半世紀前にサンディエゴで産声を上げたトライアスロン
泳ぐ、自転車を漕ぐ、そして走る。この3種類の有酸素運動を1レース内で連続して行うトライアスロン。今では知らぬ人はいないでしょうが、歴史的に見ると比較的新しいスポーツです。初めてオリンピックの正式種目になったのは2000年シドニー大会のことでした。
1974年9月25日、米国カリフォルニア州サンディエゴ市内のミッション・ベイ公園において、世界で初めて「トライアスロン」の名前を冠したイベントが開催されました。参加者は僅か46人だったそうです。
そう、近代トライアスロンが誕生してから今年でちょうど50周年の節目を迎えるのです。その発祥の地とされるミッション・ベイ公園には記念プレートが掲げられています。
きっと9月25日が近づくにつれて、このプレートと一緒に記念撮影した写真がSNSに続々とアップされるでしょう。地元の利を活かして、一足前に行ってきました。
カジュアルだった世界初のトライアスロン
トライアスロンには、とかく「過酷」とか「究極」などと言った表現がついて回ります。エリート競技者たちのレースは実際にその通りでしょうし、市民レースであっても只者ではない人たちが集まっているイメージがあります。
しかし、半世紀前に行われた世界初のトライアスロンは真剣な競技というよりはむしろ、レクリエーションに近いような牧歌的なイベントだったようです。
イベントを主催したサンディエゴ陸上競技クラブのウェブサイトによると、その記念すべきレースを構成したのはラン約9.6km、自転車約8km、水泳約450m、でした。
現在のスタンダードとなっているオリンピック・ディスタンスのトライアスロンは、水泳1,500m、自転車40km、ラン10㎞の順で行われますので、種目それぞれの距離も行う順番も大きく異なっています。
参加費はたった1ドル。50年間の物価上昇を考慮に入れてもかなりの安さです。
参加者は自分の自転車を持参するようにと言われましたが、そのほとんどがビーチをクルージングするための自転車でした。泳ぎが苦手な人も多かったとのことです。想像するに、ランナーが中心で、水泳や自転車はおまけのようなものだったのではないでしょうか。
コースは、ミッション・ベイ公園内にあるフィエスタ島を1周する道路及び島と、本土を隔てる狭い水路に設けられました。現在訪れてみても、まったく起伏がない平坦な道路と、まったく波がない平穏な水面です。ゆっくりとしたジョグやぽちゃぽちゃと海水浴を楽しむ方がはるかに雰囲気に合っています。
それでも、この歴史的イベントは世界初のトライアスロンであったということ以外にも、スポーツ史上で大きな意味をもたらしました。参加者の中にジュディーとジョン・コリンズ夫妻が含まれていたからです。
当時サンディエゴ在住だったコリンズ夫妻は翌年ハワイに移り、そして1978年にアイアン・マン・レースを創設したのです。水泳3.8km、自転車180.2km、ラン42.2kmで行われる、文字通り究極の耐久系レースのことです。
「アメリカで最も素晴らしい都市」の中心部に近い海浜公園
ミッション・ベイ公園は、サンディエゴの中心地から車で15分ほどしか離れていません。人工の塩水湾に面した美しい芝生と、高いパームツリーが織りなす風景はいかにもカリフォルニアらしい魅力に溢れています。目の前に高速道路が走っていますので、アクセスはとても便利です。
公園内では思い思いにジョギングやサイクリングを楽しむ人の他に、ピクニックをする家族連れでいつも賑わっています。ヨガや太極拳のグループもよく目にします。
カヤックやウィンドサーフィンといった、水上アクティビティのレンタルができる施設も数多くあります。砂浜のビーチでは波のない静かで安全な海水浴ができますので、小さなお子さんを連れた休日にも向いています。すぐ隣にあるシーワールド観光と組み合わせてもよいでしょう。
現在でもミッション・ベイ公園周辺では、いくつものトライアスロンやランニングのレースが1年を通して開催されています。あなたがトライアスリートやランナーなら、そうしたイベントに参加してみるのも良いアイデアかと思います。
もちろん、好きなときに自由に走ってみても楽しいですし、個人的にはもっともおすすめです。公園は年中無休です。入場や駐車にもお金は一切かかりません。
サンディエゴ市公式ウェブサイト内ミッション・ベイ公園案内:https://www.sandiego.gov/park-and-recreation/parks/regional/missionbay