見下ろせる鳥取砂丘はトレイルのハイライト。標高約47mの「馬の背」からは日本海や隠岐諸島、百名山の大山が見渡せる。眺望だけでなく、風紋や砂柱といった砂と風がつくりだす芸術作品も一見の価値あり。
併設された鳥取砂丘ビジターセンターで成り立ちや生きものなどを学び、閉館17時とともに砂丘へゆっくり向かい、水平線へ太陽が沈む日没前後に馬の背到着がおすすめの行程だ。夏は熱中症の恐れが高まるので、太陽が傾いている朝夕の行動を心がけよう。

2 トレイルをはずれたプライベート白浜
熊井浜

ビーパル取材班は何度も訪れたことがあるが、真夏以外は誰とも会ったことがないまさにプライベートビーチ! 国道178号線の羽尾坂駐車場から5分ほど歩きトレイルをまたいだ先に広がる。真っ白な砂の粒はきめ細かく、ソフトな感触と静かな潮風がゴロ寝を誘う。

3 鳥取水遊びの聖地
小鴨ヶ磯

波に洗われる岩礁の間にポツンと漂う白砂のビーチ。海水の透明度が高く、生き物が集まる入り江なので、観光船やカヤックツアーも立ち寄る人気スポットだ。県道155号の鴨ヶ磯展望駐車場から高低差約55mを下った岸壁に挟まれた地形が、より社会との隔絶感を生む。
4 白浜の曲線美がナイス
大鴨ヶ磯

大粒の石英砂が水晶のように輝き、肌にまとわりつかずにサラッと気持ちいい海水浴にもってこいの砂浜。強風や荒波を遮る入り江には、野鳥や魚などの生きものたちが集まってきて、まさにパラダイス。この大小ふたつと、その間にある椿谷の3つを総称して「鴨ヶ磯」と呼ぶ。

左:大鴨ヶ磯
5 柱状節理が彩る海岸線
城原海岸(しらわらかいがん)

連続する岩礁(写真上)や大粒の砂が輝く砂浜(写真下)、波で洗われた円石の磯浜。この3つを狭いエリアで一度に味わえる県内屈指の観光名所だ。トイレを併設した城原展望駐車場から眺めるエメラルドグリーンの海と、そこに浮かぶ菜種五島の景観は息を呑む美しさ。

日本海の成り立ちを学べる
山陰海岸ジオパーク 海と大地の自然館
住所:鳥取県岩美郡岩美町牧谷1794-4
電話:0857(73)1445
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日に振替休館)

山陰海岸ジオパークの魅力をさまざまな資料や映像、生きものから学ぶことができる県立の展示施設。砂や生きものを間近に観察することができ、ジオパークの根幹ともいえる日本海形成の成り立ちをわかりやすく解説してくれる。トレイルに精通するスタッフが常駐するマスト立ち寄りスポット。入館料は無料。

マリンアクティビティーならおかませ
岩美町立 渚交流館
住所:鳥取県岩美郡岩美町牧谷690-20
電話:0857(73)0118
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日に振替休館)

鳥取県岩美町の浦富海岸エリアをベースにシーカヤック、サーフィン、SUP、ダイビング、マンタフライヤー(写真下)などのマリンアクティビティーを安全に、誰もが楽しめる自然体験施設。視点や立ち位置を変えて、海上や海中から山陰海岸を眺めてみると、また新たな発見が待っているかも!?

山陰海岸ジオパークトレイル情報はこちらから
https://sanin-geo.jp/play/geotrail/
※構成/森山伸也 撮影/小倉雄一郎 地図/MORISON
(BE-PAL 2025年6月号より)
人気のジオパークもたくさん紹介している『BE-PAL6月号』絶賛発売中!

※一部地域では発売日が異なります。
※電子版には特別付録が付きません。