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    2023.05.29

    のべ7000名の日本人が住んでいた、トレス海峡諸島の木曜島とは?島を一周して思ったこと

    旅で知らない場所を訪れたとき、どんなに忙しくても必ずやってみることがあります。

    それは「自分の足で歩いてみる」こと。そして可能であれば「そこを一望できる小高い場所に登る」こと。それだけで、なんだかその場所にグッと近づけたような気になるからです。

    トレス海峡諸島の行政や経済の中心「木曜島」とは?

    さて、今回私はオーストラリア大陸の東北端とその北側にあるパプアニューギニアの間にある「トレス海峡諸島」の行政や経済の中心である「木曜島(Thursday Island)」という場所に行ってきました。

    中心と言っても、人口わずかに2,805人(2021年度の国勢調査による)。島の面積は約3.5平方キロメートル。

    島にあるかわいらしい道標。

    木曜島をどうしても歩きたかった理由

    オーストラリア人に「トレス海峡諸島に行くんだよ」と話しても、みんながみんな「場所は知っているけれども行ったことがない」と口をそろえるエリア。当然、超有名な観光地などありません。

    オブジェも「島」っぽいですね。

    でも、ここだけはどうしてもこの足で歩きたかったのです。

    というのはこの木曜島、かつてのべ7,000名の日本人が住んだ島だからです。最も多かったとされる明治30年ごろは島民の約6~7割、1,000名が日本人だったと言われています。

    その理由はここでかつて真珠や高級ボタンの原料となる白蝶貝が採取されたから。真珠の町・和歌山県串本町あたりから多くの若者たちが真珠を採る潜水士として、一獲千金を狙ってこの島に渡ったのです。

    今のように海外旅行が当たり前ではなく、渡航も船で行われていた時代。この木曜島に住んでいた日本人たちがどんな景色を見ていたのか。それを見てみたいと思います。

    船が新しくなった以外はたぶん150年前と変わらない景色。

    いよいよウォーキング開始

    では、そろそろウォーキングを開始しましょう。

    「トレス海峡諸島」唯一の空港があるホーン島からの連絡船の船着き場がスタート地点。Googleマップによると、島のまわりを一周するには8キロ、徒歩だと約80分かかるようです。

    船着き場の待合いスペースに描かれた先住民族「トレス海峡諸島人」を描いた絵。なかなかポップですね。

    島の南中央にあるここから「ビクトリアパレード」という道を西に進みます。「パレード」というと「行進」とか「大勢が道を埋め尽くして歩き進めること」みたいな情景が頭に浮かびますが、この場合は「遊歩道」とか「散歩道」という意味。

    歩き始める前に、島の小さな博物館兼美術館「ガブティチュイカルチャラルセンター」の入口で無料配布されている地図を手に入れておくと便利です。

    車道から数メートル離れた遊歩道がビーチ沿いに続きます。薄曇り状態で「抜けるような青空」というわけではありませんが、まあそのぶん日差しは弱まります。

    ちなみにこの島の波打ち際は、特に夜になるとどう猛なイリエワニ(最大で体長6メートルくらい!)がうろついたりするので要注意だそう。

    梢が陽射しをさえぎっているいい感じのベンチ。赤い椅子は誰かの個人所有物なんですかね。特等席です。

    「グリーンヒル要塞兼博物館」に寄り道

    ここで島の外周ルートからちょっと寄り道。

    三つ目の角を右折してジャーダインストリートを内陸部に向かいます。つき当たりを左折、その後すぐに右折して坂をのぼりつめたところが「グリーンヒル要塞兼博物館」です。史跡である塹壕(ざんごう)など以外は建物がなく、説明パネルだけが存在する「アウトドア博物館」といった感じのところです。

    かなり広い要塞ですね。当時の大砲なども展示されています。

    ここは1891年から1893年にかけて建設されました。

    要塞であるからには仮想敵国が存在するのですが、それがどこかわかりますか?かなり難問だと思うので、みなさん考えてみてください。正解はあとで発表します。

    小高い丘の上にあるので海とまわりの島々が一望できます。

    ルービックキューブみたいな大学の建物

    島一周ルートに戻ります。海沿いの「ビクトリアパレード」と途中に、こんなかわいらしい建物が。実はこれ、ジェームスクック大学の木曜島キャンパスです。

    「ルービックキューブかっ!」とツッコミを入れたくなったのは私だけではないはず。でも熱帯には極彩色がよく似合います。

    このジェームスクック大学の先も海沿いの道が続きますが、途中で行き止まりに。というわけで大学のところの角を右に上がっていき、ダグラスストリートを左折すると、「オーリーパレード」というビーチ沿いの通りに。

    ただすぐに内陸部を行く道になり、頭の中は「暑いな」という感想で占められるようになります。……脳が梅干しサイズのステゴザウルスかっ!

    木曜島墓地で日本人に思いを馳せる

    島の北側を走る「アプリンロード」に入っても海は見えてきません。でも途中で右側に「木曜島墓地」が現れます。正門を入って左側が日本人墓地です。

    現在162基の墓の身元が確認されているとのこと。

    しばし黙とう。ここに眠るみなさんは故郷を遠く離れて亡くなる際、望郷の念に駆られたのかなあ。そんなことを考えたらまるで熱帯の通り雨のように、突然涙腺がゆるくなりました。

    海沿いの遊歩道を歩く

    日本人墓地に別れを告げ、島の北東部を走る「ウォルベンエスプラネード」という道へ向かいます。

    「エスプラネード」も先ほど紹介した「パレード」同様「遊歩道」という意味ですが、「海沿いの遊歩道」であることが多いです。すぐにジェッティー(船着き場)に到着。

    防波堤の先端から見た眺めもなかなかオツです。

    さて忘れないうちに、先ほど出した問題「1891年から1893年にかけて建設されたグリーンヒル要塞」の仮想敵国がどこかをお伝えしておきましょう。正解は「ロシア」です。ちょっと意外ですよね。

    公園でバスケットボールを楽しむ島の子どもたち。でも「スペースがあるんだからハーフではなくフルコートをつくってあげたらいいのに」とふと思いました。

    島の南東部は「サディービーチアクセス」という名の通りになります。

    「その丘を越えたら海が見えてきた」みたいな風景はわりと好きです。

    タイムトラベル気分を味わう木曜島の旅

    実はここから坂を登ると「ライオンズルックアウト」という見晴らし台があるはずなのですが、集合時間の関係で行けませんでした。他に島一周ルートから外れる海沿いの小道も、時間の関係で訪れることができず……。

    さらには、次の日の朝、早起きをして訪れてみた「ミルマンヒルルックアウト」という場所は木々にさえぎられてあまり景色が良くなく……。

    そんな感じであちこち「ああ、行きそびれたなあ」「期待と違ったなあ」という場所はあります。でもそれはまさに「自分の足」で歩いたから感じられる後悔なのでしょう。木曜島よ、またいつか会いに来るからなっ!

    建物や道、桟橋は新しくなったことでしょう。でもおそらく島から眺める海は、ここに多くの日本人が暮らしていた時代とあまり変わらないはず。少しタイムトラベルもした気分になれる。そんな旅でした。

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブのお世話係https://www.kaigaikakibito.com/。

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