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2026.07.17

二百年以上の歴史を持つ「田村酒造場」が日本酒の魅力を伝える新施設「&KASEN」をオープン

二百年以上の歴史を持つ「田村酒造場」が日本酒の魅力を伝える新施設「&KASEN」をオープン
日本酒は、季節やお料理に合わせて冷酒や熱燗など、違った飲み方を楽しめます。お花見やお月見といった古来のアウトドアイベントにも登場しますよね。そんな日本酒を「丁寧に造って、丁寧に売る。」という精神を守りながら、酒造りを行なっている「田村酒造場」が、日本酒の文化や物語を「丁寧に伝える。」発信地として、2026年7月1日『&KASEN』をオープンしました。一体、どのような施設なのか、日本酒好きの筆者がプレスツアーに参加してきました。
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文政五年から酒造りを行なう「田村酒造場」が新施設をオープンしたわけとは

田村酒造場 十六代目当主の田村半十郎さん。

「田村酒造場」は、文政五年(1822年)から福生の地で酒造りを行なっています。代表酒名の「嘉泉(かせん)」は、酒造りに最適な「嘉(よ)き水」に由来するそうで、二百年以上にわたり、丁寧な酒造りにこだわっている酒蔵です。米どころではないことから、日本酒のイメージがなかった筆者ですが、奥多摩の良質な水により、江戸時代から酒造りが盛んな地域です。そんな「田村酒造場」が、なぜ今、ショップやレストラン、バーを併設する「&KASEN」をオープンすることになったのか、十六代目の田村半十郎さんにお話をうかがいました。

「二百年余りで、日本酒をとりまく環境が大きく変化しました。今は、文化や物語を伝える新たなフェーズに入ったと感じています。人と人の出会い。発見との出会いの場になるよう『&』でつないで、『嘉泉』とともにという思いを込めて、施設名を『&KASEN』と名付けました。ここでしか飲めない限定の日本酒もあります。」(田村酒造場代表の田村半十郎さん)

伝統を守りながら未来を見据えた新たな取り組みなんですね。

「&KASEN」見学とペアリング体験

田村酒造場のお酒のラインアップのほか、ペアリングしたいおつまみや、グラスも並ぶショップ。

オープンしたばかりの「&KASEN」には、レストラン&バー、ショップ、ガーデンの3エリアで構成されています。まず、見学したのが、日本酒文化を日常に取り入れることの楽しさを提案するショップです。嘉泉をはじめとする日本酒の種類も豊富で、試飲してから選ぶことができるコーナーもありました。300mLという小さいサイズのボトルもあり、初めての味にトライしやすい工夫がありました。

ここでしか購入できない「&KASEN やわくち」の特徴について説明する田村さん。

店舗限定の「&KASEN やわくち」は、日本酒が苦手という人にも飲みやすいように仕上げられた日本酒です。アルコール度数も低めに設計するなど、日本酒は強いお酒だからと敬遠していた人にもおすすめ。日本酒だけでなく、ペアリング提案として、パティスリー「MAISON GIVREE」のオーナーシェフ江森宏之さんが手掛ける田村酒造場の酒造りから生まれるジェラートやチーズケーキのほか、「燻製BALPAL」の燻製やチーズ、おつまみの専門店「ホタルノヒカリ」の珍味も並んでいました。新たなペアリングも提案してくれ、お土産にもぴったり。見ているだけで、いろいろ試してみたくなりました。

長徳寺を借景にした庭園は四季折々で違った景色が楽しめます。

敷地内の庭園は、多摩川の流れをモチーフに、中洲にはイネ科の植物を配することで、日本酒に必要なお米への敬意を示しているとのこと。奥にある長徳寺が借景になり、ゆったりとした空間が広がっていました。

木村硝子店のグラスで飲む日本酒。(左)日本酒のオリジナルカクテルはバンビグラスで。「&KASEN やわくち」は、香りグラスで。

レストラン&バーエリアで、楽しみにしていたランチペアリングコースをいただきました。日本酒は、おちょこでいただくことが多いですが、ここでは、木村硝子店とのコラボのグラスで、まるでワインのようなスタイルでいただきました。木村硝子店のグラスは、うすはりでお酒がおいしくなると常々感じていたので、なんだかうれしくなりました。しかも、「東京和醸ソニック」というバーテンダーの大野尚人さん考案の日本酒オリジナルカクテル。日本酒を炭酸で割るとすっきりするだけでなく、低アルコールになるため、飲みやすくなるのだそう。筆者が訪れた日は、蒸し暑かったこともあり、最初の1杯として、とてもおいしかったです。日本酒をカクテルにするなんて、すてきなアイデアですね。仕込み水のお出汁で作った季節野菜のすり流しとのペアリングでした。

海老ハトシとグリーンサラダには、「&KASEN やわくち」とペアリング。最初から低アルコールで醸造するという珍しい醸造方法で造られた日本酒です。醸造の過程で氷を入れ温度を下げて発酵を緩やかにするなど、試行錯誤があったそうです。日本酒は、醸造後の原酒に水を加えてアルコール度数などを調整しますが、こちらは、最初から低アルコールに仕上げることにこだわって造られています。一般的なアルコール度数が15度の中、こちらは11度程度。日本酒が当たり前のように身近にあった筆者にとっては、アルコール度数をあまり気にしたことがありませんでしたが、この違いが大きいらしい。

