はい、みなさんも思いますよね? 「せっかく国立公園があるのになんでわざわざ私有地?」と。そんな疑問を胸に抱きながら参加したら……ガイドたちがわざわざ私有地に連れてこようとした理由がよ~くわかりました!
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
- Text
【柳沢有紀夫の世界は愉快!山遊び王国チリ・パタゴニア旅・その3】
CONTENTS
前回はこちら↓
あれこれ凝縮された最高のコースです!
お伝えしたように前日のハイキングが最高でした。で、同じエリアで国立公園じゃなくて私有地。ちょっと格落ちの二番煎じを味わわされるような気分になりながらも、現地でトイレを済ませて10時半出発。


さてトレッキングルートはまず登りです。そして5分後にたどりついたのが……。

出発前に「なんでわざわざ私有地?」とか「格落ちの二番煎じ」とか頭の中で悪態をついた自分に、グーパンチしたくなりましたよ。

はい、「氷河でつくられた入江」ですね。

このトレッキングルートで見られるラン(蘭)を解説した説明ボード。昨日のトレス・デル・パイネ国立公園ではまったくと言っていいほど説明ボードがなかったですが、さすがは私有地コースです! ……はい、見事すぎる掌返しです。笑

説明があるからガイドとのハイクは楽しい
出発から20分後、岩がひさし状になっている場所に到着。

ここでガイドによる解説タイムです。地層の話もおもしろかったのですが……。

ちなみにこのあたりでは「ミロドン」という動物が棲息していたのですが、1万2千年前から1万年前に絶滅したそうです。
ナマケモノ属ですが体長は3~4メートル、体重は1~2トンと巨大なもの。その大きさなので当然現在のナマケモノのように木の上でダラダラなどはできません。そしてその姿は今のヒグマなどに似ていたようです。
で、このミロドンの好物の一つがアボカド。それを食べて、あちこちに移動してその種を大便とともに排出したから、中南米各所でアボカドが採れるようになったらしいです。
そのミロドン発見の話もユニークです。牧場で飼っていたヒツジがいなくなって飼い主たちが探しに行きました。そしてたぶんその鳴き声に導かれて、洞窟に避難していたヒツジを見つけました。そのとき見たことがない動物の毛皮も発見して、のちにそれが1万年以上前に生息していた動物だとわかったのだそうです。
絶景を満喫するだけでなく、こうしたその土地にまつわる話を聞けるのもガイドと歩く楽しみですね。
懐かしいアレに再会!
出発の50分後の11時20分、景色は一転して森の中を進みます。

ちなみにこれ、木の橋ではなく「リサイクルしたプラスティック」で作られているとのこと。これも素晴らしいプラスティックのリサイクル方法ですね。耐用年数も木の橋よりずっと長いでしょうし。

フィンランドでも見た「オールドマンズベア」という(おじいさんのひげ)」という名の地衣類です。この記事ですね。森の騎士兼賢者のヨエル、元気かな?
「空気がきれいなところでしか見つからない」という説明はフィンランドのガイドのヨエルと同じでしたが、今回は「抗生物質みたいな力があって、先住民たちはこんな風に傷口に巻いて絆創膏代わりにしていた。密閉するのではなく酸素も行き来できるからいい」という話も教えてくれました。

また「タバコみたいにして火をつけて吸ったりもした」とのこと。
ちなみに英語では「usnea(アスニア)」と呼ばれ、日本語では「サルオガセ」というらしいです。


断崖絶壁の見晴らし台へ!
出発の1時間15分後、11時45分に断崖絶壁の上の見晴らし台に到着。ここでランチ休憩です。



さて眼下に見えるのは「ソフィア湖」です。夏には湖畔のビーチがこのあたりの人たちの憩いの場になるのだとか。とはいえ水は冷たいので泳ぐことはほとんどなく、カヤックをしたり湖畔でバーベキューをしたりという楽しみ方です。
確かに北緯45度の稚内よりずっと緯度が高い南緯51度ですからね。「所変われば品変わる」です。


本当にパタゴニアの天気は変わりやすいです。気温も変わりやすく「一日に四季がある」ってやつですね。
でもとても素晴らしい風景の数々です。ちなみにこのあたりにはここのような私有地のトレッキングコースがたくさんあるとのこと。
下りも楽しみ&事件が満載!


葛飾北斎の『冨嶽三十六景』の中でもたぶん最も有名な「神奈川沖浪裏」(画面左側から渦巻く波涛が遠くの富士山に降りかかるように見える絵)の構図になんとなく似ていると思いませんか。
先住民が描いたという壁画がある場所に到着しました。



楽しかったトレッキングもフィナーレに近づく寂しさを感じていると……。

トレッキングルートだけでなくあたり一面水がたまっているところがあって、なんとか歩ける場所を探して灌木の下をかがみながら進んだのですが、背中のデイパックが枝に引っかかって見事にこけました。ただ怪我はなかったし、これもまた旅です。
そして参加者の一人であるアメリカ人のジャッキーがこのトレッキングのあとすぐに空港に向かうことになっていたのですが……。「転んだのがこのあと飛行機に乗るジャッキーじゃなくて良かったね~」と私の口から恐ろしくジェントルマンな発言が飛び出しました。旅先ではジェントルマンに憑依される私です。
するとジャッキーから返ってきたのは憧れの君をウルウルと見つめるまなざし……ではなく、「確かに~。泥がついたひどい匂いで飛行機に乗らなくて済むしね~」
「……ねえ、今の僕ってそんなにひどい匂い?」
それでみんなで爆笑です。笑いのたくさんある旅は楽しいです。
さらに……。

このトレッキング、静かに「フィナーレ」に向かうつもりなんてまったくないようで、ますます盛り上がっていきます。素晴らしいエンターテイナー! 一時帰国時のホームコースの一つである丹沢表尾根縦走の「大倉尾根(通称「バカ尾根」)くん」に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいです。笑


これはこれで楽しいです。転ばなければ。笑。
出発から3時間20分後の13時40分にゴール。前日の「トレス・デル・パイネ国立公園」のコースも素晴らしかったですが、今回のコースも最高でした。
その日のお宿も最高!
さてその日泊まった「ホテルコスタオストラリス(Hotel Costa Australis)」もおすすめです!




牛肉なのですが魚介類のマリネ「セビーチェ」のようにお酢が効いていて、想像を超えたおいしさでした。ああ、その手があったか~とビックリ!
ウォーターフロントにありながら裏手は街の中心部で、買い物などにも便利という最高の立地。次に来るときもここに泊まりたいな。と、後ろ髪を引かれる思いでパタゴニアを去ります。アディオス!
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
Chile Nativo (今回のハイキングツアー催行会社)
https://chilenativo.travel/
CHILE TRAVEL(チリ政府観光局の旅行者用サイト)
https://www.chile.travel/en/
ATTA (ADVENTURE TRAVEL TRADE ASSOCIATION。アトベンチャートラベルに関する世界的な業界団体。今回のイベントを主催)
https://www.adventuretravel.biz
Hotel Costa Australis(この日泊まったホテル)
https://www.hotelcostaustralis.com/en









