「早起きは三文の徳」
夜型人間の私にこそ、言い聞かせたい言葉です。一方「3度の飯と同じくらい走ることが好き」という夫の朝は、対照的に早過ぎます…。
たいてい4時過ぎには起き、近所を走ることを日課としていますが、旅先でもその習慣は変わりません。そんな朝型ランナーの夫が、朝ランだからこそ楽しめる世界各地の風景を紹介します。
マルタ共和国で眺める地中海の日の出
早起きした人の特権、それは日の出を見られること!部屋の窓やテラスなどから見える場合もありますが、見晴らしのよい場所まで走ってから眺める朝日は、自然に一体化した気がして格別です。
地中海に浮かぶマルタ共和国では、本島のセント・ジュリアン地区から走って行けるマノエル島に行き、日の出を拝みました。
島といってもグジラという町から橋続きなので、船も使わず簡単に渡れます!周りを濃いオレンジ色に染め上げながら、地平線からゆっくり顔を出す太陽を心ゆくまで堪能したという夫。
対岸にある首都バレッタは、行政機関の中枢で6時半という早朝にもかかわらず、通りは忙しそうにオフィスに向かう人々であふれています。そんな勤め人たちを目当てに早くも店を開けているカフェが多いので、途中休憩して一服するのにもちょうどよい町です。
趣のあるポルトガルの旧市街で感じる「サウダージ」
ポルトガル語で、郷愁や哀愁を意味する「サウダージ(saudade)」。ヨーロッパ最西端に位置することから、ユーラシア大陸“最果ての地”とも呼ばれるポルトガルには、この言葉がとりわけ似合うエリアがあります。
ヨーロッパ一古い地区のひとつである、首都リスボンのアルファマ——強固な地盤が幸いし、1755年の大地震でも一帯では唯一難を逃れ、当時の町並みが随所に残る旧市街です。
ところが現代では、観光地化して昼間も夜も人混みだらけ!町の過去に思いを馳せる暇も隙もありません。これはなんとしてでも、朝ランでチャンスを狙わねば…。新市街のホテルを早朝抜け出し、走り出す夫!
「サウダージ〜〜!!!」
ライトアップされて、おしゃれ過ぎる気がしないこともありませんが、昼間の喧騒が嘘かのような静寂に包まれた風景はまさにサウダージ、過去にタイムスリップしたかのようです。
「霧のイギリス」ならではの幻想的な日の出に出合える?
イギリスのイングランド東部にあるケンブリッジに滞在中、夫はホテルから6キロメートル先の友人宅へ走って向かいました。
時刻は6時半、出迎えてくれたラン仲間の友人に、彼が毎日走っているという近所のフットパス(イギリスの散歩道)を案内してもらいます。
非日常的な景色が続く観光地もよいですが、地域の人々に親しまれている公共道や住宅街を走って周るのもまた、地元の息吹を感じて乙なものです。イギリスの朝は濃霧に覆われることが珍しくないので、日の出の景色もほかの国とは違って全体がにじみ、なんだか幻想的!
8時まで15キロメートルを友人と走り、再びホテルまでジョギングしながら帰る夫。ランニングという共通の目的があるので、ラン仲間とは短時間でも久々の再会を喜び、楽しいひとときを過ごせます。
朝ならサントリーニ島の大混雑観光名所を独り占め!
旅先で朝走る醍醐味はなんといっても、日中はにぎやかすぎる観光地の、静かな別の表情を見られることです。
“世界一”と呼び声が高いギリシャのサントリーニ島、イアの夕日をまともに見ようとすれば、日の入りの1時間ほど前には場所とりをする必要があります。ハネムーン先としても人気でロマンチックなイメージですが、現実はご覧のとおり。
狭い通路に観光客がぎゅう詰めで、ハイシーズン期間中は特に、滑落や圧死事故がいつ起きてもおかしくないほど混み合っています。
夕暮れどきも素敵ですが、朝ならこんな人気スポットでもさすがに閑散とするので、夜明けもおすすめです。朝日を浴びて“幸せホルモン”ともいわれるセロトニンを分泌させれば、日中の観光も疲れ知らず、1日を快活に過ごせること間違いなし!?
サントリーニ島の首都、フィラから歩いて15分ほどのフィロステファニは、イア同様崖沿いにオーシャンビュー・ホテルが連なり、高級感あふれる町です。土産店やレストランがひしめき、5〜10月のハイシーズン中はやはり日中夜遅くまで混雑していますが、こちらを朝走ると…。
見事に人はまばら、眼下に広がる海を望みながらスイスイ進めます。上り坂が少々キツいですが、上り切ったところで後ろを振り向くと、はっと息をのみました。
ほのかにピンク色に染まった空の下には、まだ明かりが随所に灯った階段状の建物が並び、右手には少し暗い崖と海が見えます。まるで夜と朝の狭間かのようなこの神秘的な風景は、朝ランだからこそ見られる特別な光景です。
ふと横を見ると、町と同じように白いポロシャツを着て、朝の6時過ぎから一心不乱にペンキ塗りをしている男性がいました。世界有数の観光地であるサントリーニが“白亜の町”でいられるゆえんとは、普段は見えない、こうした陰の立役者のおかげというわけですね。
朝食のウマさ倍増!モロッコの無形文化遺産「フナ広場」を走ったあとのご褒美
最後はお約束、ラン後のビールならぬ、宿泊先に戻っての朝食です。見知らぬ土地で朝から走り、有意義なときを過ごしたあとに食べる朝食はウマさ激増!たまりません。
食事を走る前か後にとるかはそれぞれ一長一短ありますが、夫は走ったあとの朝食を楽しみにしています。写真はモロッコのマラケシュで、ユネスコの無形文化遺産に登録されているフナ広場(Jemaa el-Fnaa)を走ったあとの朝食です。
冒頭で「マルタの朝は早い」と紹介しましたが、ところ変わってこちらの広場は夜遅くまで市が立ってにぎわうので、朝は逆にひとけがありません。マラケシュの旧市街自体が1985年に世界遺産として登録されており、その中心にあるフナ広場は普段、日中から夜にかけて無数の屋台や大道芸人、観光客などが集まり、とにかく活気があります。
ワクワクして楽しい反面、客引きやさまざまな押し売り、ヘナを描く女性にぼったくられそうになったりと、気を引き締める場面も。朝ならそんな彼らもグーグー寝ているでしょうから、そういった心配は無用です。「つわものどもが夢の跡」と化した市場を颯爽と走り抜ける快感さ!夜のざわめきとのギャップがおもしろいです。
観光の下見にもなって、一石何鳥にもなる朝ラン。ほかの時間帯ではお目にかかれない光景や朝焼けに染まる町を見に、旅先ではぜひ!いつもより少し早起きしてみませんか。
いざというときのための現金やクレジットカード、現地の交通系ICカード、充電たっぷりのスマホもお忘れなく!