どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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「雪道探検」のはずがまさかの…(雪遊び王国フィンランド旅・その6)
前回はこちら↓
フィンランド到着3日目、長距離列車でヘルシンキ郊外まで戻り、そこで迎えに来てくれたガイドさんの車に乗ってエスポー(Espoo)という場所に向かいます。このエスポー、フィンランドの首都ヘルシンキに隣接する衛星都市で人口約32万人。中心部にあるエスポー駅からヘルシンキ中央駅まで電車で20分強という近さです。
その一方でヘルシンキとは反対側には「ヌークシオ国立公園」というのがあり、「サクッと楽しめる大自然」ということでヘルシンキっ子には大人気なのだとか。私たちが泊まったのは「ハルティアレイクロッジネイチャーブティックホテル&グランピング」というところなのですが、ヘルシンキ中央駅から列車とバスを乗り継いで1時間強、自動車なら40分弱という近さです。

そのあとにやってきたのが「ヌークシオ国立公園」の中心部であるハルティアのネイチャーセンター的なところ。


この「ヌークシオ国立公園」では「ノルディックスキーの代表とも言えるクロスカントリースキーとかできたらいいなあ」とリクエストを出していたのですが、あれこれ手間取り到着したのが3月中旬。ヘルシンキやエスポーは緯度が低いこともあり、もう雪は残っておらず、クロスカントリーどころかスノーハイクもできない状況とのこと。ちなみにこのあたり、冬は1メートルほど雪が積もるらしいのですが…。
てなわけで雪が多少残っている普通のハイキングになりました。まあ、当初の「雪遊び王国」というコンセプトからはずれているのですが、それはそれでいいのです。自然に触れていられるだけで幸せな頭は5歳くんですから。
ヌークシオ国立公園「全体」の地図を見せながら「東側にはほとんど道がなくて、手つかずの自然が残されているんです」という説明のあと、移動したのがこの「周辺」の地図。ちょっと気が利いていると思ったのは、「夏のトレイルとアクティビティ」と「冬のトレイルとアクティビティ」の地図が2種類用意されていること。


「すげえ。私が住むオーストラリアのブリスベン周辺の国立公園には夏用と冬用のマップなんてないぞ」と一瞬彼我の差に絶望しかけたのですが…よくよく考えたら亜熱帯で雪が積もるどころか降りさえもしないので「冬用マップ」なんて不要でした。笑
そしていよいよガイドハイクスタート。午後4時。緯度が高いフィンランドの冬は極夜(白夜の逆。1日中太陽がまったく登らないこと)とは言わないまでも昼間が極端に短いというイメージがあったのですが、まだ明るい。訪問したのが3月中旬で、あと数日で春分の日ですから、昼と夜も半々なのです。そろそろ…というかもう春です。
ガイドのヨエルが最初に見せてくれたがフィンランド語でナアバ(Naava)と呼ばれているもの。英語で「オールドマンズベアード(おじいさんのひげ)」とか「ベアードモス(ひげ苔)」とか言われるそう。地衣類の一種ですが空気が清らかな場所でしか生えないそうです。


山の上の岩であればゴツゴツしているのに、こうやって丸いのは1万年前くらいまでここが海岸で、岩が波で洗われていた証拠です。

写真を撮って、かつボイスメモを録っては大変なのです。今回はフォトグラファー担当の田所さんもいるのですが、自分でも写真を撮っておかないとボイスメモの内容がわからなくなってしまうのです。

「最初にキツツキが穴を開けて去ったあとにムササビが入るんです」「ん? ムササビが横取りするんですか?」「いや、キツツキが去ったあとで入るんです」。
意外と平和な気がして納得しましたが…あとになってふと疑問が。なぜキツツキ、去る? せっかく作った洞なのに。
疑問というのはその場ではなかなか浮かばないものです。…一瞬いいこと言ったような気になりましたが、普通の事実でした。というか自分の頭の回転の悪さを暴露しただけ。涙
「森の騎士兼賢者」の火おこし!
次にヨエルが実演してくれたのが金属と金属をこすり合わせて火花を散らすファイアースターターでの着火。マッチもライターも使えない環境でも火が起こせて便利な道具です。
けどまあこれ、私もカナダでもこのフィンランドでも実際にやったものなのであまり尊敬の念も起こりません。しかも枯葉とか木の皮とかの自然なものではなく脱脂綿って反則気味だし。

