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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第9回:高雄
台南でののんびりした滞在を終えた僕は、再び在来線に乗って、台南から南に50キロほど離れた場所にある街、高雄に移動しました。ここには5年前の旅でも滞在したことがあり、主な観光スポットは回り終えていたので、2泊だけするつもりで宿を取りました。
高雄は、台湾で最大規模の港である高雄港を擁する港湾都市。この地にあった先住民の村、ターカウ(打狗)が次第に発展していったのが始まりで、日本統治時代に入ってから、名称が高雄(たかお)へと変更されたそうです。現在は高雄港を中心に、台湾における貿易や工業の中心地の一つとして繁栄しています。

高雄の街の中心部にある、美麗島(メイリーダオ、フォルモサ・ブールバード)駅。2本の地下鉄が交差する乗り継ぎ駅で、広い構内には飲食店などもたくさんあります。2008年に完成したこの駅は、直径30メートルもの鮮やかなステンドグラス作品があることで有名です。イタリアの芸術家、ナルシサス・クアグリアータ氏が4年の歳月をかけてドイツで制作した作品を、はるばる高雄まで輸送してきたのだとか。今では高雄を象徴する映えスポットの一つとなっています。

今回の旅では、美麗島駅のすぐそばの安ホテルに泊まることにしました。この場所に宿を取ると、おいしいごはん屋さんや夜市が近くにあって、地下鉄の駅も目の前なので、何かと便利なのです。
お目当ての食堂のひとつ、大圓環雞肉飯(ダーユエンフエンジーロウファン)でおひるごはん。ほぼオープンエアのこの食堂はいつも大入満員で、ほとんどの人が、雞肉飯(ジーロウファン)と蛤仔鶏湯(ハマージータン)の組み合わせを注文しています。ふっくら柔らかい鶏肉には少し滷肉(ルーロウ、甘辛く煮た豚肉)が載っていて、混ぜて食べるとちょうどいい感じ。そして、蛤仔鶏湯の澄み切ったスープには、手羽元とハマグリのうまみがたっぷり沁み出ていて、まさに絶品。前回の旅でもいただいて、あまりのおいしさにびっくりしたのですが、また食べられてよかったです。

美麗島駅から地下鉄に乗り、鹽埕埔(イェンチェンプー)駅に移動。このあたりは、かつては塩の生産が行われていたそうで、その後は高雄港の工事で浚渫された土砂で埋め立てられて新市街となり、商業の中心地として発展しました。1980年代以降に街の中心が東部に移るまでは、とてもにぎやかな区域だったそうです。
今回、僕が訪ねてみたいと思ったのは、新楽街(シンラージエ)という商店街。ここには、繁栄していた頃を偲ばせる、レトロな佇まいの建物や看板が、今もたくさん残っているのです。実際に通りに立ってみると、100年前にタイムスリップしたかのような錯覚に陥るほどの、壮観な眺め。写真の撮りがいのある場所です。

新楽街に残る商店のレトロな看板には、「銀樓」という表記を数多く見かけます。銀樓(インロウ)とは貴金属店のことで、新楽街はこうした貴金属店が集まる通りとして栄えていたそうです。店の多くは、今もまだまだ現役、という雰囲気でした。

新楽街から南の方に歩いていくと、高雄港のある海沿いに出ます。港の近くには、鉄道の敷地や倉庫の跡地を再利用する形で設けられた、駁二藝術特區(ボーアルイーシュートゥーチュー)と呼ばれる区画があります。倉庫の建物はリノベーションされ、ギャラリーやショップ、カフェなどとして活用。外壁をダイナミックにペイントした倉庫や、写真のような巨大でカラフルなオブジェがいくつも置かれていて、高雄の現代アートスポットとして人気を集めています。

駁二藝術特區と対岸との間には、2020年夏にできた新しい橋、高雄港大港橋(カオシュンガンダーガンチアオ)があります。完成した形でこの橋を見るのは、僕も初めてです。台湾で初めて造られた水平旋回橋だそうで、毎日15時には、実際に旋回する様子を見物できます。白い水鳥を思わせる優雅な佇まいで、こういう存在が、実際に街のインフラとしても機能しているのはすごいことだな、と感心しました。
六合国際観光夜市で、新鮮な海の幸を味わう

高雄港の付近から、近くに宿がある美麗島駅まで地下鉄で戻ってくると、ぼちぼち日が沈む頃。宿の部屋で少し休憩してから、晩ごはんを食べに、歩いてすぐの場所にある六合国際観光夜市(リュウホークオジークワングアンイエシー)へ。広々とした通りが、数百メートルほどの長さで続いていて、左右にはびっしりと屋台が軒を連ねています。高雄の街の夜市の中でも特に人気のスポットだそうです。

前に来た時、この夜市で食べた、海鮮のたっぷり入ったおかゆがおいしかったんだよな……とぼんやり思い出して、その屋台はどこにあったっけ……ときょろきょろしながら歩いていると、ありました。通りの西の端に近いところに、人だかりのできている屋台が。3人の男性がちゃきちゃき仕切りながら動いているところに声をかけて注文し、近くの路上に並べられていたテーブル席に座って、少し待ちます。

運ばれてきたおかゆには、エビ、牡蠣、イカ、魚の切り身などがたっぷり。れんげですくって口に含むと、魚介の滋味がふわぁと広がります。なんと優しい味……タライいっぱい食べたい……(笑)。昼に食べた雞肉飯と蛤仔鶏湯もそうでしたが、コロナ禍などの困難な時期を経ても、以前の旅で味わったのと同じ料理を、こうしてまたいただくことができるのは、ありがたいことだなあ、としみじみ感じました。

台湾で製造されているビールのうち、日本でも酒屋などにたくさん出回っていて、よく知られているのは、台湾啤酒(タイワンピージョウ、台湾ビール)ですよね。日本統治時代の20世紀初頭に創業したこの会社のビールは、南国生まれのビールらしい、すっきり爽やかな飲み口が特徴で、もっともポピュラーな金牌台湾啤酒のほか、マンゴーやライチ、パイナップルなどの果汁によるフレーバーをつけたビールも人気のようです。
そういった台湾ビールのラインナップのうち、台湾以外ではまず出回っていない、賞味期限が18日間しかないビールがあることを、みなさんご存じでしょうか。それが、ONLY 18 DAYS(18天台湾生啤酒)。高温殺菌処理がされていない生ビールで、賞味期限があまりに短いため、基本的に台湾国内の一部の店でしか入手できないそうです。味わいは、通常の台湾啤酒よりもさらに軽く爽やかで、苦味が控えめな分、フルーティーさが増している印象です。
今回の旅の中で、このONLY 18 DAYSに比較的よく出会えたのは、大きな街にあるセブンイレブン。同じセブンイレブンでも、置いてある店とない店があって、あったはずだけれど売り切れていたり、ということもありました。六合国際観光夜市の通り沿いにあった2軒のセブンイレブンのうち、1軒には缶入りのONLY 18 DAYSの在庫があったので、この日はほくほくしながら買って宿に持ち帰り、部屋でぷしゅっと開栓して、一人、ゆっくりと堪能しました。





