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カリフォルニア観光局主催FAM(現地視察)ツアー参加記の第4弾です。それまでは山岳地帯を通り、レッドウッド国立・州立公園を後にした私たちはついに海に出ました。
港町のユーリカから太平洋岸を南下し、フォート・ブラグ、メンドシーノ、ボデガ・ベイといった海沿いの町に立ち寄りつつ、出発地点であったサンフランシスコを目指しました。とくにユーリカからメンドシーノにかけての海岸は、一般にNorth Coast(北海岸)と呼ばれ、独特の景観で知られています。
カリフォルニアというと、ロサンゼルスやサンディエゴのような明るいビーチを思い浮かべる人が多いかもしれません。青い空と白い砂浜とパームツリーの世界です。しかし、同じカリフォルニアの海でも、北海岸はそれとはかなり雰囲気が違います。
ここでは砂浜よりも、断崖と岩礁が目立ちます。海風によって曲がった松、岩に砕ける波、ギザギザに入り組んだ磯。そんな風景が続きます。
どことなく、日本の海岸と雰囲気が似ているような気もします。それもサザンオールスターズやTubeが歌うビーチではなく、BGMには『津軽海峡冬景色』とか『みちのくひとり旅』とかが似合いそうな雰囲気です。
むろんしょうもない私見です。たとえが古すぎて分からない?どうもすみません。もう少し我慢して下を読み続けていただけると、私の言わんとするところが伝わるかと思います。
真夏でも涼しい海

私たちが北カリフォルニアを旅したのは8月中旬という夏の盛りでした。それにもかかわらず、北海岸では上着が必要になるくらいの涼しい日が続きました。
「私が過ごした最も寒い冬は、サンフランシスコで過ごした夏だった」という有名なジョークがあります。マーク・トウェインの言葉であるという説があり、そうではないという説もありますが、夏にサンフランシスコを訪れたことがある人はこの言葉に頷くでしょう。ところが、北海岸の町はそのサンフランシスコよりもさらに涼しいのです。
具体的な数字をアメリカ国立気象局(NWS)で調べてみますと、8月の平均最高気温(1991~2020年)はユーリカが約17.8℃、サンフランシスコが約20℃です。
理由のひとつは海水温の低さです。カリフォルニア沖を流れる寒流の影響で、北海岸の海水は真夏でもかなり冷たいのです。その海から吹いてくる風が沿岸を冷やしてくれるのですね。まさに天然のクーラーです。
同じ緯度でも少し内陸に入ると暑くなります。そちらに住む人が週末になると海岸沿いまで「避暑」にやってくる、ということです。
そのせいでしようか、北海岸にはいわゆる「海水浴場」という感じの場所は多くありません。もちろんゼロではありませんが、南カリフォルニアのように、夏になると大勢の人が水着で海に入るという光景は少ないようです。サーフボードを抱えた人も見ませんでした。その代わりなのか、シーカヤックやSUPは人気のようでした。

海岸を歩いていても、「服を脱ぎ捨てて海に飛び込みたい」という気分にはあまりならず、むしろ「海風が冷たいから重ね着をしよう」と思うかもしれません。私はランナーですので、ここでも毎日走っていましたが、長袖のTシャツも汗だくになることはありませんでした。ウィンドブレーカーを着込んだ朝もありました。
夏の好みは人それぞれですが、暑さが苦手な人にとってはこの涼しさは大きな魅力ではないでしょうか。私は大好きな北海道東部を旅している気分になりました。根室や羅臼はこんな感じだったな、と思い出していたのです。
暑い夏と人込みを避け、涼しい風を受けながら海を眺めてゆっくり歩く。北海岸はそんな夏の過ごし方ができる土地です。しかも、冬になってもあまり寒くはならず、雪はめったに降らないそうです。夏は涼しく、冬は暖かい。そんな恵まれた気候の土地もあるのですね。
小さな町をつなぐ海岸線
海岸沿いにあるいくつかの町もそれぞれ印象的でした。
この地域最大の都市がユーリカです。といっても、サンフランシスコやロサンゼルスと比べれば、ずっと小さな町です。

