トレッキングとは?
「山歩きをしてみたい」という人たちの中で、人気が高まりつつあるのがトレッキングです。トレッキングとは具体的にどういう山歩きを指すのか、また登山やハイキングとの違いについても見ていきましょう。
トレッキングとは
手軽に行う山歩き
トレッキングとは、景観や動植物を観察しながら比較的長距離にわたって山歩きを楽しむアクティビティのことです。
英語の「trek」は、「(特に徒歩で苦労して)旅する」「長距離を歩く」という意味です。自動車や飛行機のような近代的な移動手段を使わず、徒歩や牛馬ラクダなどに乗ってのんびりと旅行するといったニュアンスを持っています。海外では、「バックパッキング」と呼ばれる徒歩山行のなかでとくに数日間にわたって高山の山麓を歩く旅をトレッキングといいます。
クライミング技術を用いるハードな高所登山とは異なり、トレッキングは徒歩で行う山旅のことを意味し、初心者でも気軽に始められることから、いまあらためて注目されています。
ただし、トレッキングといってもそのレベルはさまざまです。ハイキングと呼んでもよいくらい軽めであったり、ネパールのヒマラヤトレッキングのように体力がない人にはきついと感じるルートもあったりします。
登山・ハイキングとの違い
実のところ、トレッキング・登山・ハイキングに厳密な区別はありません。英語での「backpacking」「hiking」「trekking 」は、いずれも荷物を背負って歩いて旅をするアクティビティを意味します。
しかし、日本では一般的に、次のような意味で使われていることがほとんどです。
- 登山:山頂に到達することが目的
- トレッキング:山歩きすることが目的、もしくは軽めの登山
- ハイキング:自然の中を散策すること
登山は山頂に到達することを目的としており、身を守るための本格的な装備が必要です。トレッキングも登山であることに変わりはないため、それなりの準備が欠かせません。
ハイキングは散策が目的なので、歩く場所が山と限定されない点がトレッキングと異なります。整備された道も多く、軽装で挑めるのが特徴です。親子で楽しむ気軽な山歩きも、「親子ハイキング」などと呼ばれることが多いです。
トレッキングの魅力
無理なく始められるトレッキングで、山歩きにはまってしまったという人も少なくありません。多くの人をとりこにするトレッキングの魅力とは、どのようなものなのでしょうか。
トレッキングの魅力
自然を感じられる
トレッキングの魅力は、雄大な自然を感じられることです。都市部に住んでいる人にとっては、舗装されていない山道を歩くだけでも新鮮な体験となるでしょう。
山中には木々や草花が生い茂り、街中では見かけることのない小動物に出会うこともあります。春は新緑・秋は紅葉と、季節が変われば山は表情を変え、同じ道でも飽きることはありません。
水辺を進むリバートレッキングや、雪道を歩くスノートレッキングなど、場所や季節によってさまざまな景観を楽しめるのも、トレッキングの魅力です。
爽快感・達成感を得られる
激しい動きはないものの、長時間にわたって歩き続けるため、トレッキングは想像以上に運動量が多いスポーツです。
普段から歩き慣れていない場合は特に「もう引き返したい」と思うこともあるかもしれません。その分、疲労に負けず目的地にたどり着いたときには、胸がすくような達成感を味わえます。
また、トレッキングは運動不足の解消やカロリーの消費にも役立ちます。ウォーキングやジョギングと同じ有酸素運動でもあるため、数をこなすうちに心肺機能や足腰が鍛えられていくでしょう。
トレッキングに必要なもの
ルートによってはトレッキングでハードな山道を登ることもありますが、低山であっても油断は禁物です。トレッキングを始めるなら、次の4アイテムをそろえておきましょう。
必要なもの
まずは足元から「トレッキングシューズ」
山を歩くならスニーカーよりもトレッキングシューズの方が安全です。グリップがきくため滑りにくく、不安定な地面を歩く際の疲労も軽減してくれます。
トレッキングシューズを選ぶときは防水性と、靴の高さに注目しましょう。防水性のあるものなら、急な雨に降られたときも靴の中までしみ込まず、不快な思いをせずに済みます。
靴の履き口の高さには、ハイカット・ミドルカット・ローカットの3タイプがあり、高さがあるほど足首が固定されやすくなり、捻挫などをしにくくなります。目的のルートにあわせて選ぶべきですが、もし最初の1足に迷ったら、ハイカットとローカットの両方の特性を持つミドルカットがおすすめです。
