
天園ハイキングコースとは
海に面した鎌倉を背後の三方向から囲んでいる山々は「鎌倉アルプス」と呼ばれる。これらを縦走するのが、ハイカーに人気の「天園ハイキングコース」だ。
アルプスといっても、最高峰は標高159mの大平山(おおひらやま)。気軽に山歩きを楽しみつつ、コース上では随所で深山の趣を味わえる。山のふもとには、鶴岡八幡宮、建長寺、円覚寺、鎌倉大仏などがあり、その日の気分でコースを変え、さまざまな寺社を巡ることもできる。
横須賀線の鎌倉駅、北鎌倉駅が起点。鎌倉駅から鶴岡八幡宮、瑞泉寺を経由して登れば天園へ。北鎌倉駅から建長寺を経由して登れば、十王岩にいたる。鎌倉の街と由比ヶ浜、さらに富士山を眺めながら歩く尾根上の道からは、縦走途中でも下山できる道が何本も派生しているので、小さな子ども連れでも安心だ。
▼参考記事
手軽でも歩きごたえ十分!天園ハイキングコースのルート
天園ハイキングコースは全長約5.5km。1時間半~2時間ほどで楽しめる、手軽なコースだ。しかしながら、歩きごたえは十分。ここでは、実際に筆者が歩いたコースをお伝えするが、天園ハイキングコースには複数の入り口およびルートがあるので、その日の気分やプランに合わせてチョイスするのがおすすめだ。
1.北鎌倉駅から明月院側ハイキングコース入口へ
まず筆者が降り立ったのは、JR横須賀線の北鎌倉駅。駅からしばらく歩くと、明月院通りに出る。明月院通りからハイキングコース入口を目指して進む。 道中ではおしゃれな建築物や、この時期ならではの深い緑をまとった木々が出迎えてくれる。
天園ハイキングコースの明月院側入口に到着。ここからは山道に変わり、登りが多くなる。ところどころに案内板があるので道に迷う心配はない。
2.勝上献展望台へ
ハイキングコースの入口から、まずは勝上献展望台を目指す。道はしっかりと整備されており、案内板もあるので安心だ。

進んでいくと、別の入口からの道との合流地点に到着。ここまで来たら、勝上献展望台まであと少し。足元には大きな石などもあるため、注意が必要。

最初の目的地である、勝上献展望台からの景色。目の前には鎌倉市街や相模湾が広がる。天気がよければ富士山や相模湾を一望できる絶好のポイントだ。この日はやや雲が多く、富士山までは見えなかったが、それでも開放感のある景色を楽しめた。
3.鎌倉市最高峰の大平山へ
案内板に従い、さらに天園方向へ歩みを進める。勝上献から大平山まではおよそ2.1km。時間にして30分程度だ。

大平山へ行く道はアップダウンも激しく、変化に富んだハイキングを楽しめる。このようにロープを使って登り降りするポイントもあり、手軽でありながらも、意外と体力を使うので侮れない。

そのまましばらく歩くと大平山に到着。標高としてはそこまで高くないものの、鎌倉最高峰と言われるだけあり、開放感のある景色が眼前に広がる。天園ハイキングコースではこの地点が一番標高が高いため、これから先は下りがメイン。ほぼ折り返し地点でもある。

大平山から下りてすぐのところが、このハイキングコースの名前となっている天園のビューポイント。古くから相模・武蔵・伊豆・上総・下総・安房の六国が見渡せる六国峠としても親しまれた景勝地で、開けた広場のようになっている。 見晴らしもよく、近くには公衆トイレがあるため、休憩スポットとして利用するのもおすすめ。
4.ゴールの瑞泉寺入口へ
天園ビューポイントでの休憩が終わったら、瑞泉寺を目指して再び山道を歩く。途中に分岐があるが、案内板に従って今回は瑞泉寺入口へ。

瑞泉寺入口まで下山。少し細い道だが、案内板があるためすぐにわかる。自然を満喫しながら歩くこと約30分で瑞泉寺入口に到着し、天園ハイキングコースはここで終了。手軽に楽しむことができる一方で、しっかりと登山の要素もある、非常に魅力的なコースだ。

下山後は鎌倉駅方面を目指す。近くからバスも出ているが、歩いて行ける距離なので、周囲を散策しながら向かうのもおすすめだ。鎌倉には随所に観光名所や歴史を感じられるスポットがあるため、ハイキングとは違った楽しみがある。
▼参考記事
遺構や絶景ポイントをチェック
現在、歴史を感じられる観光名所で有名な鎌倉。かつて鎌倉北部を守った鎌倉アルプスと呼ばれる山々は、人気のハイキングコースとなっている。深い歴史を感じる遺構ポイントや絶景スポットをチェックしよう。
勝上山

勝上山は、建長寺の真後ろに位置する山。頂上には展望が設置され、ここからも鎌倉の街が見下ろすことができる。右側は伊豆半島までを見渡せる景色になっており、広く山々の絶景を楽しむことができる場所だ。
十王岩

鎌倉の有名なパワースポットである十王岩。夜な夜な不気味な音を立てるという、少しばかり怖い噂から「喚き十王」とも呼ばれている。長い年月による風化で、今では十王のお顔は確認ができない。長い歴史を感じさせてくれる姿になっている。

また、この十王岩は鎌倉市街の中央奥部分に位置している鶴岡八幡宮の真後ろにあたり、そこからの景色はまさに絶景。鎌倉市街の主要部やまっすぐに伸びる若宮大路、どこまでも続く相模湾の景色を一望することができる。
やぐら郡

天園ハイキングコース内では、山肌や岩を方形に削ったやぐらがいたる所で確認できる。 これらは、中世鎌倉時代に流行した横穴式の墳墓。山地に囲まれた鎌倉には平地が少なく、従来のような墓郡を設けるスペースが存在しなかった。そのため、山に囲まれた地形を活用できる横穴式の墳墓が流行したと考えられている。
大平山

鎌倉アルプス最高峰の大平山。旧六国を見渡せる古くからの景勝地だ。裏側からは、条件がよければ横浜ランドマークタワーも小さく確認ができる。
▼参考記事