マイナス30度の世界を体感!ユーコンの極寒のなかで見つけた自然の美 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.04.05

マイナス30度の世界を体感!ユーコンの極寒のなかで見つけた自然の美

マイナス30度の世界を体感!ユーコンの極寒のなかで見つけた自然の美
世界中のソト遊び好きを魅了してやまないカナダ・ユーコン。アウトドア初心者家族が北緯60度で迎えた初めての本格的な冬。寒さと雪に対抗する服装選びに関しては、試行錯誤の末、少しずつわかってきました。しかし長い冬の中で、さらに気温の下がる寒波が到来。マイナス30度の世界と、その向こう側に見つけたユーコンの冬の美しさを紹介します。

ユーコンでソト遊び暮らしを実現! 7年の軌跡 第3回

マイナス30度の寒波がやってきた!

マイナス20度を下回ったあたりから、肌の露出は危険。ネックウォーマーやフェイスウォーマーで可能な限り覆うが、呼気が氷となって張り付く。

ユーコンで過ごす初めての冬、クリスマスも近づく頃。寒い寒いといえども、マイナス10度や20度ぐらいの気温にはなんとなく慣れてきました。防寒装備の選択を間違えなければ外で長時間過ごすこともできるように。

「自分たちは順調に適応できている」

そう思ったのも束の間、北国初心者の甘い認識を打ち砕く寒波がやってきました。マイナス30度という言葉、関西で育った人には耳馴染みがあるかもしれません。そう、大阪府吹田市にかつてあった遊園地、エキスポランドのアトラクション。その名も“マイナス30度の世界 アイスワールド”です。キンキンに冷やされた館内、シロクマやペンギンが一堂に会するステレオタイプな極寒の世界。展示の中を自分のペースで歩いていくタイプのものでした。子どもの頃の私は、物珍しさもあってこのアトラクションが好きで、濡らしたハンカチを持って入ってはカチカチに凍る様子を楽しんでいました。

そしてそこから約30年後、ユーコンに移住した私。天気予報にマイナス30度の文字が踊り始めると「エキスポランドで経験済み、余裕」と、台風が来る前のような、ちょっとワクワクした気持ちになったのでした。

アトラクションとは大違い

国際犬ぞりレース「ユーコンクエスト」のスタート地点開設ボランティアに参加したものの、慣れないマイナス30度の寒さを前にほとんど役に立てず……。

しかし当然、アトラクションにおいて自分のペースで好きなだけマイナス30度を体感するのと、避けられないものとして大自然から突きつけられるのとではまったく意味が違いました。朝起きると、窓にはびっしりと分厚い氷が張っている。結露として窓にできる水滴が、外気に冷やされて凍ってしまうのです。外を歩けば自分の呼吸でまつ毛が凍り、露出している部分は凍傷になりかける。やっとの思いで自宅に戻り、入り口のドアハンドルを素手で触ろうものなら、氷結した金属部分で火傷してしまいます。

クルマも暖機が必要となり、出発の10分以上前からエンジンをかける。窓やサイドミラーにびっちりと張った氷を、スクレイパーで丁寧に剥ぎ落とす。ここで横着すると、後の運転で視界不良に陥ります。10分ほどの暖気で、エンジン周りはある程度暖まったとしても、車内はまだ寒い。マイナス30度下にあったクルマのハンドルは、当然ながらマイナス30度に冷やされているのです。2003年式の古いクルマの車内は、どんなに暖房を上げてもなかなか温度が上がらない。凍える手で冷たいハンドルを操作し、目的地が近づいた頃にようやく生暖かい空気が出始める。

遊園地のアトラクションなんかではない、リアルなマイナス30度の世界は、一歩間違えれば命を奪いかねない、過酷な世界でした。

手袋選びはその日の気温、用途に合わせて

現在使っている手袋コレクション。左下の電熱グローブ以外はすべて現地で購入。家族全員が手袋を始めニット帽やネックウォーマーなど複数の防寒装備を持っており、玄関周りは大混雑。

前回お話ししたように、足元はソレルのカリブーとモンベルのアルパインソックスで、ユーコンの寒さにもなんとか対応できました。ただ手袋に関してはなかなか最適解が見つけられず……。日本から持っていった軍モノの革手袋は早々にリタイア、オシャレですが防寒装備としてはまったく役に立ちませんでした。同じく日本から参戦の電熱グローブ、こちらもマイナス20度以下だと効果を感じにくくなってしまい、スタメン落ち。

