これまで北海道の夏のツアー (『なつ旅』 と銘打っています) は、だいたい7月の中旬にスケジューリングしていたのですが、今年は趣を変えて8月に設定して行ってまいりました。
テントで巡った北海道ツアー
いや〜8月の北海道はね、本州や九州と違って日が沈んでしまえば一気に涼しくなって、凌ぎやすいこと凌ぎやすいこと。今回はそのほとんどの宿泊をソロテント泊でクリアしたのですが、これがもう、快適快眠の極みでしたよ。
テントの寝心地があまりに良すぎてね、正直、どなたかのお宅やホテルに泊まるよりも優先したいくらい楽しめたんです。

なんでしょうか、あの狭い空間に潜り込んだ時に生まれる、得も言われぬ安心感。手の届く範囲に私物はコンパクトに収められ、誰にも邪魔されることなく思索に耽ることができる——その自由度の高さ。
制限のある空間だからこそ逆説的に得られる解放感。これぞソロテントの魔法です。
今回もまた、友人であり網走在住のカメラマン、あべちゃんの写真 https://www.instagram.com/the_day_photography?igsh=MWFkbnRsMno3NnhnOA== を交えながら綴っていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
道内のあちこちにいる仲間たちと作った心に残るステージ
ライブ会場は全部で5箇所。そのうち3箇所は野外での開催となりました。
まずは道東の町・興部(おこっぺ)。ここでは毎年、30代の若者たちを中心にしたチームが、手作りの温かなフェス会場を準備して待っていてくれます。昨年からは僕以外のアーティストも出演するようになり、さらに賑わいが増しました。
中心になって場をつくるのは、生粋のスノーボーダーでありデザイナーでもあるデガラシくん。彼のセンスによるデコレーションや空間レイアウトは、まさに絶妙。いずれ、多くの人が足を運ぶようなイベントに育っていくかもしれません。

次に印象的だったのが、小樽・塩谷海水浴場の「K&M SUPガレージ」。https://kmsupgarage.com/
SUPツアーやレッスンを手がけるショップで、僕の古い友人ミツヤくんとケンちゃんがオーナーです。
海の目の前という最高のロケーションを借りて、手稲のスノーボードショップ「トライアル」のマスター、みやちゃんが僕のライブを企画してくれました。真夏にスノーボーダーたちが大集合するという、なんとも不思議で素敵な景色でしたよ。
海を背にした小さなステージで、札幌在住のドラマー・だいちゃんと夕暮れ時にライブをスタート。傾いた陽が海面に反射し、金色の光があたり一面に広がります。日没後も空は刻一刻とその色を変え、何の装飾もいらない幻想的な演出を大自然がしてくれる。
僕は背を向けていたので後であべちゃんの写真で確認したのですが、お客さんにとっては最高の光景だったに違いありません。

暗くなってからは、フィルマーでもあるミツヤくんのムービーショーへ。北海道のスノーボードシーンや名だたるライダーたちの映像に歓声が上がります。長年、雪の斜面を見つめてきたスノーボーダーたちが描くラインの美しさや迫力には、思わず胸を打たれるものがありました。まさに“横ノリ”文化の真髄を見せてもらった感覚です。
十勝・新得町の「十勝アドベンチャークラブ(TAC)」http://www.tac-go-go.com/でのライブも野外でした。建物横のキャンプサイトを自由に使わせてもらい、テントと楽器を同じ空間に設営。シンボリックな二本の木をステージに見立て、枝を屋根に、照明も枝に吊るして。グリーンに包まれた即席ステージは予想以上にいい雰囲気となり、大好評でした。
新得町は町の9割を森林が占める自然豊かなエリアで、ラフティングやSUPなどのアクティビティも盛ん。ここもまた必ず戻ってきたい場所になりました。

東川町の居酒屋「りしり」https://www.izakaya-rishiri.com/ でのライブは、まさに旅のクライマックス。ちょうど北海道をツアー中だった友人ドラマーのピースケくんも合流し、ロックバンドスタイルでの一撃です。しかも店主ヒデさんの誕生日。盛り上がらないはずがありません。
ライブ後も音楽は鳴り止まず、深夜までその余韻に浸りました。
居酒屋「りしり」は、スノーボーダーであるヒデさんの店だけに、道内外から多くのライダーたちが訪れる場所。ファンも多い人気店ですので、もし東川に行かれることがあればぜひ立ち寄ってみてください。料理も酒も格別です。
さて、このエッセイを時々ご覧になっていらっしゃる方はすでにご承知の通り、僕のライブツアーはサーフトリップも兼ねています。今回もやはり良き波に出会えましたよ、いやほんと。