純米吟醸 嘉泉は、バンビグラスでいただきます。窓が大きいレストランのため、お庭にいるような開放感がありました。

旬魚のアクアパッツァにペアリングしたのは、「純米吟醸 嘉泉」です。ここでようやく日本酒らしい日本酒が登場したという印象でした。精米歩合55%で、お米由来の甘さがあり、余韻のある日本酒でした。

ペアリングのお料理は、使用していなかった蔵の奥から出てきたという百年以上前の器で提供されます。

アクアパッツァというとイタリアンをイメージしますが、和のテイストで仕込み水と嘉泉で煮込まれているので、とても相性がよかったです。

お酒の仕込みに使用される「嘉き水」を使用した土鍋ごはん。

季節の土鍋ごはんは、穴子と万願寺とうがらし、実山椒、仕込み水で炊き上げられ、ここは、日本酒ではなく、仕込み水である嘉き水とともにいただきました。万願寺とうがらしが、食感を楽しませてくれました。

この酒粕チーズケーキを買うために訪れたいと思うおいしさでした。

デザートは、酒粕チーズケーキと「&KASEN 貴醸酒」のペアリング。こちらは、甘さと酸味のバランスがよく、デザートワインのイメージでした。酒粕チーズケーキが、想像以上においしくて、ゆっくり食べたかったのですが、プレスツアーが通常より時間が短いダイジェストバージョンだったため、急ぎで食べたのがちょっぴり心残りです。

酒蔵見学へ

酒蔵の入り口には杉玉が飾られています。

今回は、新たな施設だけでなく、希望者は、酒蔵見学ミニツアーにも参加できました。田村酒造場では、以前は、酒蔵内は女人禁制でしたが、現当主のお姉さまが、結婚するときに、「蔵に一度も入ったことがない」と話したことがきっかけで、女性の蔵入りが解禁されたそうです。今では、女性の蔵人もいらっしゃるとのことで、筆者も蔵の中を見学できました。

釜場には、新旧の釜が。写真の右下にあるのが以前使用されていたものです。

入ってすぐのエリアは、お米を蒸す釜場です。真ん中の釜が現役ですが、右奥には、昔の釜も残されていました。

2013年に登録有形文化財として正式に登録された煙突。

反対側にある煙突は、登録有形文化財に指定されています。レンガの長い面と短い面が交互に見えるフランス積みが採用されていました。

神棚の奥、醸造エリアへと進みます。

さらに、奥へと進むと、「ここからが女性が入ることができなかったエリアです。」と説明を受け、麹室や酵母タンクを拝見。この時期は、お酒造りは行なわれていないため静かでしたが、麹室では、三日三晩寝ずに作業が続けられるといいます。醸造は、さすがに木桶ではありませんでしたが、限りなく昔ながらの酒造りを行なっていることがわかる酒蔵内でした。
今回の見学ツアーは、ダイジェスト版ということで、ここまでで終了と言われましたが、「お酒を絞るのは、今もアコーディオンの蛇腹みたいな感じですか。」と質問してみたところ、「そうですね。じゃあ、ちょっとだけ見てみますか?」と、さらに一歩、奥も拝見できました。

昔ながら圧搾で板粕と日本酒に分けられます。

圧搾して、手前の蛇口からできたての日本酒が出てきて、蛇腹の間には酒粕が残ります。板状の酒粕になることから、板粕と呼びますが、「七輪で焼いて食べるとおいしいですよ。」と、案内してくれたスタッフさん。筆者の実家では、火鉢に網をのせ、その上で板粕を焼き、黒砂糖を挟んで食べるというのが冬のおやつの定番でした。これって、キャンプでも楽しめますね。体も温まりますし。

なごり惜しく酒蔵の出口付近にいると、幸運にも杜氏の高橋雅幸さんにお目にかかれました。

酒蔵が稼働するのは、酒米の収穫が終わる9月からのため、今の時期は、蔵人にも会えないと思っていたら、杜氏の高橋雅幸さんがいらっしゃいました。撮影をお願いしたところ、快く応じてくださいました。高橋さんは、1999年から杜氏を務め、伝統の技を受け継ぐのはもちろん、時代に合わせた日本酒造りも行なっています。

実際の酒蔵見学ツアーは、見学と飲み比べがセットの1時間半の工程のため、もっとじっくり見学できます。酒蔵の、ちょっとひんやりした特有の感覚や、お酒が造られる工程をみることで、日本酒の味わい方も違ってくるかもしれません。

米どころではない都内で、こんなにおいしい日本酒が造られていることを、今回、初めて知りました。見学と飲み比べがセットになっているため、クルマでは向かえませんが、JR福生駅から徒歩13分。十分歩くことができます。お気に入りの日本酒を見つけて、次のキャンプに持っていくのもよさそう。新酒ができる11月ごろなら、板粕も手に入れて、おやつとしてだけでなく、お料理に使うのもおすすめです。

田村酒造場
https://www.tamurashuzojo.com/

著者画像

林ゆりさん

ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。

関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育ち、MYLOHASに創刊から携わる。LOHASを実践しながら、食べ物、コスメ、ファッションなど、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてWeb媒体やブログで発信中。日本化粧品検定1級。

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