するとヨエルは「もっと古い、鉄器時代と同じ方法で火をつけましょう」。取り出したのが金属と小さな石。



という作業を全部掌の上でやるんです! ずるいなあ、これ。女子の尊敬のまなざし、全部持ってくやつじゃん! と嫉妬の念に少々メラメラしたのですが…よくよく考えたら全然ズルくないですよね。実力で火をおこしているんだから。笑
まあとにかくいいショーを見せてもらいました。どうでもいいですがヨエルの「森の人」感溢れる服装もなかなかいいですな。西洋を舞台にしたファンタジー物にはマストな、主人公を助ける森の騎士兼賢者。笑
次に見せてくれたのが氷の中の黒い模様。

じつは氷の下にある何かではなく、氷に入った何かでもなく、自然に氷が溶けるときにこういう形になるそう。知らんかった。

右端にある「松ぼっくりマーク」は「松ぼっくりトレイル」のマークではなく、「すべてトレイル」を示すものとのこと。そして二つ描かれているのはフィンランドの公用語がフィンランド語とスウェーデン語だから2カ国語で表示しているとのこと。
で、ここで「なんて英語のサインがないんですか? フィンランド語とスウェーデン語もわからない外国人観光客にとって英語の表記があるだけで安心感が何倍も違うんですよ」。
これは前年にドイツに行ってトレッキングをしたときも感じて、ガイドに伝えたことです。
オーストリアのザルツブルクで雪が降る山を歩き始めたときも、英語の表記がなくて、仮にそこで英語が話せるイアンくんに会わなかったら絶対にあきらめて引き返していたところ。
私が一人のガイドに言ってどうなるってところはあるんですが、でも大切なことなので言い続けていきたいと思います。みなさんも機会があったらぜひ同じことをお願いします!
旅は現地の人たちから何かを受け取るだけでなく、現地の人が気づかない何かを与えるものでもあるのですから。旅は交流であり交換です。

「これ、なんだと思います?」とヨエル。「ウサギですね」と即答してしまう私。…すみません、すみません。すでにカナダで同じものを見てきたとはいえ、空気を読めずに。
展望台に到着!

いつものように「立っている者はガイドでも使え」の鉄則で、ヨエルと観光局のポーラに即席モデルになってもらい夕陽の写真を撮りました。

そしてもう一人の賢者も登場!
次に見つけたのが緊急通話の看板。

ここでフォトグラファーの田所さんがおもしろいことを口にします。「私は緊急通話の番号は世界中どこでも共通にすべきだと思う。000でも111でもいいんで。緊急のとき、ええっとこの国の緊急通話の番号ってなんだっけって考えてもパニックになって思い出せないこともあるから」。
これはなかなかいいことを言うなと思ったし、ヨエルもポーラもうなずいていました。正直言って国連で取り上げられてもいいレベル。

「ああ、子どもたちもわかるためですね」と勝手に納得していると「いや、それもあるんですが海外からの移住者たちが理解できるようにでもあるんです」。
これからちょっと「旅におけるバリアフリー」を一つのテーマにしようかと思っているところなので、とても参考になりました。あと日本の旅行関係者や行政関係者のみなさんもぜひご参考に。

とはいってもハイカーたちが緊急避難に使うものではなく、猟師たちが元々ここで泊まるために作られたものだとか。

「自然の木じゃないのに松ぼっくりが落ちているなんて不思議じゃありません?」とヨエル。じつはキツツキが電柱のささくれたところに松ぼっくりを差して食べるのだそう。

そのほうが木の枝から生えている状態よりも固定されるから食べやすいとのこと。で食べている最中に落ちたのが、この電柱の下の松ぼっくりの正体です。
宿に到着


トナカイのハムとサラミが特においしかったです。トナカイの肉は鹿肉と同様の滋味があって個人的にも高評価。
というわけでフィンランドでの怒涛の3日間も終わりを告げ、明日はヘルシンキ空港からフィンエアーでミュンヘンへ。そこから次の目的地であるオーストリア・チロル地方、ツィラータールのマイヤーホーフェンへと向かいます。北欧の「雪遊びの王国」から、ヨーロピアンアルプスの「雪遊びの王国」へ。旅は続きます。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
Visit Finland
https://www.visitfinland.com/ja/
Visit Espoo(エスポー市観光局)
https://www.visitespoo.fi/en
Retkipaikka/ Finland Naturally Experiences(ヨエルの所属するガイドツアー会社)
https://finlandnaturally.com/
フィンエアー/Finnair
https://www.finnair.com/jp-ja
「日本から一番近いヨーロッパ」であるヘルシンキ経由で、欧州約70都市へ。羽田・成田・中部・関空の4空港就航。
写真/田所優季
旅行写真家、トラベル・ライフスタイルライター、ファッションデザイナー。