急遽現地のホームセンターで購入したWoodsやKOMBIといったブランドのものは安価ながら防寒能力に優れています。指が分かれている普通のタイプ、ミトンタイプなどいろいろ試してみました。薄いインナー手袋と分厚いものとの重ね着なども挑戦してみましたが、指先が動かしにくくて却下。結局その日の気温や運転の有無などで最適なものを判断し、必要とあれば複数の手袋を持ってでかけることもあります。

太陽のありがたみを実感

現地ローカルたちによる屋外カーリング大会の様子。真冬でも日が出ている限り野外活動を楽しむ彼らは、まさに北国の人。かっこいい。

寒さ、雪とともにこのユーコンの冬を特徴づけるのが、日照時間の短さです。秋頃から日の短さを意識するようになり、11月には朝家を出るときも夕方帰ってくるときも真っ暗。冬至の頃になると、昼前になってようやく登り出した陽が、上りきることなく15時頃沈み始めます。学校での休み時間、真っ暗な校庭で遊ぶ子どもたち。犬の散歩をする人はヘッドライトが手放せません。そんな中で暮らしていると、太陽の光という存在をものすごく貴重なものに感じるようになりました。

「あっ、今日いい天気」と気づくと、多少寒くてもわざわざ外に出て陽に当たりに行くように。実際にはせいぜい1分か2分の日光浴ですが、まぶしさに目を細めて浴びる太陽の光は、厳しいユーコンの冬を乗り切る原動力になります。事実、体がそれを必要としているのでしょう。普通なら日光浴によって体内で自然と生成されるはずのビタミン群。それを補うためのサプリメントも充実していて、特に子ども用のものなどはグミやアメといった形としても販売されています。

生まれて初めて幻日を見た

正面の太陽の両サイドに見える虹のような光が幻日。よりコンディションが良いと、太陽を中心に360度取り囲むように輪ができるそう。うーん、それも見たい。
 

冬のよく晴れた日には、太陽はまた別のサプライズを私たちに仕掛けます。幻日(げんじつ)という現象です。私が初めてそれを見たのは、こちらに来て初めの冬。

(朝から太陽の周りに虹のような物が見える。きっとコンタクトレンズのノリが悪いのだろう)

と意味不明の解釈をしていました。でも、どうやら他の人たちにも見えるらしい。カメラを構えている人もいます。調べてみると、空気中の氷の結晶に日光が当たり、光の屈折によって太陽の左右に光が見える現象とのこと。こちらでは「サンドッグ」(Sun Dog)といい、お店や商品の名前に使われるほど親しまれている現象のようです。

「今日サンドッグきれいだったね」と家族や友達との話題に上がることもしばしば。それぞれの場所で過ごしていても、みんな空を眺めていたんだなと実感できます。ユーコンの空、特に冬の空にはオーロラが有名ですが、昼にもそれに匹敵する美しい太陽からの贈り物があります。観光で訪れる際には、是非とも昼間にも空を見上げていただきたいです。

楽ではないけどユーコンの冬は最高!

降り積もった雪により、高さが2分の1ほどになってしまった校庭のサッカーゴール。ちなみに子どもたちの学校での休み時間の外遊びは、マイナス30度で中止。屋内遊び限定に。

何とか、私たち家族はユーコンでの初めての冬を乗り越えました。想像していた以上に厳しい寒さと雪上での暮らし。どんな状況であろうと学校も仕事も遊びも通常運転する、北国の人々の強さとたくましさを知りました。しかし同時に、想像していた以上の冬の美しさを発見することもできました。夜のうちに積もった雪が、暗い朝に街灯に照らされている。まだ人にもクルマにも踏まれていない真っ白な雪。やがてそこにゆっくりと太陽が上がり、すべてをオレンジとピンクとの中間の色に染めていく。そして空気中の氷の結晶が作り出す幻日……。

ユーコンの冬は最高です!

すけのゆうたさん

ライター

カナダ・ユーコン準州ホワイトホース在住。大阪府豊中市出身。アウトドア初心者ながら、大自然と日常が地続きのユーコンで暮らす。ポッドキャスト「すけのゆうたのYou来ん!?ユーコン」も配信中。

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