30分散歩するだけでも感じられる「上野のお山」の奥深さ【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.33】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

アウトドア・外遊び

2026.03.24

30分散歩するだけでも感じられる「上野のお山」の奥深さ【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.33】

30分散歩するだけでも感じられる「上野のお山」の奥深さ【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.33】
プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

今回は東京都台東区にある上野恩賜公園をめぐる「上野のお山GREEN WAY」です。
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33rd ルート:上野のお山GREEN WAY

●前回はこちら

東京のシンボルのふもとを歩いて感じた増上寺の広さ【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.32】

山形に暮らしている僕は、上京するとたいてい上野近辺の宿に泊まります。ただし、上京中は都内各所を忙しく動き回っていて、あまり上野を散策する余裕がありません。なので、灯台下暗しというか、上野恩賜公園、いわゆる上野のお山について詳しく知らなかったりします。

あらためて地図を広げてみると、上野恩賜公園周辺は緑も多いし、駅からのアクセスもいいし、散策に最適な場所です。そこに心地良さそうな道があるなら歩くのはプロハイカーの宿命。いや、そんな大げさなことではないですが、せっかくなら歩いてみようと思った次第です。

ということで、今回は上野恩賜公園を中心に楽しむ「上野のお山GREEN WAY」です。

今回は、公園にアクセスしやすい、JR上野駅の公園口をターミナス(=トレイルの起点や終点となるアクセスポイント)に設定しました。この日は日曜、しかも好天で、ものすごい人出です。

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ターミナスのJR上野駅の公園口。すごい人出です。

人波に押し出されるようにして、公園の外周伝いに上野公園通りを歩いていきます。人混みでざわざわしてはいますが、公園沿いに街路樹が続いていて良い雰囲気です。

上野恩賜公園

1625年(寛永2年)、徳川幕府は江戸城の鬼門にあたる上野の台地に東叡山寛永寺(とうえいざんかんえいじ)を建立します。当時は、現在の公園一帯が寛永寺の敷地だったそうです。

1868年(慶応4)から翌年にかけての戊辰戦争で上野は焼け野原となり、その後、医療学校や病院の建設が計画されます。しかし、現地を視察したオランダ人医師のアントニウス・フランシスクス・ボードウィンが、明治政府に上野に公園を整備することを提言。その結果、1873年(明治6年)に上野のお山に日本初の公園が誕生したのでした。

なお、もともと寛永寺の境内地でしたが、明治維新後は官有地になり、宮内省(当時)の管轄を経て1924年(大正13年)に東京市に下賜されました。なので、天皇から賜ることを意味する「恩賜」の語が、公園の正式名称に入っているのです。

オランダ人医師が意見しなかったら、上野は今とは全く異なる雰囲気だったのかもしれないのか…。などと考えながら上野公園通りを進んでいくと、何やら物々しいミサイルのようなものが視界に入ってきました。もったいぶらずに答えを記すと、国立科学博物園に屋外展示されている「ラムダロケット用ランチャー」です。

ラムダロケット用ランチャー

ミサイルのようなオブジェは、ロケット・ランチャー(発射台)と人工衛星「おおすみ」の模型。1970(昭和45)年、日本で初めて人工衛星の打ち上げに成功しますが、その際に使用されたものだそうです。

SF映画のセットみたいだなと思ってしまいましたが、由緒ある展示品だったんですね。でも、そんな貴重なものを風雨にさらされた状態に置いていて問題ないのでしょうか…。

パッと見はSF映画のセットのような雰囲気のラムダロケット用ランチャー。

ラムダロケット用ランチャーからさらに進んでいくと、正面に寛永寺開山堂が見えてきました。上野恩賜公園の歴史に関する説明の中で、かつては一帯が寛永寺だったと先述しました。実は現在でも、徳川歴代将軍御霊廟、輪王殿、釈迦堂、旧寛永寺五重塔、上野大仏、清水観音堂、時鐘堂、不忍池辨天堂といった寛永寺の関連施設や末寺が、上野恩賜公園周辺に点在しています。

重要文化財なども多数ありますし、寛永寺開山堂の敷地内には幸田露伴旧宅の門も移築されています。寛永寺の境内をめぐるだけでも丸1日は優にかかるほど見どころ盛りだくさんなので、興味のある方は足を運んでみてください。僕の目的は寺院めぐりではなくGREEN WAY散策なので、先に進みます。

