
例えば、これまでに紹介してきたヨモギやカラスノエンドウのように食べられる雑草があります。
今回は、食べられる上に、さらに健康にも役立つドクダミを紹介します!
ドクダミの基本知識と生態
ドクダミとは何か?
ドクダミは沖縄から北海道まで幅広く分布しており、ドクダミ科というあまり聞きなれないグループに属しています。特徴は独特の臭いで、葉や茎を触ると手に臭いが残ります。
一般的には悪臭かもしれませんが、パクチーなどのハーブ類が好きな人にはいい匂いに感じるかもしれません。
ちなみに、ドクダミの名前に「ドク」が含まれていますが、植物に毒は無く、古来から薬草として活用されてきました。
ドクダミの生態と生育環境

ドクダミは種子と地下茎で繁殖することから、地上の茎や葉を刈り取ってもすぐに再生してしまいます。このため、防除が難しい雑草とされています。
一般的には日陰や湿った土地に多く、街中では街路樹やコンクリートの隙間にびっしりと生えています。
様々な名前


ドクダミには別名が多く、十薬(じゅうやく)、ドクダメ、ホトケグサ、ヘビクサ、ジュウサイなど様々な呼ばれ方をしています。たくさんの名前があるということは、それだけ、身近な雑草だったと考えられます。
特に、十薬という名称がよく使われていますが、十種の病に効果があるという言い伝えや、ドクダミの花が十字型であることに由来すると考えられています。ただ、ドクダミの中には八重咲の花を付けるドクダミがあります。
花の形が珍しいためか、インターネットで販売されていますが、ドクダミの繁殖力はかなり強いので、1度土に植えてしまうと一気に広がるので注意してください。
ドクダミの薬効とは?
ドクダミの別名・十薬(じゅうやく)が、十種の病に効果があることに由来しているように、ドクダミは昔から薬草として使われてきました。
江戸時代の記録から
貝原益軒(かいばらえきけん)という江戸時代の学者は、「大和本草」という書物の中でドクダミのことに触れています。この書物が出版されたのは今から300年以上も前のことなので、ドクダミと日本人の付き合いはとても古いことが分かります。
「大和本草」では、ドクダミを植えると繁茂して取り除くことが難しいことや、一部の地域でドクダミの根を食べていること、馬の薬に使われていることなどが紹介されています。
ドクダミの効能とその成分
ドクダミは、生薬(しょうやく)として活用されています。生薬とは、薬効成分を含む植物、動物や鉱物などを乾燥させたり蒸したり加工したもののことです。そして、いくつかの生薬を組み合わせて作られるのが漢方薬です。
ドクダミには、悪臭の原因となる精油成分をはじめ様々な化学物質が含まれており、内服薬として食あたり、下痢、利尿効果があり、外用薬としては皮膚病や腫物に効くとされています。
例えば、茎と葉を乾燥させておけば、お湯を注ぐだけで「ドクダミ茶」として手軽に飲むことができます。その他にも、ホワイトリカーなど度数の高いアルコールにドクダミを3ヶ月ほど漬けておけば、切り傷や肌荒れに効果的な「ドクダミチンキ」になります。どちらも簡単に作ることができる上に、保存が可能なので、まとめて作っておくと便利です。
ただし、植物由来の成分でも過剰に摂取すると毒になる場合があるので、特に普段から薬を服用している方は十分に気を付けてください。
ほかにもある!初夏に採集して役立つ雑草と活用方法
ツユクサ

鮮やかな青色の花が特徴で、農地や道端によく生えています。昔の人達はこの花を集めて色素を取り出し、絵の具として使用していました。1円玉くらいの花を1つ1つ手作業で集めていたので、大変な労力だったと思います。
滋賀県では、ツユクサを改良したアオバナ(花がツユクサよりも大きくなっています)の栽培が盛んでしたが、その歴史はとても古く、室町時代までさかのぼるようです。
時代とともに生産者は減ってしまいましたが、最近では、アオバナを活用した健康食品が作られているようです。また、ツユクサの軟らかい葉は、おひたしや酢の物にして食べることができます。
ゲンノショウコ

ゲンノショウコは、現の証拠とも表記され、日本の三大民間薬の1つとされています。ちなみに、他の2種は今回紹介したドクダミと、強い苦みが特徴のセンブリです。
ゲンノショウコは、昔から下痢や食あたりの治療に使われてきました。
ゲンノショウコは日本各地に分布していますが、街中には少なく、野原や山の近く、道端などに生えています。花の色は白系とピンク系の2つに分かれていて、白系は東日本、ピンク系は西日本に多いとされています。写真の白花のゲンノショウコは東北地方で撮影したものでした。
チドメグサ

チドメグサは、血止草という名前の通り止血に使われていました。生の葉をもみ、傷口に貼り付けて使用します。
最近では、バンソウコウがあるので使用する機会はほとんど無いかもしれませんが、医学が未発達だった時代には重宝されたのかもしれません。
写真のチドメグサは、東京のど真ん中で、隠れるようにして生えていました。足元のチドメグサに誰も気付いていませんでしたが、時代が違っていれば、バンソウコウの代わりとして引き抜かれてしまったかもしれません。
ドクダミ駆除・除草の効率的な対策とは?
ここまでは、ドクダミの活用方法を紹介してきましたが、多くの人にとっては、ドクダミの駆除方法が気になるかもしれません。それだけ、ドクダミは厄介な雑草の1つです。
放置するとどうなる?
ドクダミは、種子と地下茎から増えていきます。種子を付ける前に刈り取ってしまえば、種子の拡散を抑えられるのですが、厄介なのは地下茎です。
土を掘り起こして1本ずつ取り除けばいいのですが、全て取り除くのは不可能に近いです。しかも、取り残しが何本かあると、そこから再生して、また元通りになってしまいます。
防除方法

一番確実な駆除方法は除草剤を使用することですが、ネット上では熱湯をかける方法が紹介されていました。
ドクダミしか生えていないような場所ならいいかもしれませんが、他の植物が一緒に生えている場合、その植物まで熱湯で枯れてしまいます。
考え方を変えてみる!

厄介者扱いのドクダミですが、よく見るととてもきれいな姿かたちをしています。採取する際の臭いは気になりますが、花瓶に活けるととてもよく映えます。
その他に、ドライフラワーにすることもできます。
このように、駆除することに頭を悩ませるよりも、ドクダミを積極的に活用しながら減らしていく、ドクダミと共存するというのも一つの考え方です。
ドクダミの使い道
ドクダミは、先に紹介したように薬草として使われてきましたが、普通に食べることもできます。
臭いに対する好みが分かれそうですが、王道の天ぷらとかパクチーの代用でスパイスカレーに合わせてみるのも面白いかもしれません。葉を乾燥させてお茶にするという手もあります。
その他に、土から掘りだした地下茎を炒め物やきんぴらにすれば、駆除と食事の一石二鳥です。
さいごに
今回は、ドクダミの役に立つ部分を中心に紹介しました。アメリカの哲学者・エマーソンが「雑草とは何か?それは、その美点がまだ発見されていない植物である」と語っているように、ドクダミの役立つ面に着目することで、ドクダミとの付き合い方も変わってくるはずです。
ドクダミは厄介者かもしれませんが、日本人とは数百年もの関わりがある雑草なので、これからも程よい関係を続けていきたいですね。