古くから漁業と林業を主要産業として発展した歴史があり、街を歩くと古いヴィクトリア様式の建物が残っています。ちょうど私たちが宿泊した夏の金曜の夜は、港近くのダウンタウンでNight Market(夜市)が行われ、とてもにぎやかでした。
港は現在も漁港として使われていて、観光地であると同時に生活の場でもあります。
そこから南へ向かうとフォート・ブラグ、さらにメンドシーノへ。
フォート・ブラグは私のなかではもっとも美しい海の眺めをもつ町でした。断崖の上にトレイルがあり、海を眺めながら歩けます。海岸線は複雑に入り組み、ところどころに岸壁に囲まれたプライベートビーチのような砂浜があります。
「ここはぼくだけの秘密の入り江にしよう」なんて思ったときもありましたが、次から次へとそんな場所が現れるので、まったく秘密でも何でもないのでした。

メンドシーノは断崖の上に建つ、小さな、しかしとても裕福に見える町でした。ダウンタウンはおしゃれで小さいお店が並び、住宅地には個性的なデザインの木造住宅が目立ちました。

さらに南へと下ると、ワインで有名なソノマ郡に入ります。厳密にはもう北海岸ではなく、ソノマ・コーストと呼ばれます。ここまで来ると、サンフランシスコもすぐ近くです。
海沿いの町、ボデガ・ベイでは、広い湿原の向こうに海があります。ゆったりとした雰囲気のリゾートですが、近くには有名な建物があります。アルフレッド・ヒッチコック監督の名画『The Birds』の舞台になった家です。あの灰色に煙る海と丘陵が広がる風景を覚えている人は、まさにあの通りだったよとお伝えしておきます。ただ、あれほどたくさんの鳥が飛んでいなかっただけです。

クジラが見える町
上に紹介した町は、どれもそれぞれに個性的でしたが、どこか共通した落ち着きがありました。観光客向けの店が並んでいる地域もあるのですが、リゾート地特有のにぎやかさはありません。海と森と町が、ほどよい距離感で共存しているように感じます。
そしてもうひとつ、北海岸には今回私たちが見ることができなかった、大きな楽しみがあります。それはホエールウォッチングです。といっても、ボートに乗るのではなく、陸からクジラが見えるらしいのです。
冬の終わりから春にかけては北へ向かうクジラ、そして秋から冬にかけては南へ向かうクジラが、この海岸沖を通っていきます。地元の人によれば、そのどちらの時期も毎日のようにクジラを肉眼で見ることができるそうです。まことに残念なことに、8月はそのどちらにもあたりませんので、自分の目で確かめることはできませんでした。
それでなくても美しい海岸線を歩いていると、遠くの海面から突然、白い水しぶきが上がる。そんな瞬間を毎日期待できる日常を想像できるでしょうか。

新たなアウトドア活動「Foraging」とは
ソノマ郡ではとくに印象に残った体験がもうひとつありました。
地元の観光局が用意してくれた「Foraging Tour」です。
Foragingという言葉を私はそれまで知りませんでした。日本語にすると、「食物採集」といったところでしょうか。山菜採りやキノコ狩りに近い部分もありますが、それよりも広い意味で使われています。
野生の植物や果実、キノコ、海藻、貝類など、自然の中にある食べられるものを探し、見つけ、種類を識別し、安全を確認したうえで採取する。そして場合によっては、その場で食べてみる。つまり、自然を「見る」だけではなく、「探して、触って、採って、食べる」というアウトドア活動です。
私たちはまず森を歩き、そして海岸まで足を伸ばしました。案内してくれたガイドさんは博識でした。森の植物を実によく知っているようでした。森の中には実にさまざまな果実、豆、キノコなどがありますが、これは食べられるもの、これは食べられないもの、とひとつひとつ説明してくれました。おかげで美味しいベリー類などを安心して口にすることができました。
食べられるのだろうか。どうやって食べるのだろうか。そういう目で植物を見ると、同じ森でも違った風景に見えてきます。海の生き物についても同じですね。今まで体験したことがなかったタイプのアウトドア活動でした。いつものようにマイペースで旅をしていたら、きっと知らずに通り過ぎていたでしょう。

旅先では、そこにあるものを眺めるだけでも十分楽しいものです。でも、少し立ち止まって「これは何だろう」と考えてみると、同じ風景が違って見えてくることがあります。今回の北カリフォルニアの海岸では、断崖の向こうに広がる太平洋だけでなく、その足元にある食べられるものまで教えてもらいました。
次にこの海岸を訪れることがあれば、クジラを探しながら、今度は足元にも少し注意して歩いてみようと思います。
カリフォルニア観光局ウェブサイト内北海岸案内ページ:
https://www.visitcalifornia.com/region/north-coast/





