世界遺産にもなっているスイスのベルニナ鉄道とは?
ベルニナ急行(Bernina Express)はスイスを代表する人気の観光列車で、イタリア領のティラーノとスイスのサンモリッツ間を結ぶ鉄道路線です。この列車旅では、55のトンネルと169の橋を通過しながら高低差1,800mのルートを約2時間半かけて巡ります。真っ赤な可愛い車両と天井近くまである大きなパノラマ窓は開放感たっぷりで、アルプスの景観を間近で楽しむことができます。
のどかなイタリアの葡萄畑から雄大な氷河、標高4,000m近いアルプス山脈、エメラルドグリーンに輝く湖などの風景を列車の窓から鑑賞しながらのなんとも贅沢な列車旅です。
このベルニナ急行が通る区間の景観の美しさから2008年には、ユネスコ世界遺産に登録され、この魅了のルートを体験しようと世界中から観光客が訪れます。
このルートに沿ってキャンピングカーで旅をしてみた
私たちは夫婦でキャンピングカーに暮らしながらヨーロッパを周遊中で、旅を開始してから1年半が経過。今までイタリアを拠点にフランス、スロベニアなどを訪れてきましたが、今回は世界名峰のアルプスに囲まれた絶景の国=スイスを訪問することにしました。
ルートはベルニナ急行が通るイタリアのティラーノからスイスのサン・モリッツまでの鉄道路線の線路沿いをキャンピングカーで縦断するコース。距離は約60km、途中の気になるポイントで停まりながら、中間地点のビアンコ湖付近で車中泊をする予定です。標高2,200mまで登るので、車体の重いキャンピングカーではややハードルが高いですが、感動的な山岳風景の続く素晴らしい景色が待ち受けています。
到着地のサンモリッツは過去2回も冬季オリンピックが開催されたスキーリゾート地で、冬場になるとウィンタースポーツを楽しみに多くの観光客が訪れます。街には、宿泊施設やレストラン、お土産ショップもズラッと揃っていて街観光にはピッタリのスポットです。
キャンピングカーで標高3,000m級のアルプスの間をロードトリップ
イタリアのティラーノから出発して車でスイスへ国境越えをします。両国ともにシェンゲン協定加盟国なので出入国審査などもなく、車で簡単にゲートを通過することができました。
ベルニナ急行の路線沿いを進み、イタリアを超えると徐々に標高が上がっていき、山岳風景が広がります。最高標高2,253mのオスピツィオ・ベルニナ(Ospizio Bernina)に到着すると目の前にはダイナミックな氷河と美しい氷河湖のラーゴ・ビアンコが現われます。日本語で「白い湖」という意味で、西側にあるカンブレナ氷河の石灰分を多く含んだ雪解け水が流れて青白い水の幻想的な湖になったのです。
私たちが訪れた6月中旬は、夏前にもかかわらずまだ湖が凍っており、残念ながら湖全体を見ることができませんでしたが、白く凍った湖と、ところどころ溶けた箇所から見える青白い水のコントラストがなんとも美しい景色でした。溶けた状態の湖を見たい場合は7月〜10月がベストシーズンだと思います。
オスピツィオ・ベルニナを過ぎると少しずつ高度が下がり、緑豊かな森林地帯へ入りベルニナ急行の終着駅サンモリッツへ到着します。
氷河の湖「ビアンコ湖」をハイキング
今回はベルニナ鉄道の最高地点2,253mのオスピツィオ・ベルニナ駅からビアンコ湖をぐるっと一周するハイキングコースを歩くことにしました。全長8km、所要時間約2時間の比較的簡単なコースです。
湖と線路沿いを歩きながら、赤い列車と湖を眺める絶好のロケーションで、写真好きにはたまらないベストショットが撮れるスポットです。コースは標高差もあまりなく歩きやすいですが、まだ雪が残っている部分も多く、注意が必要です。湖の線路沿いのルートは雪も溶けていて問題なく進めましたが、反対側の山沿いは雪が残っている部分も多く、下の部分が溶け始めて深い穴ができている箇所もあり、少し危険そうだったので湖を一周するのは諦め、歩けるところまで進むことにしました。
残念ながら雪が残っていたので湖一周はできませんでしたが、景色も最高でとても気持ちいの良いハイキングでした。この周辺でハイキングを楽しみたい方は、7月のサマーシーズンから10月あたりの紅葉の時期がおすすめです。
赤い列車を窓から眺めながらの車中泊
キャンピングカーはいわば「移動する家」で、車内にはトイレ、シャワー、キッチンと生活するのに必要な装備がすべて揃っているため、どこでも好きな場所で寝ることができるのが醍醐味です。
どこを切り取っても絵になるような美しい景色の続くベルニナルート。湖の前の線路沿いに車中泊OKの無料駐車場があったので、この日はここを私たちの寝床にしました。
約15分おきに列車が通るのでキャンピングカーの窓からはダイナミックなアルプスと湖、そして、赤い列車を見ることができ、5つ星ホテル顔負けの絶景の中で贅沢すぎる車中泊が実現できました。
列車旅も車旅もどちらも最高!
今回は有名な観光列車のベルニナ線路沿いをキャンピングカーで旅してみました。去年このルートを列車で旅した経験があり、どちらもそれぞれの魅力があって、やってみる価値があると思います。
列車旅の場合は、ゆったりと座って車内販売サービスの軽食や飲み物を楽しみながら、優雅に窓からの景色を眺める一味違った体験ができます。ですが、残念ながらずっと列車の中にいるので、せっかくの赤い車両が見えないのです。たまに大きなカーブにかかったときに、チラッと後部の車両が見えるのみになります。
それに引きかえ車旅の場合は、線路沿いを進むので常にダイナミックなアルプスと赤い列車の美しい景色を見ることができます。さらに、気になるスポットを見つけたら車を停めて、自由に自分のペースで進めれます。
ベルニナ線の列車旅も車旅もそれぞれ個性があって素敵な旅になること間違いなしなのでぜひ、一度、体験してみてください。