環境省などの調査で、千葉県は本州で唯一、ツキノワグマが生息しない県だそう。周辺は、サイクリストや旅人たちが集う特別な場所といった趣でした。そして、旅の疲れを癒やしてくれたのは、地元で愛されるB級グルメを驚くほどの低価格で提供するカフェとの出会い。なかなか充実した時間となりました~、という話です。
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雄大な房総の風景を楽しめる九十九谷展望公園で深呼吸

鹿野山へ向けてクルマを走らせ、九十九谷展望公園に到着したのは朝9時ごろ。雲海が見られる天気や時間帯ではありませんでしたが、眼下に広がる山並みは、幾重にも連なりまるで水墨画のよう。海のイメージが強い房総半島とは思えない、雄大な山岳風景が広がっていました。この景色が画家の東山魁夷を魅了したのもうなずけます。

冬季の雨上がりの早朝には、上の写真のような雲海に出会えることもあるそうです。

11月は真冬ほど乾燥しておらず、ほどよい湿気が風景にフィルターをかけてくれるようです。こんな景色見てみたいな~。

展望公園で深呼吸し、旅の動機となったこの雄大な風景を心に焼き付けました。私たちが滞在している間も、何台ものロードバイクやオートバイが展望公園にやってきては、景色を眺めたり写真を撮ったりして、静かな時間を満喫していました。


私は知らなかったのですが、鹿野山は自転車で坂道を上るヒルクライムの聖地だそう。次男は一生懸命漕いで山を上っているサイクリストを見て、愛をこめて”変態”と呼びました。ここには、素敵な変態さんが、たくさんいましたよ(笑)!
九十九谷展望公園
- 所在地:君津市鹿野山東天峪119-1
クマ出現の心配なし!安心して歩ける周辺の散策路

このエリアが、サイクリストやツーリングライダーにも愛されている理由がよくわかります。路肩には野の花が咲き誇っていたり、味のある民家が点在していたり、里山感がすごく気持ちいいのです。しかも連日ニュースをにぎわせている、恐ろしいツキノワグマの心配もないのが、ほんとうにうれしい。ただし、イノシシやシカは生息しているため、最低限の注意は必要です。

数分ごとに飛行機が頭上をかすめていきました。ああ、遠くへ行きたいなぁ…と思ってしまいました(笑)。
神野寺へ歩いてみた

参道の階段を上れば、神野寺(じんやじ)へ着きます。それは聖徳太子により創建された、関東最古級の古刹とか。クヌギやスギが立ち並ぶ参道。自然に背中を押されているように気持ちよく足が進みました。

房総三山のひとつである鹿野山は、古来より霊場として信仰を集めたそうです。

現代の私たちのように気軽なハイキングとしてではなく、先人たちは、なにかを願い、なにかに感謝するために歩いたといわれる神聖な道。この厳かな空気に触れるだけでも、鹿野山を訪れた価値がある気がしました。

近々、初めての漢字検定を受ける兄弟。天満宮では、「受かりますように…」とお祈りをしていました。テストでは、見直しをしっかりやって、うっかりミスをなくしてね(笑)。

房総半島にご縁があり、この地方の各所を訪れている私たちは、この台風が大変な被害をもたらしたことを各所で目の当たりにしてきました。神野寺も例外ではなく、境内にある表門は全壊、旧護摩堂や奥の院などにも被害が出たそうです。表門は、保存修理工事が行なわれ復旧が完了したそうです。


2025年11月15日から12月5日の日没から19時までは、紅葉と本堂のライトアップが実施されるそうです。 紅葉の状況は、お寺のHPで随時更新されます。チェックしてくださいね。
神野寺
- 所在地:千葉県君津市鹿野山324-1
- 営業時間:8時30分~16時(閉門15時30分)
- ホームページ:https://kanouzan-jinyaji.com
さあ、鹿野山の頂を目指して歩こう

シカが多く生息していたことに由来する鹿野山は、千葉県内で2番目に高い山だそう。鹿野山は、白鳥峰(東峰379m)、熊野峰(中央峰376m)、春日峰(西峰352.4m、1等三角点)の3峰の総称で、それぞれの山頂に神社がまつられています。そんな山頂を目指して歩きはじめました。

クマがいないのをいいことに、グングン山中に分け入りました。しかし、この日は、残念ながら一部のルートが通行止めになっており、登頂は断念しました。ほんとうは頂上に立ちたかったのが旅人の本音。山を訪れる際は、事前の情報収集が大切であるとあらためて痛感しました。しかし、3つのピークは眺望がないようだし、九十九谷展望公園からの景色がよかったので今回はよしとしよう。
秘密にしたいカフェとの出会い

鹿野山近くで、気になるカフェを見つけました。B級グルメの宝庫みたいな、飾らない雰囲気が素敵なフリマCafe。10時30分の開店と同時に入店すると、お客さんは私たちだけでした。

街道沿いにひっそりとたたずむカフェ。派手さはありませんが、地元の人に愛されている雰囲気が漂う店内に吸い込まれるように入ると、店主のお母さんの温かい笑顔に迎えられました。

ハイキングで心地よく疲れた体に染みるコーヒーと、手作り軽食のコスパの良さに、思わず「ほんとうに、この値段でいいの?」と、ビックリ。旅の途中でこういう良心的な名店に出会うと、心まで満たされます。
私たちがいただいたメニューをご紹介しますね。


オーダーしてからお母さんが天ぷらを揚げる音が聞こえてきました。もちろん、できたて熱々です。

ひとりで切り盛りしているお母さんに、お店の紹介をしても良いかたずねたところ、「もちろんいいけど、若い人たちがインスタで紹介してくれるのよ。値段が安いことをメインにされちゃうから。ほら、私ひとりでやってるじゃない。ライダーのオジサンたちが5人も6人もわーッと来られると困るのよー。ま、断っちゃうけどね!?」なんてことを、ほがらかな笑顔で言っていました。
フリマCafeに行かれる方は必ず少人数で。お母さんは、気さくで素敵な方でした。コスパがよすぎるのにはびっくりしたけれど、味はおいしかった!我が家のランチは、家族4人で1,600円でした。
フリマCafe
- 所在地:千葉県君津市鹿野山169
- 電話番号:0439-37-3456
- 営業時間:10時30分~15時
- 定休日:月、火曜
- 支払い方法:現金のみ
鹿野山は、絶景と歴史と温かさを同時に楽しめる房総の宝

雄大な絶景、聖徳太子ゆかりの歴史、そして旅人の心を温める地元の方の人情…。そんな鹿野山での時間は、期待以上の満足感でした。これだから、自分で歩いて探すローカル旅はやめられません。海のイメージが強い房総半島ですが、内陸エリアもおすすめです。







