ユーコンでソト遊び暮らしを実現! 7年の軌跡 第10回
Allyは問題なし! ギアも揃った! 財布の中身だけがピンチだ

8月に予定している415km・ユーコン川ソロカヌー旅に向けて少しずつ準備を始めています。昨年はカヌーも含めほとんどが友人からの借り物でした。しかし今年は折りたたみカヌー「Ally」(アリー)を手に入れたこともあって、その他のギアも揃えたくなってしまいました。ライフジャケット、ロープ、カヌーバレル、スロウバッグ、車載キットなど、いくらでも思いついてしまいます。気がつけば足繁くホームセンターや中古アウトドアショップに通うようになり、まだ人生2回目の川旅のくせにそこそこ装備が揃ってきてしまいました。そんななか、アパートの家賃やクレジットカードの支払日がやってきました。
「やばい、お金なくなる」
ただでさえAllyの購入に1000ドルという予定外の出費があったのに、それに加えてギアを買い揃えていったため、私の銀行口座は悲鳴をあげ始めていました。仕方がない、無いものは作るしかない。私が向かったのは森でした。
森の恵みをお金に変える。スプルースティップ採集の巻

6月中旬、スプルースティップ(トウヒの新芽)が旬を迎えていました。スプルースとは、クリスマスツリーのような形をした、ユーコンならどこででも見られる針葉樹です。初夏になると、枝の先にブラシのような形をした黄緑色の柔らかい新芽を付けます。かじってみると鼻に抜けるような清涼感があり、ユーコンの先住民はスープなどに入れて食べることもあるそう。地元産のポップコーンやビールのフレーバーとして人気があります。
また、アロマショップではエッセンシャルオイルやハーブティーへの加工も行われていて、私は去年から収穫したものを買い取ってもらっています。今年もそうして、カヌーとギアによる出費を補おうという算段です。5月のポプラの新芽に続いて、植物採集のスタートです。
収穫、納品、そしてうれしすぎる誤算

収穫に関しては、できるだけ新鮮な状態での納品が求められるため、1日か2日の間にできるだけ長い時間を費やして収穫するという作戦を取ります。仕事の合間を縫って、1日2時間から5時間ほどを森で費やします。スプルースティップの採集は簡単なので作業自体は楽ですが、ひとつひとつは非常に軽いため大量に集める必要があります。
面白いのは、隣り合う木同士であっても新芽の出方にそれぞれ差があるということ。この木の新芽はこんなに育っているのに、隣のはまだ小さい。そんなことがよくあります。きっとわずかな日当たりの差や土の中での根の張り方などが影響しているのでしょう。結局、2日間で計7時間作業し約12kg取れました。
「1kgあたり20カナダドルで買い取ってくれるから、240ドルか。悪くないな」
るんるん気分でアロマショップへ向かい、納品しました。「まぁ、こんなにたくさん!」とお店のおばちゃんたちを大喜びさせることに成功しました。検品、計量、そして小切手に書かれた金額は300ドルを超えていました。「なんで!?」なんと今年からキロ単価が25ドルに上がっていたのです。
「よっしゃ! あと3回ぐらい繰り返したらカヌーとギア代全部取り返せるな」
スプルースティップ受付終了のお知らせと次なる収穫

数日後、さらに収穫した約12kgのスプルースティップと共に意気揚々とアロマショップを訪れた私は、予想外の言葉を聞くことになります。「今シーズンのスプルースはこれで十分だわ」
(えっっ!)次の収穫の予定も立て始めていた矢先での言葉に驚きました。
「去年と同じように、次はプリックリー・ローズの花びらをお願いできる?」
プリックリー・ローズとは北海道のハマナスによく似たバラ科の野草です。キロ単価90ドルと相当高いですが、なんせ花びらです。どれだけ集めてもいっこうに段ボールがいっぱいにならず、昨年は大変苦労した私の苦手種目です。でもお金は稼がないと。しかもお願いしてもらっていてむげに断ることもできない。私は昨年から当たりをつけていた森に入りました。
ローズの収穫は修行!

苦手種目ではありますが、いちハーベスターとしてやらないわけにはいきません。しかし、取っても取っても段ボールの重さにいっこうに変化は見られないのです。おまけにこの花の採集には重要なルールがひとつあります。花弁に花びら一枚でも残しておくということです。そうすることでハチなどの虫による受粉を助け、秋にはさらにローズヒップが採集できるようになるのです。
しかし数枚を残すように花びらを掴み取るというのはコツがいります。そして背の低い植物なので、中腰のような姿勢で延々収穫していきます。これに関しては本当に修行だなと毎年思いますが、そもそも植物は新芽を付けたり、花を咲かせることにその生命のすべてを賭けるわけですよね。そのことをたまに思い出しつつ、感謝の気持ちで採集させてもらいます。3日間でトータル5時間、1.5kgほど取ることができました。
「まぁ、いい香り!」
今回もアロマショップのおばちゃんたちは大歓迎してくれました。140ドルほどの小切手を手にお店を後にしました。結局、スプルースティップとプリックリー・ローズで700ドル以上稼ぐことができました。カヌーとギア代を補填するにはまだ少し足りません。でも、今年も森に入って何時間も一人黙々と植物に触れられた。より一層、ユーコンの森を知ることができた。その経験こそが一番の報酬だったと思います。




