パタゴニアの私有地でハイキングもすごかった! 山遊び王国チリの旅レポート完結編 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.12.27

    パタゴニアの私有地でハイキングもすごかった! 山遊び王国チリの旅レポート完結編

    パタゴニアの私有地でハイキングもすごかった! 山遊び王国チリの旅レポート完結編
    前回の「トレス・デル・パイネ国立公園」の絶景ハイクの翌日。同じChile Nativoという現地ツアー会社のガイドと参加者ともに向かったのは「ルペストレ(Rupestre)牧場」という私有地にあるトレッキングコースです。

    はい、みなさんも思いますよね? 「せっかく国立公園があるのになんでわざわざ私有地?」と。そんな疑問を胸に抱きながら参加したら……ガイドたちがわざわざ私有地に連れてこようとした理由がよ~くわかりました!

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
    Text

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!山遊び王国チリ・パタゴニア旅・その3】

    前回はこちら↓

    昔はけもの道だった!? 絶景のパタゴニア「トレス・デル・パイネ国立公園」ハイク! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

    あれこれ凝縮された最高のコースです!

    お伝えしたように前日のハイキングが最高でした。で、同じエリアで国立公園じゃなくて私有地。ちょっと格落ちの二番煎じを味わわされるような気分になりながらも、現地でトイレを済ませて10時半出発。

    一周7キロですが標準所要時間は4時間。それなりにアップダウンがありそうですね。
    まあ、天気がいいのはせめてもの救いです。

    さてトレッキングルートはまず登りです。そして5分後にたどりついたのが……。

    遠くに雪山を臨むこんな場所。ここを歩いていくんです!

    出発前に「なんでわざわざ私有地?」とか「格落ちの二番煎じ」とか頭の中で悪態をついた自分に、グーパンチしたくなりましたよ。

    雪を被った山々の手前に見えるのはフィヨルド。

    はい、「氷河でつくられた入江」ですね。

    林の中に入るとこんな看板も。

    このトレッキングルートで見られるラン(蘭)を解説した説明ボード。昨日のトレス・デル・パイネ国立公園ではまったくと言っていいほど説明ボードがなかったですが、さすがは私有地コースです! ……はい、見事すぎる掌返しです。笑

    林を抜けるとまたこんな風景。一生歩いていたい。そんな気分になってきました。

    説明があるからガイドとのハイクは楽しい

    出発から20分後、岩がひさし状になっている場所に到着。

    砂岩や礫岩などの地層がはっきり見えますね。

    ここでガイドによる解説タイムです。地層の話もおもしろかったのですが……。

    先住民たちはこんな感じで石に紐をつけて遠くまで投げられるようにして、野生動物の狩りをしていたとのこと。

    ちなみにこのあたりでは「ミロドン」という動物が棲息していたのですが、1万2千年前から1万年前に絶滅したそうです。

    ナマケモノ属ですが体長は3~4メートル、体重は1~2トンと巨大なもの。その大きさなので当然現在のナマケモノのように木の上でダラダラなどはできません。そしてその姿は今のヒグマなどに似ていたようです。

    で、このミロドンの好物の一つがアボカド。それを食べて、あちこちに移動してその種を大便とともに排出したから、中南米各所でアボカドが採れるようになったらしいです。

    そのミロドン発見の話もユニークです。牧場で飼っていたヒツジがいなくなって飼い主たちが探しに行きました。そしてたぶんその鳴き声に導かれて、洞窟に避難していたヒツジを見つけました。そのとき見たことがない動物の毛皮も発見して、のちにそれが1万年以上前に生息していた動物だとわかったのだそうです。

    絶景を満喫するだけでなく、こうしたその土地にまつわる話を聞けるのもガイドと歩く楽しみですね。

    懐かしいアレに再会!

    出発の50分後の11時20分、景色は一転して森の中を進みます。

    橋があるとテンションが上がります!

    ちなみにこれ、木の橋ではなく「リサイクルしたプラスティック」で作られているとのこと。これも素晴らしいプラスティックのリサイクル方法ですね。耐用年数も木の橋よりずっと長いでしょうし。

    そして懐かしいものに出会いました。

    フィンランドでも見た「オールドマンズベア」という(おじいさんのひげ)」という名の地衣類です。この記事ですね。森の騎士兼賢者のヨエル、元気かな?

    「空気がきれいなところでしか見つからない」という説明はフィンランドのガイドのヨエルと同じでしたが、今回は「抗生物質みたいな力があって、先住民たちはこんな風に傷口に巻いて絆創膏代わりにしていた。密閉するのではなく酸素も行き来できるからいい」という話も教えてくれました。

    実演してくれました。

    また「タバコみたいにして火をつけて吸ったりもした」とのこと。

    ちなみに英語では「usnea(アスニア)」と呼ばれ、日本語では「サルオガセ」というらしいです。

    林を抜けてちょっと開けたところへ。本当に風景がどんどん変わります。
    ここで見られる鳥を紹介した説明ボードも。このあたりの気遣い、さすがは私有地コースです。笑

    断崖絶壁の見晴らし台へ!

