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    2019.03.13 写真家・佐藤大史のアラスカ紀行

    アンカレッジの夜22時くらいの写真。部屋のカーテンを隙間なく閉めたくなったのを覚えている。

    アンカレッジに着いたのは深夜の2時。深夜ということもあってアンカレッジの空港内は閑散としていて、ひどく寂しく見えた。目は冴えていたので、少し散策でもするかと思って歩いてみたのだが、10分足らずで一周りできてしまった。無精髭を生やし穴の空いたジャケットを着た私が、中身のパンパンに詰まった75リットルのザックと20リットルのカメラバッグを体の前後に抱えて空港内をグルグルと歩き回る姿は滑稽だったことだろう。

    小さな空港の中でも端の方に落ち着く場所を見つけ、そこから見える大きな窓から外を覗くと、外はやはりうす暗い。いや薄暗くはあるが、じっとみてると北のほうの空は明るい。日本で言えば日没3~40分後くらいの明るさがあり、歩けそうだった。よし、と私は街まで歩くことにした。背中に背負うザックは30キロ、前に抱えるカメラザックには20キロほどの機材。行くまでにシャツを汗でダメにしちゃうなあ、なんて余計なことを心配したが、ええいままよと空港を飛び出した。7月上旬のアラスカの深夜2時過ぎ、私は大きな道路の脇をぜえぜえ言いながら歩いた。日本なら職質ものかもしれないが、ダウンタウンにある宿までの3時間弱の間、誰かに声をかけられるどころか、誰かとすれ違うことすらなかった。そして結局、シャツどころかパンツまでびっしょり濡らした。

    予約した宿の前に着くと幸運にもすぐに入ることができ、荷物を預かってもらった。明るくなってきた頃、街で一番大きなアウトドアショップへ出かけた。アラスカ、というと何も無いイメージを持つ方が多いかと思うが、アンカレッジであれば、日本のアウトドアショップと同等のものは手に入りそうだった。日本では買えなかった、もしくは買っても持ち込めなかったベアスプレーやガスの類、新しく目にした地図、軽そうな食材、などを買い揃えた。アンカレッジにはappleストアもあるので、スマホが使えない間は、厚かましいことにそこで展示されているパソコンでメールチェックなどしていた。

    翌日、バスで南の方へ行き、森の中で数日にわたって撮影や機材の最終テストなどをした。静寂の森に入ると、これから数年にわたる長い長い撮影行が始まるんだ、という澄んだ気持ちに満たされた。

    風のないある日、森の奥で小さな池に出会った。樹々のさざめきもなく、池に落ちる雫の音だけがそこにあった。

    この森にいる数日はとても雨が多かった。見上げるとモミの木が”キラキラ”と音を立てるように水滴を携えていた。

    プロフィール
    佐藤大史

    東京都町田市出身。長野県安曇野市在住。日本大学芸術学部写真学科卒業。卒業後、写真家白川義員の助手を務め、2013年独立。
    「地球を感じてもらう」ことをコンセプトに、アラスカなどの手つかずの大自然と、そこに生きる生き物たちを撮影している。
    1012日〜20日まで、安曇野市豊科近代美術館で写真展を開催予定。大迫力の極大プリントで展示予定。

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