横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、童謡「どんぐりころころ」でもおなじみの魚について案内します。
エラ以外でも呼吸が可能
私は横浜郊外の1,500平方メートルほどの田んぼで米づくりをしていて、春には田起こしを行います。水が完全に抜け切っていない土を掘り起こしていると、出てくる生きものがいます。それが今回の主役、ドジョウです。
魚といえば、エラ呼吸が一般的。でも、ドジョウはエラ呼吸に加え、腸呼吸や皮膚呼吸もできます。だから、水がほぼない湿った土の中でも生きることができるんです。
ドジョウの仲間を見分けるポイント
ドジョウの仲間はたくさんいて、生息環境も多岐にわたります。
ドジョウの住んでいる場所といえば、田んぼや小川、湿地の泥の多い環境をイメージするかもしれません。でも、ドジョウの仲間は、渓流部の流れの早い瀬、流れの緩い河川の砂、砂礫河床部、河川の氾濫原湿地、湧水のある細流部など、いろいろな環境に適応した種が生息しています。
日本には、10数種類のドジョウがいるといわれています。中には、天然記念物に指定されているドジョウの仲間もいます。
では、いろんな種類のいるドジョウの仲間を、どうやって見分ければよいのでしょうか。ポイントは、ドジョウの1番の特徴ともいえるヒゲ。ドジョウは種類によってヒゲの本数が違うのです。
- ドジョウ類 ドジョウ:5対10本
- シマドジョウ類 ヒガシシマドジョウ:3対6本
- ホトケドジョウ類:ホトケドジョウ:4対8本
絶滅の危機に瀕している仲間も
ドジョウ汁やドジョウ鍋、柳川鍋など、ドジョウは古くから食材としても親しまれてきました。特に、渓流に生息するアジメドジョウは高級食材として知られています。主食が付着性の珪藻類のため、臭みもなくおいしいといわれています。
そんな身近なドジョウですが、一方で近年、生息環境の悪化や消失により、絶滅の危機に瀕している仲間もいます。例えば、湧水環境を生息場所としているホトケドジョウは、狭い範囲の環境に依存しています。その場所の開発や整備が進んで生息環境が失われたり、アメリカザリガニなどの外来種が侵入して生息環境が改変されたりすると、ホトケドジョウは生きていけません。
アメリカザリガニはホトケドジョウそのものを捕食するだけでなく、水草などの植物も食害します。すると、ホトケドジョウの隠れる場所や産卵、育成場所などが奪われてしまいます。そして、一度いなくなってしまうと、その環境に再びホトケドジョウを復活させることはとても大変なのです。
とはいえ、まだまだ身近な水辺や水中にドジョウの姿を見つけることもできます。環境に気をつけつつ、そっと覗いてみましょう。そして、ドジョウの仲間たちに出会った際は、ぜひヒゲの数にも着目してみてください。