なお、おろしたばかりの靴で長時間歩くと、靴擦れを起こすことがあります。トレッキングシューズを新調した場合は何度か履いて、本番当日までに足になじませておきましょう。
必要なものを収納「バックパック」
本格的な登山ほど多くはないものの、トレッキングでもレインウェア・水筒・軽食など、こまごまとしたものを持っていくことになります。
それらを収納できるよう、軽量かつ耐久性のある、専用のバックパックを用意しましょう。容量の目安は、日帰りで約20~30L、1泊で約30~40Lです。
負荷を軽減するには、背面長といわれる背骨の長さに合った大きさを選ぶことも重要です。ショルダーハーネスやウエストベルトの長さも快適さに関わってくるので、サイズ選びは慎重に行いましょう。
もしものときに「レインウェア」
山の天気は変わりやすく、たとえ晴天の予報だったとしても、急に天候が悪化することも十分にありえます。雨に降られて体を冷やすことのないよう、レインウェアを備えておくのがおすすめです。
日常で使うような簡素なレインウェアだと、山歩きには物足りません。長時間雨にさらされることを想定し、防水性・透湿性の高いものを選びましょう。肌寒いときに羽織れば、防寒具代わりにもなります。
また、バックパックが完全防水タイプではない場合、バックパック用の防水カバーも持っておくと荷物の中身を守れます。
山歩きのサポートに「トレッキングポール」
トレッキングポールとは山歩きをする際に使う杖で、足腰の負担を軽減するために使用します。必須というわけではありませんが、長期間の旅では足腰の負担を大幅に減らしてくれます。重い荷物を背負っての登りや、岩場の下りを歩く際におすすめのアイテムです。
突っ張り棒のように引き出して固定する伸縮式は、素早く長さが変えられるため、登り・下りに合わせて長さを調整できます。特にレバーで固定するタイプは、力の弱い人でも使いやすいでしょう。
折りたたみ式は、1本のポールがショックコードでつながっていて、迷うことなく組み立てられます。軽く、とてもコンパクトにまとまるので、なるべく荷物を少なくしたい人に適しています。
トレッキング時の服装・注意点について
安全にトレッキングを楽しむには、山歩きについての基本的な知識があると安心です。服装とトレッキングを行うにあたっての注意点を確認しておきましょう。
服装と注意点
服装の基本は重ね着
山は標高が上がるごとに気温が下がり、麓で暑く感じていたとしても、途中から寒さを覚えることもあります。とはいえ、登っているうちに体温が上がっていくので、防寒対策のみというわけにもいきません。
トレッキングをするときは、小まめに体温調節がしやすいよう季節を問わず重ね着が基本です。この重ね着をレイヤリングといいます。
レイヤーごとの役割は、以下の通りです。
- ベース:吸湿・速乾
- ミドル:保温・通気
- アウター:防水・防風
ベースはTシャツが一般的です。コットンは肌触りはよいのですが汗をかいたあとに乾きにくいため、いわゆる「汗冷え」状態になりがちです。速乾性のある化学繊維のものがよいでしょう。ミドルレイヤーには、薄手のダウンやフリースがおすすめです。
アウターには寒さや悪天候から身を守るため、保温性・防水性・防風性に優れたものを選びましょう。中にはレインウェアと兼用できるものもあります。
知っておきたい注意点
トレッキング中には大量の汗をかき、体力を消費しやすいため、適切な水分・栄養補給が欠かせません。塩分を含むスポーツドリンクや、タブレット・軽食を持っていくとよいでしょう。
運動習慣がない場合はウォーキングやランニングなどを行い、事前に体力を付けておくと安心です。慣れない山道でのけがを防ぐため、入山前には入念にストレッチしておきましょう。
初心者のうちは、ガイド付きのツアーがおすすめです。コースを熟知したプロから、絶景ポイントや地元に伝わるエピソードなど、自分では見付けられない山の楽しみ方を教えてもらえます。
まとめ
トレッキングとは、山歩きに幅広く使われる言葉で、登頂を目指すのではなく山歩きを楽しむことが主な目的です。そのため、ハイキングや軽めの登山もトレッキングと呼ばれるケースがあります。
普段は得られないような達成感を味わえるのが魅力で、まったくの初心者からでも始めやすいことから、年々人気が高まっているアウトドアアクティビティです。
しかし、気軽に挑戦しやすいとはいえ、普段着とスニーカーで山に入るのはおすすめできません。しっかりと装備・服装・体力の準備をして、安全なトレッキングを楽しみましょう。