まさかのダウン……、波は目の前に!
オフの初日は、「北海道といえば……」ってポイント、浜厚真に極上のうねりがヒットしていました。しかしね、旅の疲れからか僕は珍しくダウンしてしまって、まさに指を咥えて皆さんのサーフを車の中からうなされながら眺めていたのです。だいちゃんなんか僕の目の前でめちゃくちゃ素晴らしいロングライド決めてましたもの。

なんだか微熱があるようなないような、ちょっと寒気がしたりしてね。食欲はあるのですが、とにかく身体がだるくて力が入らない。ほんと辛い辛い一日でした。心身ともにうなだれ気味の僕を、カメラマンのあべちゃんは文句ひとつ言わずひたすら運転しつつ励ましてくれたものです。友とはなんてありがたい存在なのでしょうか。
翌日は、もう海に入りたい気持ちを抑えることができず、まだ重たい身体をたしなめつつなんとかウエットスーツに袖を通しました。広尾町のあるポイントに、まるでサーフボードに抱えられるようにして入水したのです。しかしこれサーフィン長くやってると不思議なものでね、どんなに調子悪くてもできちゃうんですよ、テイクオフ。

波のサイズもほどほどのファンウェイブだったということもあったし、北海道とはいえ夏ですからね、水温もそれほど厳しくなくて。気がつけば2時間以上海の上にいました。そして海から上がってみると驚くべきことに、すっかり身体は軽くなっているではありませんか。あの辛かった風邪っぽいやつが、どこかに吹き飛んでしまっていたのです。
気を良くした僕はね、昨日の浜厚真での不甲斐なさを取り返そうと、河口のポイントへと移動。夕暮れ時で誰もいない海に速攻で入り、短時間でしたが何本ものセットにチャージしました。復活の狼煙をあげた瞬間。これもまた忘れがたいセッションでした。
東田流ジンギスカンの楽しみ方とは??
僕はいつも病から回復した時に、必ずといっていいほど思い出すものがあります。映画「ルパン三世 カリオストロの城」で、ある爺さんの家のベッドで包帯ぐるぐる巻きのまま一気に飲み食いするルパン。あのシーンを今回も思い出さずにはいられませんでした。
海から上がったらすぐに、東京から合流した仲間らとあべちゃんとの4人で、焚き火を囲みつつのキャンプ飯の支度です。

この夜は僕の提唱する「ジンギスカンの水焼き」なる我がオリジナル料理を披露することに。イワタニの風よけ機能付きカセットガスコンロに、フライパンをセット。もやしとしめじ(このラインナップだと野菜を切る必要もない)、そしてスーパーで買っておいたたっぷりのジンギスカンを重ね、塩をまぶします。少しだけ水を加えて蓋をして煮るというか焼くというかね。ジンギスカンからは程よく油が滲みますので、植物油を下地にする必要はありません。
バーベキューの醍醐味も捨てがたいところですが、準備に後片付け、更にはフードロス的なことを勘案すると、サーフトリップキャンプ飯には最適の料理だと思うのです、あくまで僕的にね。機会があったら是非一度お試しください。
小さなドラマーとのセッション

さてさて、若干の体調不良も良き思い出となった今回の「北海道なつ旅」ではありましたが、最後の最後に素敵なセッションをしましたのでね、ご報告しておきます。なんと写真家あべちゃんの息子さん、小学校2年生のしょうちゃんが、ドラムでセッションしてくれたのです。
ラストの弟子屈、「PETETOK」https://www.sawakka.com/ でのライブ。本編最後の曲「HERO」でね、しょうちゃんはドラムを叩いてくれました。この日のために一年間、雨の日も風の日も雪の日でさえもママと一緒にスクールに通いに通って、僕の曲「HERO」だけをずーっと練習してくれていたのです。力強いスネアの音は小学生とは思えない程の逞しさでした。「また来年もやろうねしょうちゃん」と約束をして、僕は北海道を後にしたのです。
今回もまた、ライブに足を運んでくださった各地の皆さんのおかげで、とても素晴らしい旅になりました。
この場を借りて心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。

今回のアウトドアに合う一曲
ニルヴァーナ 「About a girl」
MTV アンプラグドより
ニルヴァーナ作品の中でもMTVアンプラグドin New York はジンギスカンやウィスキーとの相性抜群です。
東田トモヒロNEWS
【2025.11.2(SUN) 東田トモヒロ Acoustic Live at FROGGIES 茅ヶ崎 】
■日時:2025.11.2(SUN)
■会場 : FROGGIES 神奈川県茅ケ崎市東海岸北1-5-4
■出演:東田トモヒロ
■時間:OPEN 19:00 / START 20:00 2set
■料金: ¥3000
■ご予約・お問い合わせ : FROGGIES 0467-87-6526
