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富士山頂写真家 植田めぐみさん
静岡県生まれ。大のキノコ好き。2010年〜’14年の5年間富士山頂の山小屋で働きながら富士山を撮影。以降、夏山シーズンの2か月間、山頂の浅間大社奥宮に勤務。

Q1 富士登山山小屋が必要な理由は?
A 山小屋はただ泊まるためだけにあらず!
富士登山の場合、登りだけでも片道6時間以上かかる。しかも、山頂の酸素は平地の3分の2といわれているので、体を徐々に高度に順応させていく必要がある。山小屋泊を選択すると、体力の消耗が激しい登りを2日に分けることで、無理なく登ることができる。そのため、初心者はとくに山小屋泊がおすすめ(いまは山小屋を予約していないと、14時以降は登山許可がおりない)。
「それに加え、富士山は天気が変わりやすいうえ、五合目を過ぎると木などの遮蔽物がなくなり、座って休憩できるところもなかなかありません。距離的には短いのですが、ものすごく体力を使う山なので、山小屋は休憩所という役目と、雷や突然の荒天時の避難所という役目も兼ねています。また、公衆トイレは五合目と山頂付近にありますが、それ以外はなく、山小屋がその役目も担っています。宿泊者は無料のところもありますが、有料チップ制で基本は¥200〜300です」

Q2 山小屋に持っていくといいものってありますか?
A 山小屋で快適に過ごすためのギア5
⃝防寒着
7〜8月でも頂上のご来光時間は2〜4度Cと想像以上に寒い。山小屋には暖房もないので、インナーダウンやニット帽、ネックウォーマーなどを準備。

⃝ライト
夜中にトイレに行く際や荷物を探す時なども、部屋の電気は点けられないので、館内移動用に必須。

⃝モバイルバッテリー
山小屋はすべて発電機なので、モバイル機器の充電は不可。気温が低くバッテリーの保ちも悪くなるので予備バッテリーも用意しよう。最近は火災が多いので、防炎パックに入れて携行するのがおすすめ。

⃝耳栓
山小屋は基本大部屋での相部屋。寝るスペースはひとり幅90㎝ぐらい(コロナ以前よりは広くなった)。隣の人との距離が近いので、いびきなどの騒音対策にあるといい。アイマスクもあると便利。

⃝寝袋のインナーシーツ
布団や寝袋はあるが、大勢の人が使っているので、1枚あると衛生的に安心。保温性もアップする。

Q3 富士山独自のルールってある?
A 高度によって営業時間が異なります
「富士山の山小屋は上に行けば行くほど閉める時間が早く、消灯時間も早い。何合目まで行くか、高さによって出発時間も到着時間もずれてくるので、自分が何時に出て何時に到着したいか、そのとき山小屋は開いているかは確認が必要。仕事をして昼からゆっくり登りたい人は下のほうの山小屋に泊まり、朝から登る人なら上の山小屋を目指す。14時に出発すると上に着くのは21時ぐらい。それだと山小屋はすべて閉まっているので、注意が必要です。また、雨でびしょ濡れになった際、山小屋が何とかしてくれる、と思われている方もいるようですが、山小屋には乾燥室はないし、濡れた服を干すスペースもありません。すべて自己管理なので、とくに雨対策は先手必勝。周りを観察して、雨具を早めに着るなどの対策を」

Q4 山小屋の夕食ってどんなもの?
A ほとんどが定番のカレーです
「カレーといっても、レトルトだったり手作りだったり、それは山小屋によって異なります。最近だとビーガンの方やムスリム(イスラム教を信仰する人)の方もいらっしゃるので、対応した料理が選べる山小屋もあったりします。山小屋を選ぶときに、"夕飯は何ですか?"と聞いてみるのも楽しいですよ。ほかに宿泊者ではなくても食べられるように、手作りラーメンやカップラーメン、豚汁などを売っているところもあります。須走口の五〜六合目の下のほうの山小屋ではキノコ料理が食べられたり、富士宮口なら富士宮焼きそばを出していたり。山と味の濃いものは相性が良いので、格別に美味しい! 荒天で登山できなかったときなどは、富士山ごはんを楽しむのもいいですよ」

Q5 山小屋で売っているものって何ですか?
A その山小屋独自のものが結構あります
水やお湯が購入できるが、運搬費が高いので、500mlペットボトルが¥500、お菓子は¥300前後。山小屋はほとんど雨水利用なので水が貴重。そのため洗面所やシャワーなどはなく、登山者は必要なら、ペットボトルの水で歯を磨く。
「その山小屋の焼き印が入ったアンパンや、スイカ、バナナを売っているところもありました。各山小屋では金剛杖に焼き印(¥300〜500程度)を押してもらうことができます。スタンプラリーをしてコレクションしてみるのもいいですね」

Q6 山小屋選びのコツは?
A まずはホームページをチェック!
「HPがしっかりしているところはおすすめです。HPが新しかったり、更新していたり、情報がたくさん載っていたり。英語対応しているところもあるので、そういうところはお客さんファーストな気がしますし、安心です。富士山の山小屋は毎年、5〜6月ごろから予約受け付けがはじまります。7月に入ると、山小屋の予約はほぼ埋まってしまいますが、結構、直前になるとキャンセルが出ることが多いので、キャンセル待ちしたり、直前に電話するなど、根気よく山小屋のHPをチェックしてみてください」
山小屋は1泊素泊まりの場合、料金相場は¥8,000〜12,000、1泊1食付き¥9,000〜12,000、1泊2食付き¥10,000〜15,000。人気の登山ルート、八合目付近は料金が上がる傾向がある。

Q7 山小屋の宿泊以外の楽しみ方ってある?
A 山小屋を目標物にして登山しましょう
「山小屋は五合目から頂上まで点在し、初心者に人気の吉田ルートだけでも18軒あります。各山小屋の名物がそれぞれあるので、山小屋を目標物にして富士登山するのも面白い。頂上だけが富士山ではないので、今日は七合目の山小屋メシを食べに行こうとか、六合目からの景色を見てみようとか、道中を楽しんでほしいです。初心者や子供でも登れますか? という質問をよく受けますが、登山のゴールは家に帰り着くこと。気負わず、今回は七合目まで登れたから来年は八合目まで行ってみよう、今年は4回目だからご来光見てみたいねと、次の目標を立てるといいと思います。せっかく日本一の山に来たんだから、一気に駆け登るのではなく、いろいろな富士山を楽しんでほしいです」

※構成/大石裕美 写真/植田めぐみ イラスト/nicciman
(BE-PAL 2026年8月号より)