    出発の1時間15分後、11時45分に断崖絶壁の上の見晴らし台に到着。ここでランチ休憩です。

    眺望はいいですが朝に比べて雲が増えてきました。天気は下り坂かな?
    霧のときなんてこの柵がなかったら危ないでしょうね。
    というのはこんな断崖絶壁だから……。

    さて眼下に見えるのは「ソフィア湖」です。夏には湖畔のビーチがこのあたりの人たちの憩いの場になるのだとか。とはいえ水は冷たいので泳ぐことはほとんどなく、カヤックをしたり湖畔でバーベキューをしたりという楽しみ方です。

    確かに北緯45度の稚内よりずっと緯度が高い南緯51度ですからね。「所変われば品変わる」です。

    12時10分、25分の休憩を終了して歩き始めます。
    しばらくは白い峰々を眺めながらの下りですが、さらに曇ってきました。朝の青空が恋しい。

    本当にパタゴニアの天気は変わりやすいです。気温も変わりやすく「一日に四季がある」ってやつですね。

    でもとても素晴らしい風景の数々です。ちなみにこのあたりにはここのような私有地のトレッキングコースがたくさんあるとのこと。

    下りも楽しみ&事件が満載!

    赤い花。名前を聞くのを忘れました。汗
    この「せり出した岩の向こうに雪山」という景色もたまりません。

    葛飾北斎の『冨嶽三十六景』の中でもたぶん最も有名な「神奈川沖浪裏」(画面左側から渦巻く波涛が遠くの富士山に降りかかるように見える絵)の構図になんとなく似ていると思いませんか。

    先住民が描いたという壁画がある場所に到着しました。

    柵を作っているのは羊たちが入らないようにするためだとか。
    ひさし状なので雨水は避けられますが、それでも風にはさらされるので風化していますね。
    あとは静かに下るだけでしょうか。

    楽しかったトレッキングもフィナーレに近づく寂しさを感じていると……。

    右肘やお尻あたりについている泥が見えるでしょうか。

    トレッキングルートだけでなくあたり一面水がたまっているところがあって、なんとか歩ける場所を探して灌木の下をかがみながら進んだのですが、背中のデイパックが枝に引っかかって見事にこけました。ただ怪我はなかったし、これもまた旅です。

    そして参加者の一人であるアメリカ人のジャッキーがこのトレッキングのあとすぐに空港に向かうことになっていたのですが……。「転んだのがこのあと飛行機に乗るジャッキーじゃなくて良かったね~」と私の口から恐ろしくジェントルマンな発言が飛び出しました。旅先ではジェントルマンに憑依される私です。

    するとジャッキーから返ってきたのは憧れの君をウルウルと見つめるまなざし……ではなく、「確かに~。泥がついたひどい匂いで飛行機に乗らなくて済むしね~」

    「……ねえ、今の僕ってそんなにひどい匂い?」

    それでみんなで爆笑です。笑いのたくさんある旅は楽しいです。

    さらに……。

    ロープを使って下る難所。

    このトレッキング、静かに「フィナーレ」に向かうつもりなんてまったくないようで、ますます盛り上がっていきます。素晴らしいエンターテイナー! 一時帰国時のホームコースの一つである丹沢表尾根縦走の「大倉尾根(通称「バカ尾根」)くん」に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいです。笑

    画面左に滝が見えます。
    足元がびしょびしょ&ぐちゃぐちゃになっていて、置かれた木々を頼りに歩くようなところも出現。

    これはこれで楽しいです。転ばなければ。笑。

    出発から3時間20分後の13時40分にゴール。前日の「トレス・デル・パイネ国立公園」のコースも素晴らしかったですが、今回のコースも最高でした。

    その日のお宿も最高!

    さてその日泊まった「ホテルコスタオストラリス(Hotel Costa Australis)」もおすすめです!

    居心地のいい部屋の窓からは……。
    内海の向こうには雪を冠る山並みです!
    翌朝の青空もなかなかでした。
    夕飯は3コースのディナーだったのですが、特にこのビーフのタルタルが絶品。

    牛肉なのですが魚介類のマリネ「セビーチェ」のようにお酢が効いていて、想像を超えたおいしさでした。ああ、その手があったか~とビックリ!

    ウォーターフロントにありながら裏手は街の中心部で、買い物などにも便利という最高の立地。次に来るときもここに泊まりたいな。と、後ろ髪を引かれる思いでパタゴニアを去ります。アディオス!

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    Chile Nativo (今回のハイキングツアー催行会社)
    https://chilenativo.travel/

    CHILE TRAVEL(チリ政府観光局の旅行者用サイト)
    https://www.chile.travel/en/

    ATTA (ADVENTURE TRAVEL TRADE ASSOCIATION。アトベンチャートラベルに関する世界的な業界団体。今回のイベントを主催)
    https://www.adventuretravel.biz

    Hotel Costa Australis(この日泊まったホテル)
    https://www.hotelcostaustralis.com/en

    柳沢有紀夫さん

    オーストラリア在住ライター (海外書き人クラブ)

    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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