寛永寺から公園内に歩を進めると、噴水広場があります。その周囲にある背の高い並木に陽の光があたり、完璧といっても過言ではない「公園の光景」が広がっています。この木々の生い茂るエリアの近くに、2つの銅像があります。

ひとつは、先にふれた上野に公園が整備されるきっかけをつくってくれたオランダ人医師のアントニウス・フランシスクス・ボードウィンの像。銅像の銘板では「ボードワン博士像」となっています。

この像、最初は間違って弟さんの写真をもとに制作され、その後で誤りに気づいてつくり直されたそうです。そんなことが実際にあるなんて…。ともかく、上野に公園があるのは博士のおかげなので、像に深々と頭を下げました。

ボードワン博士像。感謝!

もう一つの銅像は、野口英世です。ただ、ざっと調べてみましたが、野口英世と上野の関係は不明でした。

この連載でも過去に何度か紹介していますが、公園などに縁もゆかりもない人の銅像や記念碑が建っていることがあります。この野口英世像も何かしらの大人の事情で、上野恩賜公園に建てられているのかもしれません。もし野口英世が上野の何かにしっかり関係していたら、深くお詫びいたしますが…。

なかなか立派な野口英世像。

噴水広場の周辺には、銅像だけでなく、彫刻作品もいくつか点在しています。公園に隣接して東京藝術大学がありますが、その卒業・修了制作で東京都知事賞を受賞した作品を野外展示している「芸術の散歩道」という場所だそうです。木漏れ日の中で目にする彫刻、いい感じです。

芸術の散歩道。作品は毎年入れ替わるそうです。

芸術の散歩道から東京都美術館の裏手を通り抜け、上野動物園の入口前を過ぎると、上野東照宮があります。以前、BE-PAL.netで都内の低山を紹介する連載をしていたときに、上野にある2つの山を訪れたことがありました。

上野公園に鎮座するスリ鉢と大仏の山とは?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.15】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

その際にも上野東照宮の前を通りましたが、今回初めて境内にお邪魔しました。

諸国の大名から奉納されたという50基もの灯籠が並んでいる上野東照宮の参道。

上野東照宮の近くには、五條天神社もあります。この神社はもともと擂鉢(すりばち)山に鎮座していましたが、大正時代に現在地に遷座したそうです。

さらに、五條天神社のすぐ近くには、朱色の鳥居が連なる花園稲荷神社があります。五條天神社も花園稲荷神社もパワースポットとして人気らしいです。ふだんは不信心ですが、出会い頭でパワースポットに行き合うと、やっぱりあやかりたくなります。いろいろ良いことがありますように!

花園稲荷神社。

花園稲荷神社のすぐそばには、不忍池が広がっています。池の出島のような不忍池辨天堂まで進むと、さらに視界が開けます。

辨天堂は、歌川広重の「江都(江戸)名所」に描かれています。しかも、複数の作品があるのですが、そのうちの一つでは辨天堂の参道入り口が描かれていて、そこには大きな黒い鳥居があります。

でも、現在はそうした鳥居はありません。ただし、現在も参道入り口には何かの跡のようなものが残されています。これは歌川広重が描いた鳥居の跡なのでしょうか…?

辨天堂の参道入り口の鳥居跡…?(赤い丸で囲んだ部分です)

検索すれば、簡単に「正解」が分かるのかもしれません。でも、散策がてら妄想を膨らませている時間が何より楽しいのです。なので、正解を教えていただかなくて結構です。

不忍池のほとりには、いくつかベンチが置かれています。ここは、僕のお気に入りスポットのひとつです。

お気に入りスポットの不忍池のほとり。

ひとりベンチに座って池を眺める中年男性は、客観的に見ると寂しそうだったり怪しそうだったりするのかもしれません。でも、上京した際の忙しい合間、ぼーっと池を眺めている時間が、僕には何物にも代えがたい大切なひとときなのです。もし知人の方が不忍池のそばで僕を見かけても、そっとしておいてください…。

不忍池を眺めながら、静かにGREEN WAY散策を終えたいと思います。今回めぐった範囲はせいぜい徒歩30分弱圏内ですが、さすがは上野のお山、いろいろと見応えや歩き応えがありました。しかも、紹介できなかった場所もまだまだあります。ぜひ、のんびり歩きながら自分なりの「上野のお山GREEN WAY」を描いてみてください。

■今回歩いたルートのデータ
|距離約2.1km
|累積標高差約20m

今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

●上野のお山GREEN-WAY

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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